第5話 話の続き

つまり、便利なものを手に入れた人間が、度を越えた欲を持ってしまった末に、

起こってしまった悲劇、ということなのかなあ。


大量に運べるからって、ドンドン積んで、短時間で運べるからって、

バンバンスピード出して。

そりゃ、いつか起こりますわなあ、フラッグ、立ちまくっとりますから。


あるとき、スピードを恐れた牛が暴れ出す、貨車が揺れる、車輪が浮く、脱線する、

客車も横転する、取り返しのつかない大事故となる。


この町から、同じような町を3つ挟んだところに、この町を数十あわせたほどの、

大きな都市があり、馬車だと10日程度かかり、鉄道だと半日程度で着くらしい。


それまでは、この町からその都市に行くものは滅多にいなかった。

そりゃ馬車でかかる日数分、道中の様々な危険もそれだけ覚悟しなきゃいけないって

ことだからね。


でも半日なら、行ってみたいよねえ。

ジョナサン一家も、それまでは隣町や、せいぜいもう一つ隣の町としか、取引して

いなかったらしいが、

鉄道を使えば、都市とも可能になるんじゃないかってことで、その日、幼いレティは

両親に任せ、娘夫婦ででかけたらしい。


最初はジョナサンと、娘婿が行くことにしていたけど、酒場があるんで女二人じゃ

だめだってことで、娘と代わったそうだ。

まあ、親心もあったんだろうね、

そんな当時、新婚旅行なんてなかっただろうし。

若い二人で行っといで、ってところだよね。


事故の知らせは五日後、早馬で届いたらしい。

3つ目の町と都市との間で起きたその事故は、乗客に全ての経由する町と、都市の人

が含まれ、犠牲者となった。


その人数も100名を超え、その昔、都市が統一されるまで続いた戦以来、最大の

死者を生んでしまった。

その事故現場は凄惨を極め、駆け付けた鉄道職員を始め、警察や消防、近隣住民も、足が竦んで、身動き取れなくなってしまったらしい。

それから1年、3つの町は喪に服し、鉄道を使用する上での新たな決まり事も制定された。


町同士には婚姻によって、親戚関係にある家も多い。

この事故では、この町と他の町の親戚の、それぞれの家が、被害者を出してもいた、

他の町の出身で、この町で暮らし事故に関わった仕事に、就いていた者もいたのだ。

なのでこの町だけに対して、事故の非難が集中したわけではない。


しかしこの町は、全ての町と都市の犠牲者に賠償金を支払った。

出荷した牛のほぼ全てを失った事故は、この町にとっても多大な打撃ではあったけ

れど、自分たちの犯したミスで、失った犠牲は測りしれない。


もちろんそれは、その年や翌年でどうこうできるものではない。

それから何年も、幼い子供だったレティが十分な谷間に、、、、、。

バチを当ててください・・・・・神様。

に、成長する頃まで支払いは、続けられたしい。


その間にも、町同士の婚姻関係は新たに結ばれたので、

他の町からこの町に嫁いできた娘が、事故で亡くなった、自分の家族に対する

補償金を、嫁いだこの町の家で負担している、

なんてことも、それはこの辺の、一つのあるある話となっているそうだ。


まあ、なんにしても、責任を全うするってことは、当たり前のことなんだけど、

大変なことだとおもう。

それをやり遂げたこの町の人達には、心から尊敬の念を覚えます。


もうどれぐらいの時間が、経っていたんだろう、

いつの間にかランプの灯は、消えていた。

その表情は、ほのかな月明りでしか見えないけれど、ジョナサンの目と頬には、

キラリと光るものが、見えたような気がする。


そのあと、これといって俺に関して何か教えてもらうような話しもなく、ジョナサン

は部屋を辞した。

その手には、まだ飲み残したボトルが握られていた。

コラコラ、どうせならそれは置いていきなさいよ。


ま、夢の世界だからって、夢のようなことばかりがあるってことでもないようだ。

だからといって、それを俺に聞かされてもなあ、ってとこだけど。


俺はベッドに横たわり、今日見聞きしたことを、繰り返し思い出していた。

時計もないから分からないけど、ここにきて数時間の、ことだとおもう。

この先俺が目覚めるまで、ここに留まるのか、それとも他の夢に移るのか、

どうなることかさっぱり分からないけど、成り行きに任せるしかほかにない。


だけど、今んとこレティの存在以外で、ここの夢に留まりたくなるようなこと、

他に何もないんですけど。

できるんならこの先、この夢の登場人物は、レティだけにならないものか、

などと考えていたら、いつの間にか眠っていた。

へえ、夢の中でもさらに眠るんだね。

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