第二話 嵐の襲来

(昼食を中断して子供達以外の大人達は全員、玄関に赴いた。その場に居たのは西野貴の父親と、その妻の姿であった)




家の息子との婚約を一方的に解消なされたそうですわね。お館様ともあろう御方が、なにを間違われたのですかな?




(あきらかに厚化粧をしたおばさんが、厳の爺さんと、時生の爺さん達に喰ってかかっていた。そして小百合と恵、凛達を子供達のいる広間に帰らせる様に、爺さん達が指示を出した時だった)




あら、そちらのお嬢さんは貴の婚約者の菫さんではなくて…?貴女の問題ですのよ?一言くらい何かありませんのかしらね…




(この女の態度と言動には、山の神々も流石に怒りを通り越して、呆れた面持ちで見ていた。そして例の坊ちゃんは、父親と母親の後方で警護の者達に守られる様に立っていた。その表情は終始、下を向いたままだった)




原因を聞けば…何でもそこに居る、余所者の男が原因らしいですわね。山の神々の一神をその身に宿して、お館様や有権者の皆様の前で大見えを切ったそうね…




(おばさんは俺の顔を一瞬ちらっと見た程度で、爺さん達に視線を戻した。ああ、この女はあれか…、良く居る、世渡り上手な女かと考えていた時だった。坊ちゃんの父親が、厳の爺さんに驚きの一言を述べた)




お館様、アンタの時代はもう終わったんだよ。後世に道を譲って、さっさと隠居したらどうですかな…




(その言葉には流石の爺さん達二人も酔い等吹っ飛び、父親に喰ってかかろうとした。その行動を俺は寸での所で止めに入った)




フン、面白い駆け引きを企む腹黒親父だな…アンタ…




(爺さん達は何故止める!!と騒いで来た為、俺はその言葉を無視して、日和の婆さんに二人の事を任せる)




差し詰め、暴力沙汰にさせて爺さんを村長の座から引きずり降ろそうと言う腹だろ?お宅らの様な小さな世界しか見て来なかった連中と一緒にされては困るんだよね。余所の地でお宅らの様な連中を、ごまんと見て来たわ




(俺の言葉に顔色を変えずに笑みを絶やさずにいるこの夫婦に、不気味な物を感じた俺は、霊界の親父に問い掛けた。すると、答えは直ぐに帰って来た)




≪その者達は欲に塗れた者達よ。謙虚さを忘れ、強欲に生きる愚かな者達よ。自然と共に生きる者達を根絶やしにしようとする、愚かな者達よ。澪、その者達に深入りするでないぞ。時には引く事も大事ぞ…≫




(親父からの言葉を聞いて確かに、深入りすることは賢明ではないと親父からの言葉に身を引こうとして、背を向けようとした時だ。貴の奴が母親になにやら告げ口していた)




ふふふっ…そう、貴方、あの北条岬さんの息子さんなのね。あの馬鹿な男と駆け落ちした、愚かな女のね…




(その言葉に、俺は全力で女を睨み付けると、女の顔を全力でぶん殴って行った)




てめぇ!!もう一度言ってみやがれ!!ぶっ殺してやるからな!!…




(北条家の大人達が全力で止めるのも聞かずに、俺は女と父親を殴っていた。その俺の形相に腰を抜かしていた貴の奴を、俺は睨みつけていた。それだけで貴は人前と言う事も気にせずに、漏らしてズボンを濡らしていた)

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