第六話 懐中時計が刻む両家の絆
(縁側の廊下を使用人の女性の先導で辿り着いたその先は、風通しの良い広間だった。その場所に通された俺達の目の前で、使用人の婆さんは西野憐に語りかけた)
憐様、御客様御二方をお連れ致しました…失礼致します…
(婆さんは膝を着いて襖を開けて俺と菫を中に入れると、静かに襖を閉めて下がった。そして俺達の目の前には一枚の古い写真を見つめる西野憐の姿があった)
…座れ…
(ポツリと呟いた憐の爺さんの言葉に従い、菫を先にゆっくりと座らせた。そして俺はその隣に腰掛けた)
それで、俺とこいつを呼んだ理由は一体なんなんだよ…それと時生の爺さんから、アンタにこれを見せる様に言われて来たんだが…
(懐からハンカチに大事に包まれた懐中時計を、憐の爺さんに見せる。すると、爺さんは目を伏せてゆっくりと語り出す)
菫、其方は厳に、その着物を着て行く様に言われたのでないか?
(菫は静かに爺さんに頷くと、爺さんは見ていた古い写真を、俺と菫の元に投げて来た)
急になんだよ…この写真がどうかしたのか?…
(爺さんに文句を言い付けていた時、隣に座る菫は、写真を取って見ると、驚いたように俺の名を呼びながら写真を見せて来た)
澪さん!!これ見て下さい!!…
(渋々、菫の手元の写真に目線を向けると、其処には菫の着ている着物を着た女性と、その隣に寄り添う様に立つ一人の男性の姿が写っていた。その男性の腰には、俺の持って来た、壊れた懐中時計が紐に括り付けられていた)
……南雲澪よ、其方の曽祖父だった者と、東雲菫、其方の曾祖母の若かりし時の写りし姿よ…
(その言葉を聞いて、俺は唖然として写真を手元から落としてしまった。そして隣の菫は、呆然とした様に憐の爺さんの事を見つめていた)
わしはその二人と約束したのじゃよ…遠き子孫が、この地で再び南と東を結び付けようとな、その時はわしはその子孫達を守らんと誓ったのじゃよ…
(爺さんの口からその言葉を聞いた時だった。壊れたはずの懐中時計が、再び時を刻み始めた気がした)
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