第二部 時を超えて再び刻む愛
第一話 乙女の涙の前触れ
(広間では爺さん達がご機嫌で酒を酌み交わしていた。その傍では、日和の婆さんが二人を宥めながらお酒を注いでいた。そして俺の傍では、お行儀良くお蕎麦を食べる菫の姿があった)
なぁ、一つ聞いてもいいか…?…なんであの時、お前は俺の顔を見て悲しそうな表情を浮かべたんだ?
(俺が聞いている事は、菫と初めて出会った時の、石を投げて来た後に俺の胸倉を掴んで来た時の菫の取った行動の事を聞いていた。すると、菫は箸をお盆に戻し口元を軽く拭いてから、俺の質問に答えてくれた)
…貴方の…澪さんの瞳の色が、あまりにも悲しみに満ちていたからです。その瞳を間近で見てしまった為に…私は…なにも言えなかったんです…
(その言葉で俺はようやく納得した。そして顔を伏せている菫の頭に手を乗せて、軽く撫でてやった。その行為に恥ずかしそうな表情を浮かべた菫に対して、俺は言葉を一言だけ呟いて、蕎麦を食い始める)
ふん、お前は自分家の山を守るために不審者だった俺に、お前は正論をぶつけて来たのなら、その行動に自信を持て!!…そうでなければ、お前達が大事にしている山の神々にも失礼だからな…
(薬味を入れて蕎麦を啜る様に食べ始めていると、遠くで爺さん達が酔っ払いながら、余計な一言を言って来た)
澪!!お前いつまでこの村にいるつもりだ!?
(有休を使って一週間休みを取って来た為、あと六日はこの村に滞在できる。その事を酔っ払いの爺達に語りかける)
あと六日は世話になるつもりだ。母さんの故郷と分かったのなら、尚更直ぐには帰れねぇよ…
(北条家の皆もいる席で述べると、爺さん達は喜んだ様に俺と菫の元に近寄って来ると、酒を勧めて来た)
若いもんが遠慮するな…
(菫のコップに酒を注ぎ入れた為、俺は爺さん達に怒鳴り散らした)
昼間っから酒を勧めてくんな!!時間を考えやがれ!!
(昼間っから酒を勧めて来たその酒を、爺さん達の顔にぶちまける。それに怒りかけた時、俺よりも怒った顔の人が爺さん達の背後に立っていた)
お爺様!?!?…
(菫の母、東雲小百合と、凛の母親、北条恵が鬼の形相で立っていた。その二人の顔を見た爺さん二人は、酔いも醒めたのか、正座をして大人しく蕎麦を食い始めていた)
ごめんなさいね…親友の息子に迷惑をかけちゃって…あら、何事かしら?
(北条家の玄関の方で誰かが来た声が聞こえて来た。それが天河村で起きる、俺と菫、そして西野家が関わる事件の始まりだった)
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