第三話 心温まる家族の出迎え

(その後、俺は警察に連れて行かれ事情を聴かれた。そして西野家の曾祖父、年齢101歳の西野憐の行動で事態は急変した)




君のやった事は確かにいけない事だよ。暴力では結局何も解決しない。問題を先延ばしにする事なのだからね。でも、人としては君のやった事は懸命だと私は思うよ。ご両親を侮辱されて怒らない者は、この世に誰一人いないのだからね。と、私は思うがね…




(取調室で夜遅くまで事情を聴かれた俺は、心底疲れていた。その時だった。一人の警察官がノックして入って来ると、俺の事を取り調べしていた警察官に、何かを説明し始める。すると、彼らは俺の元に近寄って来てこう告げて来た)




釈放だそうだよ。君の問題は御咎め無しとして、処分なされたよ…




(俺は首を傾げながら取調室から出されて荷物を全て返され、身元引受人等この村に誰もいないと思ったら、なんと北条日和が保証人になってくれていた。そして警察署から出ると、俺の目に飛び込んで来た光景は、軽トラが数台と普通乗用車が迎えに来ていた。北条家と東雲家の連中だった。その中には菫の姿もあった)




あの…お腹空ていますよね…




(ラップに包まれたおにぎりを、菫はぎこちなく俺に手渡して来た。その握り飯を、俺は両家の見て居る前でラップを解いて食い始めた)




はい、お茶です…ゆっくり食べないと喉に詰まらせますよ…ふふっ…




(軽トラの荷台に腰掛けて食べると、菫はポットのコップにお茶を注ぎ入れてくれた。俺はそのお茶をぶんどる様にして口に流し込んで飲み干した。その俺の表情を、菫は笑みを浮かべながら見ていた)




菫ちゃん、澪さんの事が心配で気が気でなかったんですよ…




(凛の言葉をお茶を飲みながら聞いていると、急に菫の奴は取り乱した様に凛に詰め寄った時だった。一台の高級車が俺達の傍を通って行くものと思っていると、俺の前で車が止まると、窓が開いて見た事もない一人の老人が車内で杖を付きながら、こちらを睨み付ける様に見て来た)




…何か用かよ…




(その爺さんの年季の入った鋭い目付きに臆する事無く見つめていると、老人はポツリと呟いて来た)




明日、其処の女子と二人で西野家に参れ!!…以上じゃ…




(俺と菫を名指しで指名すると、爺さんの乗った車は警察署を後にして走り去ってしまう)

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