第301話
なぜ女神ラーナの世界へ、邪神ナーガが渡ってくると、貴族令嬢エステルの姿へと
そして、エルフェン帝国の宰相エリザが、エルフの王国を目指す前に気づいていたゲームのエピソードに登場する人物たちの性別と性格の変化。
登場人物の性別が変化することで、ゲームのエピソードの物語が変化している。
邪神ナーガは自分が美少年の姿に変化して、男尊女卑のフェルベーク領に大混乱を引き起こそうと考えた。
フェルベーク伯爵領で最も崇拝される存在になることで、崇拝する美少年がフェルベーク伯爵領では最も蔑まれる行為を尊いと宣言することで、フェルベーク伯爵領の統治者たちや住民たちの意識を改革してしまおうと画策した。
男性と女性と恋愛することは尊いという意識が、美少年と成人男性の同性愛を推進していたフェルベーク伯爵領に混乱を引き起こすきっかけとなるとナーガは上機嫌で確信していた。
ところがナーガは、美少女の令嬢エステルの姿から変化することが、頭の中にはかなり具体的に美少年ヨハンネスの姿を思い浮かべていたのに、変化できなかった。
上機嫌か不機嫌かという感情は世界を変化させることには関係がない。上機嫌でなければいけないというわけではない。上機嫌という気分は永遠に維持し続けられるわけではない。
気分に左右されないでも、意識し続けられることが必要。
上機嫌の方が、想像していて、気持ちのしんどさがないというだけである。
意識が変われば言動が変わる。そして、周囲の関わる人間関係は違和感が少ない者たちが関わってくるようになる。
似た考えを持って、同じ理想を持つ人が集まった人間関係のグループができれば、その人数が多いほど影響力は強くなる。
ナーガは自分が持っているカードで勝負することではなく、他のカードにチェンジして勝負することを狙った。
美少女から美少年にチェンジするということは、美少女という条件のカードを使えないと判断して手放すようなものである。
ナーガは、目的の達成のための自分の可能性を信じずに放棄してチェンジしようとした。
エリザは自分の可能性を手放すことなく、チェンジしようとしなかった。
呪術師シャンリーに、エルフェン帝国の宰相エリザの肉体を奪われないという目的を強く意識していた。
その意識から、エリザ自身が王宮で出歩いていて帝都の市街地で拉致されるという展開を阻止するために、執事のトービス男爵をメッセンジャーとして情報屋リーサと連絡を取り合っていたり、情報屋リーサを舞踏会に招いた。
自分の行動を変えるけれど、執事のトービスという協力者を疑うことなく信頼して、自分が帝都の市街地へ王宮から出て歩きまわるよりも目的を達成するための近道を探した。
この時のエリザは、呪術師シャンリーをとても怖いと思い浮かべていて、とても上機嫌とはいえない気分だった。
幸せになりたいと思い、祈ってみたり、自分の理想を抱く。強く意識することで目的を達成する方法を探しやすくしたり、行動を改めてみるヒントを探してみる。
ナーガとエリザの二人は、途中までは同じやり方をしている。
状況が不利でも、絶望してあきらめたりはしない。
自分の創った世界から思い通りに渡ってくることには成功して気分が上機嫌だったナーガ。
思いがけず大好きなゲームの世界へ転生してきたけれど、悲劇の展開が待ち受けている悪い予感に怯えている不機嫌なエリザ。
ナーガは美少女の令嬢エステルという人物の可能性を信じることはできなかった。
フェルベーク伯爵領に男装して潜入して、伯爵の邸宅の寝室で蛇神のナイフで、相手が少女だとわかり、騙され欲情した自分を嫌悪して、目の前の少女にやつあたりをするように罵倒したフェルベークという人物を暗殺した。
そんな美少女エステルの肉体の身体能力や、呪術師シャンリーの心と同調できる順応性という他の人物にはない特徴をナーガは、あっさりと放棄しようとした。
手持ちのカードで勝負するしかない。そして、限られた条件のなかで、理想を実現した時の達成感は、かなり満足度が高い。
エリザは世界の状況を変化させることに成功した未来を手に入れて、その成功を小さな自信として賢者マキシミリアンと交流を持ってみる行動や帝都に月の雫の花を植えてみる施策を実行している。
ナーガは、女神ラーナの世界と女神ノクティスの夢幻の世界を自分の創り出した世界と統合して、唯一無二の最高神として君臨してエネルギー回収を進めていき最終的に、新たに創り出した天界で、雌雄一対の神龍に戻り、甘く幸せな戯れを繰り返している日々を望んでいる。
人間がエネルギーに還元され尽くして、滅び去ったあとの永遠の楽園をナーガは求めている。
とてつもない手間やめんどうさを覚悟して、長い時間をかけて壮大な世界征服を、本気で考えて行動しているナーガの考えを理解する人間は数少ない。
クフサールの大神官にして女王のようなシン・リーの秘術【浄化の矢】で、魔族の眷族ヴァンピールから限られた寿命という時間制限を持つ人間に戻された神聖教団の幹部アゼルローセとアデラは、ナーガに近い理想を抱いていた人物たちである。
人間から吸血し続ける限り、老いることの見た目の変化に悩むこともなく、恋する相手と仲良く暮らし続けること。見た目の美しさが老いによって衰えることでパートナーから幻滅されたくないという不安、どちらか先に寿命が尽きて、転生して再会することを夢みて取り残される悲しみから解放された幸福をもたらしてくれた教祖ヴァルハザードが転生して、ヴァンパイアロードの教祖として、信者たちにも幸福を分け与えてくれると信じていた。
ナーガや神聖教団の幹部の恋人たちは、パートナーとの恋愛している日々こそが、最高の幸せと思っている。
恋愛最高という考え方は、エルヴィス号の料理長である乙女ベラミィにもある。
ただし、自分自身の恋愛も、他人の恋愛も最高と思っているところが、ナーガや神聖教団の幹部の恋人たちと少しちがう。
ナーガや神聖教団の幹部アゼルローセとアデラは、自分たちの恋愛ありきで考えている。
料理長の乙女ベラミィは、想像力が豊かなので、他人である恋人たちが葛藤したり、時には感情的になりながら愛し合うのを思い浮かべるだけで、とても美しいとうっとりとしてしまう。
ターレン王国のパルタの都に滞在中のエリザは、執政官マジャールと二人の令嬢の恋愛がどうなっていくのか、パルタの都の住民の主婦の女性たちと同じように今後の展開がとても気になっている。
執政官マジャールをエリザは占ってあれこれ話をしたので、マジャールに素敵な再婚相手が見つかればいいのにと思っていた。
エリザには、自分が執政官マジャールに惚れられているという認識がない。
オーディションが開催されて、二人の美人な乙女ハンナとアナが選ばれたので、エリザと美少年ヨハンネスは、とてもわくわくしていた。
マジャールが、ハンナとアナの二人を伴侶に迎えるという恋の展開を、エリザとヨハンネスも予想していなかった。
どちらを選ぶか迷った優柔不断なマジャールが、カードで占って欲しいと、滞在している領事館に来るかもしれないとエリザは想像して、シン・リーやアルテリスに話していた。
思っていることがただ実現するだけの世界よりも、思いがけずうれしい驚きがある世界が、女神ラーナが加護している聖戦シャングリ・ラの世界なのである。
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