第373話
ターレン王国の宮廷議会とゼルキス王国との「ゼルキス・ターレン和親条約」が、ランベール王や王の側近である法務官レギーネとゴーディエ男爵の承認がないまま無断で進められていた。
ゼルキス王国からは、大使として神聖騎士団の聖騎士ミレイユが、条約の内容を協議するために派遣された。
この条約について法務官レギーネは、各地の伯爵領には公開せずに、視察団として大使の聖騎士ミレイユと同行した神聖騎士団のメンバーを扱う対応を行うように官僚たちへ指示を出した。
テスティーノ伯爵はエルフェン帝国の評議会による会議に、有識者として婦人の獣人娘アルテリスと招待されて参加。
その会議のあと、ゼルキス王国へ視察に立ち寄り、ゼルキス王国のレアンドロ王から「ゼルキス・ターレン和親条約」の使者として遇されることになった。
法務官レギーネが、地方の統治者の伯爵たちに隠そうとした「ゼルキス・ターレン和親条約」の情報は、帰国したテスティーノ伯爵により、ストラウク伯爵にもたらされることになった。
ロンダール伯爵は、テスティーノ伯爵婦人アルテリスや大陸南方クフサールの都の統治者の大神官シン・リーを連れたエルフェン帝国の若き宰相である聖女エリザが突然、自領へ訪れ、彼女が語ったことで「ゼルキス・ターレン和親条約」が王都トルネリカの宮廷議会により進められている情報を知った。
ターレン王国維新の三傑と、のちに呼ばれるうちの一人ロンダール伯爵は、ランベール王の廃位を求める各地の統治者や有力者の署名活動を開始した。
エリザたちがリヒター伯爵領の預言者ヘレーネを訪ねると聞き、連判状を立ち寄るブラウエル伯爵の母である有力者ジャクリーヌ婦人に届けて欲しいと、ロンダール伯爵はエリザたちに頼んだ。
「ゼルキス・ターレン和親条約」の情報は、聖女エリザにより、ロンダール伯爵領、ブラウエル伯爵領、ベルツ伯爵領、リヒター伯爵領、パルタの都へと広められた。
この情報が届いていない地方は、国内ではフェルベーク伯爵領とバーデルの都のみとなっている。
フェルベーク伯爵領へ「ゼルキス・ターレン和親条約」の提案が宮廷議会で進められていたことを、テスティーノ伯爵は情報を伝え、ランベール王の廃位――実質的な絶対王制の廃止、宮廷議会の解体と新しい評議会の設立という変革について、ザルレーとヴァリアンに伝え、連判状の署名に加わってもらうため、語り合う気なのだった。
ターレン王国の維新の三傑の二人目はこのテスティーノ伯爵であった。
ザルレーとヴァリアンは、
フェルベーク伯爵が暗殺されている事実を、元老院の権力を握っていた四卿の名士たちは、一度はゴーディエ男爵を影武者に仕立て上げ隠蔽に成功。
しかし、ゴーディエ男爵がランベール王の失踪の不穏な噂を、バーデルの都の奴隷商人たちから聞き、影武者の役割を放棄して、ロンダール伯爵領の密偵ソラナと協力して逃亡。
元老院の四卿たちは、絶大な支持を持つ若き議員ザルレーとヴァリアンに警告の意味で、人を雇い襲撃をかけた。
しかし元傭兵ザルレーと武器商人ヴァリアン、ヴァンピールの踊り子アルバータに、逆に返り討ちにあってフェルベーク伯爵の死という元老院の機密を握られることになった。
ロンダール伯爵が、踊り子アルバータからザルレーとヴァリアンの今の立場について聞き訪れたことや、フェルベーク伯爵の死の情報は、すでにゴーディエ男爵がロンダール伯爵に伝えたので知られていると、二人に話した。
ザルレーとヴァリアンは政治に関わる生き方をしてきていなかったので、四卿から実権を奪ったけれど、伯爵領を剥奪されかねない機密を持て余していた。
そこで、ロンダール伯爵とテスティーノ伯爵は、リヒター伯爵の御曹司である貴公子リーフェンシュタールと相談。
彼の師匠である学者モンテサンドの協力を求めることにした。
元官僚モンテサンドと元法務官マジャールは、フェルベーク伯爵の死後は「ザルレーとヴァリアンを後継者とし、四卿を二人の補佐官に命ず」という遺言状を作成して、パルタの都から王都トルネリカの宮廷議会へ送ることにした。
偽遺言状に使われたフェルベーク伯爵の印鑑は、ドレチ村の職人たちが精密なものを作成した。
呪術師シャンリーが生前、ランベール王とフェルベーク伯爵の密書が邸宅に隠されているのを発見している。
その密書から、現在は紛失しているフェルベーク伯爵の印鑑が製作された。
ターレン王国の維新の三傑、その三人目は学者モンテサンドである。
呪術師シャンリーを水神の勾玉に封じて、踊り子アルバータがシャンリーから聞き出した情報が、フェルベーク伯爵領が剥奪される危機を結果として救ったことになる。
ザルレーとヴァリアンが、宮廷議会が認めたフェルベーク伯爵の後継者となったことで、動揺して心が乱れた者が、バーデルの都にいた。
執政官ギレスは「君が私の後継者だ」と、熱く見つめられながら、伯爵の証の本物の印鑑を、生前のフェルベークから手渡されていたのである。
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