第五話 西の花散りし

(西野家に辿り着いた俺達が最初に目にした光景は、引っ越し業者が荷物をトラックに詰め込む場面だった。その異様な光景に啞然としていた俺と菫に語りかけて来たのは、西野家の使用人の年めいた女性だった)




…南雲澪様、東雲菫様ですね。憐様より、事付けを言い使っております




(その内容を聞いた俺は、口を開けたままトラックの方を凝視した。そして、菫は着物の袖で口元を隠す程に驚いた表情を浮かべていた)




…憐様の逆鱗に触れた旦那様と若奥様は、勘当処分を言い付けられまして、荷物を纏めて西野家を去る最中に御座います…




(例の昼間の件か。でも、普通なら殴られた夫婦を助けるのに行動を移すと思うのだが、何故逆にあの夫婦が西野家からの追放、勘当処分になるのだろうと不思議に思っていた時だった。菫が使用人の女性に何かを語り掛ける)




貴さんは?彼はどうなったのですか?




(菫の言葉を聞いた使用人の女性は、目を伏せた後に語り出した)




坊ちゃまは、遠き親戚の家に養子縁組と言う形で、心を鍛え直して来いと言う、憐様の言い付けにより旅立たれました…




(その言葉を聞いた菫は、涙を流していた。そして使用人は、引っ越し作業の手を止めて、西野家の最高権力者でもある西野憐の元に俺達を案内してくれた)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る