第424話
クリトリフが思い浮かべたダンジョンに魔獣モドキがいる未来。
それは、マニプーラワールドオンラインの世界でリメイクされている。
情報屋リーサが、エリザたちが平原の村で農作業の手伝いをしていた噂を聞いていて、エリザたちが訪れた村に商工ギルド代表のシャーロットを連れていれば売り物にならない見た目の悪い作物は廃棄されているのを知り、もったいないと感じて商売のヒントをつかんでいたかもしれない。
平原の村の噂が貴族令嬢カレンから、情報屋リーサに伝わっていなかった。
貴族令嬢カレンは、冒険者ギルドの受付嬢アーヤを恋の相談相手にしていた。
受付嬢アーヤにエリザたちの噂を聞かせる心の余裕がカレンにはなかった。
冒険者たちも、ダンジョン封鎖が続き生活に不安を感じ始めた。
例外としてミュールとバトゥのように農作業でも、依頼なら引き受ける働き者の冒険者たちがいた。
また冒険者を引退しようかと思っていたタイミングで、クリトリフの選抜試験が開始され、実力を認められて神聖教団の
神聖教団の僧侶として教会に赴任して働いていて給料をもらっているみなしごの女の子と暮らすホウサイなどもいる。
また遊戯場で働く商人と冒険者の夫婦ルシアーナとローレックたちがいる。
こうした人たちは、冒険者ギルドの預金サービスの解約からの商工ギルドに預け先の乗り換えの流行に乗ろうとはしなかった。
お金儲けよりも自分たちの生活で何が幸せかを考えて生活している。
ゼルキス王国の将軍で冒険者ギルド長のクリトリフが、ランベール王の国葬に参列していたのは、こうした事情があり帝都からゼルキス王国に情報屋リーサ、商工ギルド代表シャーロットを連れて、一度、ゼルキス王国に戻って来ていたタイミングで、マキシミリアン公爵夫妻がランベール王の国葬にレアンドロ王も参列するかを確認するため、ストラウク伯爵領から王都ハーメルンに戻って来たからであった。
賢者マキシミリアンは、ダンジョンに魔獣モドキを出現させることはできないと、キッパリと謁見の間のレアンドロ王の御前であっても言い切った。
経済的な影響について、神聖教団の本部にホムンクルス研究の情報を探りに行った時に、幹部のアゼルローセとアデラが神官たちをなだめてくれなければ、長年に渡り教団の資金源にしてきたのに、どのように考えているのかと、かなりマキシミリアンは責められた。
その時の威圧感――蜂の巣をつついたあとの蜂たちのように、今後の不安に動揺している神官たちに比べれば、情報屋リーサや商人シャーロットはとても落ち着いているように見えた。
「聖女様を探索するのに協力していただけないでしょうか?」
「聖女様は、ターレン王国にいます」
あっさりマキシミリアンの隣に立つエルフ族のセレスティーヌに言われ、情報屋リーサと商人シャーロットは思わず顔を見合せて驚いていた。
情報屋リーサや商人シャーロットは、エルネスティーヌ女王陛下を拝謁したことがある。
また、セレスティーヌが、エルネスティーヌ女王陛下の姉君であらせられることを、将軍クリトリフから二人は聞いて知っている。
情報屋リーサと商人シャーロットは、とても場違いなところへ来てしまったとひどく緊張しまくっていた。
その緊張の糸がほどけたのは、セレスティーヌのこのエリザの情報を聴いた瞬間だった。
また、レアンドロ王が「ほう、ターレン王国で、聖女様はいかがおすごしなのか?」と可憐な美少女エリザのことを懐かしみ、セレスティーヌにたずねた。
「毎日、温泉につかって、クフサールの都の大神官シン・リー様やアルテリス伯爵婦人とのんびりしながら、恋の相談を聞いている感じで、元気にすごしているから心配ありません」
賢者マキシミリアンがそう答えたのを聞いて、ちょっとムッとした表情に情報屋リーサと商人シャーロットはなった。
私たちやトービス男爵に帝都のことを丸投げしておいて、温泉でのんびりなんて、どういうことですか?!
という困惑のあと、ちょっとイライラしてしまった。
すぐに、エリザが恋の相談をしているとマキシミリアンが言ったことに違和感を感じて、そのイライラは少しおさまったのだけれど。
「ほう、占いを教えてもらって身分を隠しながら、ご苦労なされて、旅をなさっていたと。今は、ストラウク伯爵という人に保護されておるのか」
レアンドロ王もエリザのファンの一人なので、安心したような笑顔を見せた。
マキシミリアン公爵夫妻は、エリザが身分を隠すことなくターレン王国を旅していたことを説明するのは時間がかかるので、この場ではレアンドロ王に話さないことにした。
「こちらのお二人からお話をうかがったのだか、聖女様はエルフの王国を目指しているとのこと。セレスティーヌが聖女様をエルフの王国へお連れすることはできぬのか?」
レアンドロ王に言われたマキシミリアン公爵夫妻は顔を見合せたあと「残念ですが、今すぐというわけにはいかない事情があるのです」と答えたのだった。
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