第七話 対話の亀裂
静粛にせよ。この御方は、紛れもなく我らの山を守護して下さっている山の神々様の御一人様にあらせられるぞ…そうだな、菫よ?
(東雲家のお館様が有権者達に一喝をすると、彼らは口をつぐむ。そして俺達の方と爺さんが名を口にした、東雲菫に語りかけた。すると、菫と言う女は、この山の神に頭を深々と下げてお礼の言葉を口にし始める)
私が幼少期の頃に、悪霊に苦しめられている所をお助け下さり、誠にありがとうございました。そしてそちらの男性に働いた私の無礼、ここに深く深く謝罪致します。誠に申し訳ありませんでした。
(菫は畳に顔を着ける程に、深く頭を下げて来た。そして女の謝罪を面白く思わない者は、有権者達の中にも含まれていた。そして、その者はあの婚約者の親に当たる者だった)
この様な、どこの馬の骨とも知れぬ者に頭を下げる必要などないのですよ?貴女は堂々として居ればよろしいのです…
(有権者達の中で、実力も兼ね備わっていた家の者が口にすると、他の有権者達も釣られる様に、菫を擁護し始める。そして俺達に罵声を投げかけて来た)
≪何たる愚行か!!自らの過ちを謝罪しているその女子の謝罪を、無きものにしようとするか?其方らは…≫
(山の神の言葉に、有権者達は口ごもるも、廊下からさっきの若い婚約者が駆け込んで来た。そして菫を守る様に立つと、俺達に語りかけてくる。その言葉に俺は内面で笑っていた)
貴様の様な者の事を、詐欺師と言うんだよ。僕達の山々の神を侮辱するのも大概にしろよ…余所者が!!
(その言葉に山の神は怒り心頭、今にも雷を打ち落としそうな勢いだった為、俺は静かに制止した後にゆっくり立ち上がると、婚約者の男と菫と言う女に静かに語り掛けた)
そうだよ。お前の言う通りだよ、坊ちゃんとお嬢ちゃん…俺は所詮お前達からしたら余所者さぁ…でもな?余所者を拒絶し続ける事がどういう末路になるか分かるか?お前達が大事にしている山々も、この村の水田も手入れをする者は居なくなっていく…そしてこの村は廃村になる…その時に誰が山を手入れをする?守るのなら多くの者と手を取り合えよ…そして守るんだな…山の神々をよ…じゃあな…
(爺さんの制止する言葉も無視して、廊下に出た俺は、屋敷の門に向かって歩き始める。そして空はさっきまでの晴天から、どんよりと雲がかかり始めていた)
…すまないな…ついムキになっちまってよ…
(山の神の怒りは収まる所か、さらに激しさを増していた。そして俺に対して謝罪と感謝の言葉を投げかけて来た)
≪なにを謝りますか。貴方が静止して下さらねば、あの屋敷に雷を落としている所でしたぞ。こちらこそ、誠にありがとうございます≫
(屋敷の門を出た所で、その言葉を聞いた俺は、霊的な者にも面白い奴はいるのだなと感心し始めていた。そして、屋敷の玄関から一人の老人と若い女が背後から近寄っているのを、俺は気が付かずにいた)
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