第二十一話 子孫繁栄を願し親の愛情
≪澪、其方の母君は過去に我らにこう述べておったのだよ≫
(山の神々からの言葉を俺は静かに聞き始めた)
もしも、私に将来子供が出来た時には…その子の友達になって欲しいのよ…私、こんな性格でしょう?だから、子供にも引き継がれると思うのよね…、うっふふ…ごめんなさいね…。急に変な事を言ったりして…でも、その際は本当にお頼み申します…
(山の神々からの過去からの母さんの言葉を受け取った俺は、心の中で涙を流しながら山の神々と母さん達に感謝の言葉を送った。そして霊界の友人は、涙を流しながら拍手を送ってくれた。俺はふと、この天河村に訪れた時の事を思い出していた。すると、山の神々は無言のまま暖かい笑みを浮かべて、頷いて見せてくれた)
だからあの時、菫の投げた石を避けろと言ってくれたのか?
(ずっと不思議でならなかった。なんで見ず知らずの俺の事を山の神々が助けてくれたのか、その疑問がようやく解けた。母さんとの過去の約束を果たす為に、俺の前に現れたんだな)
≪ええ、我らと岬はずっと友人ですから。その友と交わした約束を今、約束を果たさずして物事を言うなかれ。そして岬が樹と共にこの村を去る時、涙を浮かべながら我らに深々と頭を下げて行かれたよ…。その岬の行いに、我らは本心より心を打たれ…約束を果たすことを決意した…≫
(母さんが去った時の事を聞いた。俺は霊界に居る両親に語りかけた。すると、母さんと父さん二人から言葉を受け取った。その言葉を俺は直ぐに山の神々に伝えた)
≪…南雲岬、旧姓北条岬と申します。そして、私の傍には、あの時私と共にあなた方に頭を下げた私の夫、南雲樹が居りまする。お懐かしや、我が故郷の山の神々様よ。此度はお礼を直接言いたく参りました。息子の身体を通して語ること御許し下さり……ありがとうございます。古き約束を果たしてくれた事、感謝しかございません…本当にありがとうございます。どうかこれからも、この子の良き友であられます事を私達夫婦、切に願いまする≫
(母さんと父さんは、涙を流しながら山の神々へ再び頭を深々と下げていた。その言葉と行動に、山の神々からの返答は、暖かい波長で読み取れた。言葉を交わさずとも、母さんと山の神々は深い友情の絆が生まれているのだと、俺は理解した。そして母さんが父さんに語りかけた後に、父さんは俺にゆっくりと語り掛けて来た)
≪澪、久し振りだな、元気にしていたか?私達の馴れ初めは岬、お母さんから聞いた通りだ。私からお前に言いたい事は……≫
(父さんからの言葉は、上手くまとまりが出来ていなかった。それは生きている時からそうだったなと思い出していると、隣から母さんの助け舟が出された。それによって、父さんの伝えたいことは俺に理解出来た)
≪澪、幸せになりなさいね…私達は…ずっと傍で貴方の事を見守っていますからね…≫
(母さんからの言葉を受け取ったその時だった。俺の背後から声をかけて来る女の声を聞いて振り返った。そこに居たのは、申し訳なさそうにしている菫の姿だった)
…皆様、広間でお待ちしておりますよ…行きましょう…
(その菫の言葉に俺はゆっくりと立ち上がると、菫は戸惑いながらも俺の手を取った菫は、広間に向かって歩き始めた。その俺の後ろ姿に、霊界の家族は背後で暖かい涙と拍手で送りだした。そして俺と菫は広間に向かって歩き始めた)
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