第375話
冷酷非情のギレスに逆らう連中をびびらせて、私はたまに「まあまあ、わかってもらえばいいのです。ギレス、許してあげましょう」とか言ってみたりして、優しい女伯爵様って感じで、なだめてみたりしたわ。
商売も儲かってきて楽しくなってきたところだったんだけどね。
私はね、バーデルの都から、もっと呪力を引き出せたら、シャンリー教っていうのを始めるつもりだったのよ。
ちょっと、アルバータ、笑いすぎだから。いいじゃない、私はすごい美人なんだから、信者を集めて崇め立てられてもいいと思わない?
バーデルの都は、伯爵領の中央にあって、もともと大市場があるから、王都トルネリカ以外の地域から、放っておいても人が流れ込んで来やすいわけよ。
変態のローマン王は
バーデルの都は、バルテット伯爵の領地だったのは知ってるわよね。
そういう伯爵がいて、リヒター伯爵よりちょっと若いけど、五十歳はとっくに越えた人だったんだけどね。
そのバルテット伯爵の息子で、オーギャストっていう二十代半ばぐらいの子がいたんだけど、その子が王都トリネリカの美人な貴族令嬢シュゼットをお嫁さんにもらうことになったって、ローマンのお馬鹿さんは噂を聞きつけたっけわけ。
でね、アルバータ、ローマン王のお馬鹿さんな
そうそう、今のランベールの寵妃の三人は、オーギャストの結婚式の真っ最中に「王の命令だ、服を脱げ!」って脅されたのよ。
バルテット伯爵の再婚した若妻アリアンヌと、前妻の娘のミリアと、花嫁のシュゼットの三人を裸にさせて、抱きついたり、胸を揉んだりしたの。
それは伯爵と新郎のオーギャストもランベールにぎゃんぎゃん文句を、押さえつけられて動けなくされてたけど、わめいたらしいわ。
バーデルの都の住民たちはおろおろして、でも見た目はランベール王だから、手も出せなかったのよ。
それでお馬鹿なローマンは「謀叛の容疑で王都トリネリカに連行する!」ってやったわけ。
王になったばっかりのランベールの評判は、めちゃくちゃ悪くなるわよね。
そのままね、バーデルの都に統治者を置く指示は出さないで、美人の若妻と花嫁の乙女と伯爵の娘の美少女を、お馬鹿さんだから後宮に入れてね、好き放題にしたわ。
モルガン男爵と裏で手を組んだ私に、政務を丸投げしたの。
宮廷議会の会議も、がんがんさぼりまくって。
だから、そのあと私がバルテット伯爵の後任で、ランベール王から指名されてバーデルの都に来た時は、住民がみんな敵なんじゃないかって雰囲気だった。
どうしたかっていうとね、言うこときかないで、盗賊団に入れ知恵された前任の伯爵の手下の小貴族たちが、私を追い出すように毎日、あちこちで騒いでたから、フェルベーク伯爵にお金を借りて、親衛隊を設立して、いっぱい処刑しまくったわ。
まあ、すぐに返済は終わったけど。
一年半ぐらいね。遊郭と賭博場の売上が上がってきたから。
奴隷市場って、思ってたよりも繁盛しなかったなぁ。
評判が悪くなるわりに、奴隷の安売りするわけにもいかないし。希少価値があるから、高値で売れるんだけど、落札価格が高過ぎるとね、オークションに参加するお客が尻込みして減っちゃうのよ。
そしたら、共同経営の奴隷市場の商品の奴隷はフェルベーク伯爵領から仕入れしてるんだから、もっと利益の取り分をよこせって調子にフェルベークが乗り出してきたから、ちょっとめんどくさい感じになって。
私に逆らう噂があるって住民の情報を親衛隊で買い取りさせた。
まあ、情報がでたらめでもいいの。
で、住民に連行させてきた容疑者だけ集めた地区を作って、雇った住民に脱走しないように見張らせたわけ。
親衛隊は、拷問と処刑だけが仕事よ。
あとは、住民たちに給料を払うだけ。
容疑者は、一つの家に三人で一組にして、新入りには両手拘束で食事は控えめにしたわ。十日間、いい子で拘留されたら、ちょっとえらくなる。手枷も外してあげる。
三十日で親衛隊の協力者になれば、雇ってあげる約束をして開放する。
協力者にならなかったら、ギレスがいじめるって感じ。
こうしたら、騒いだり、邸宅に石を投げる住民はいなくなったけどね。
分担させて、責任を分散させると罪悪感が薄くなるのね。一致団結、絆、まあなんでもいいけど、一番嫌なところだけ親衛隊にやらせてあげたら、みんな、うまくおとなしくなった。
お金も貯まってきて、いい感じだったのよ。アルバータ、お金貯めるのって、ちょっと癖になるのよ。
まさかね、ギレスとフェルベークがずっと前からできてて、私を裏切るとは、私は男どうしのそういうのって知らなかったから。
王都トリネリカの貴族には、女の子好きの令嬢とか貴婦人の噂はあるから知ってたんだけど……。
亡霊になってみて、お馬鹿なローマンが、息子のランベールにこだわったのは親子だったからってわけじゃなかったのがわかったわ。
憑依に適した体の人って、なかなか見つからないのよ。
エステルみたいに私に惚れてめろめろになってくれたら、ちょっと話はちがってくるんだけどね。
ねぇ、アルバータ、法務官レギーネってぶさいくな女じゃないわよね?
それなりに美人?
あー、ランベールの寵妃たちぐらい美人なら、贅沢は言ってられないわ。
亡霊はね、気をつけないと、新月の夜には黒い梟が現れて、どこかに連れ去られたりするのよ。
アルバータ、もしも黒い梟を見かけたら、石を投げて追い払ってね!
++++++++++++++
お読みくださりありがとうございます。
「面白かった」
「続きが気になる」
「更新頑張れ!」
と思っていただけましたら、★をつけて評価いただけると励みになります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます