第446話
僕はハルハに、旅の途中で出会った人たちのこと思い出しながら話している。
トナカイたちのいる山から、ガルドさんやソフィアさん、そして母さんと四人で旅に出た。
まずトナカイがどんな動物なのかを、僕はうまくハルハに伝えることができなかった。
ひょわわ羊よりも大きめで、大人でもソフィアさんや母さんぐらいなら、背中に乗せて歩いてくれる。
ガルドさんを乗せて歩くのは、さすがに無理がある。
――とにかくトナカイという一緒に暮らしている動物がいて、それはハルハたちがひょわわ羊と一緒に暮らしているのと同じなんじゃないかな?
僕はため息をついて、トナカイについて話すことはあきらめた。
トナカイが、僕の最高の遊び仲間だったことだけをわかってもらえたらいい。
ガルドさんとソフィアさんがひょわわ羊に囲まれていて、ハルハと二人が出会った時に、七歳ぐらいの見た目だったらしい。
山を出て僕たちは三年かけて草原まで来て、さらに半年かけて、ハルハを見つけた。
僕は十五歳になった。
ハルハの見た目は、僕と同じぐらいの年頃の子に見える。
ガルドさんたちが山に来て、またハルハと再会するまで、六年か七年かかっていることになる。
ガルドさんたちがハルハと初めて出会った時、ハルハが七歳なら、十三歳か十四歳で、僕より少し年下のはず。
だけど、ハルハはどこから草原に来たのか、本当は何歳なのかは、不思議な祈祷師のアジュレさんも、よくわからないらしい。
――僕は、ハルハに会うために旅をして草原まで来たんだよ。
ハルハは取り立てて印象的であったわけでも、あるいは奇抜であったり下品であったりはしなかった。
それは僕にとって、とてもありがたいことだった。
ハルハにとって、僕や母さんは同じ獣の耳がある人なわけだけだから、とてもめずらしいと思うかもしれない。
僕は山から出て旅をするまでは、もっとたくさん、獣の耳がある人がいると思っていた。
大河バールのそばで見かけたスカベの人たちや、草原暮らしのテンカさんやアジュレさんたち、あとガルドさんとソフィアさんも、獣の耳やしっぽがない。
僕の母さんは、今もハルハは、とてもかわいらしいお嬢さんだけど、これからもっと美人になると言っていた。
僕の背丈が、旅の途中でのびたことや、風が吹いたりすることみたいに。
あっさりとそう言うけれど、具体的に何がどうだと、母さんの言う美人なのか、僕にはよくわからない。
ハルハはよく笑っていて、ひょわわわ~と僕が考え事をしていると、急に声をかけて驚かせてくる。
僕は山から出てきた時、ハルハと会ったら、トナカイたちのいる山に母さんと帰るつもりだった。
大河バールを渡って、もっと西に旅をすると、もっとたくさんの人がいるところがある。
そして、ルードさんは、山でトナカイと暮らしている僕たち以外にも獣人族はいると話していた。
ダンジョンというところで会った人の中に、獣の耳がある人がいたと話してくれた。
ルヒャンというところから来た人だったらしい。
母さんは、ハルハと僕と三人で、山に帰るつもりなのは変わらない。
トナカイたちには会いたいけど、僕は他に獣の耳やしっぽがある人がいるかもしれない、そのルヒャンというところに行ってみたい。
ハルハは、ひょわわ羊たちやテンカさんたちとこの草原で暮らしたいと言っている。
山から出て、草原でハルハを見つけられた。だから、きっと、ルヒャンというところにも、旅をすれば行けると思う。
ガルドさんとソフィアさんは、ターレン王国というところを探していて、草原より、もっと東へ行ってみるつもりらしい。
僕は星空を見上げている母さんとハルハに、大河を渡ってルヒャンを探しに行きたいと、僕はとても緊張したけど話してみた。
――ん~、そっか……ホレスが旅をするなら、母さんは、どこでもついて行くわよ!
ガルドさんたちは東へ行くけど、僕が行くつもりなのはもっと西だから、僕たちだけで行けるのか心配だった。
だから、母さんには、なかなか言い出せなかった。
もう一人でも行ってみるつもりで、母さんとハルハに話してみた。
「でも、母さんは、山に帰るって言ってなかった?」
「ホレスと一緒じゃないとね!」
やれやれ、母さんは僕がちゃんと大人になったと思うまで、ずっと一緒についてくるつもりなのか?
――ねぇ、ホレスの行きたいところって、ルヒャンってところなの?
ハルハが僕に、不思議な話を星空の下で話してくれた。
ハルハは、ガルドさんたちが草原から旅に出てからずっと、知らないところの夢をみることがあるらしい。
――ホレス、本当にルヒャンの街があるのなら、私も行ってみたいです。夢でずっと行っているところだから。
獣の耳やしっぽがある人たちがたくさんいて、草原では見たことのない服を着ていて……僕と母さんはハルハが、スカベの人たちともちがう暮らしをしている夢の中のルヒャンについて話すのを聞いて驚いてしまった。
「それは、市場というものです。お金というもので交換……お買いものができるところですよ」
ソフィアさんは、小袋から
――あっ、これと同じものをルヒャンの人たちも使ってました!
ハルハがそう言って、これが金貨、これは銀貨と銅貨と指さすと、ソフィアさんが「そうです、ハルハちゃんは、どこで、お金のことを知ったのですか?」と言った。
――あの、夢の中で……。
僕たちは祈祷師のアジュレさんに、この不思議なことを相談してみた。
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