第十七話 子と親の深まる愛の絆

わしらの事を恨むか?岬が故郷に帰りたいと言う想いを、わしらは無下にした。その罪はわしらが受けるのが道理よ…




(爺さん二人の言葉を聞いた後に、俺は自然と目を閉じて、守護神の親父に語りかける)




≪親父、父さんと母さんはそちらで幸せに暮らしてるんだよな?…≫




(俺の問い掛けに、親父は微笑みを浮かべながら、俺に語りかけて来てくれた)




≪いかにも。其方の両親は霊界で其方の事を見守りながら、実の父親達の事もしかと見ておるよ。その事を、その者達にもしかと伝えなさい。罪とは決して己で裁く物にあらず、とな…。そして澪よ、其方の母が、お主に伝えたい様じゃよ…岬…≫




(相変わらず、親父の言葉には説得力と相手の心にしっかり届く包容力が、言葉に含まれていた。そして親父は母さんに語りかけると、あの優しい雰囲気を漂わせながら母さんが、俺に語りかけて来た)




≪澪、先ほど振りですね。元気にしていますか?しっかりご飯は食べていますか?私と樹さんはこの天河村で出会ったんです。ごめんね。生きている内に語る事が出来ずに…。そして、お父さんに伝えてもらえるかしら?産んでくれてありがとうございました。お父さんとお母さんのおかげで、私は樹さんと出会え、愛しい宝物の澪も授かる事が出来ました。本当にありがとうございます。そしていつの日かまた、生まれ変わる日が訪れた際は、お父さん達の娘としてまた生まれたいです、と。伝えて下さい。澪、貴方にも必ずいい人が現れます。母さん達は、こちら側でいつまでも貴方の事を見守っていますからね。それではまたね…。私達の宝物の…澪…≫




(そこで霊界との会話が途切れてしまう。精神的にかなり疲労が来る為だ。ただ母さんは終わり間際、涙を流しながら俺に語りかけて来てくれた。そして母さんからの言葉を、爺さん達と母さんの親友の小百合に伝えた。すると、小百合は泣き崩れてしまった。その小百合を優しく慰める菫を見守りながら、爺さん達を見ると、二人の老人は威厳など捨て、一人の父親として涙を流し始めていた。そして俺に向かって爺さん二人は…)




…感謝痛み入る。そしてありがとう…本当にありがとう…




(時生の爺さんは、俺に向かって深々と頭を下げて、畳に頭を擦り付けながら、感謝の言葉を俺に送って来た。そして山の神々と霊界の友達からは、温かい拍手が響いていた)

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