第294話
辺境地帯の大異変では、亡霊たちがエネルギーに変換される特別な異世界――邪神ナーガの分身の下僕である魔獣ナーガの支配する淫獄の世界と愛と豊穣女神ラーナの世界が融合しそうになる怪異が起きた。
赤錆び銀貨の発生は、邪神ナーガの世界だけでなく、いろいろな異世界へ愛と豊穣の女神ラーナの世界が願望や夢の力で、まるでプログラムが
想像力や心は、混沌そのものであるあらゆるイメージの断片がまだ意味を与えられずに漂う始源の海までつながっている。
愛と豊穣の女神ラーナの世界、邪神ナーガの世界と魔獣ナーガの世界、女神ノクティスの夢幻の世界は、同じこの大いなる混沌から創世されている。
エルフェン帝国宰相エリザの肉体に宿っている現代の失業した無職のニートで、ネットゲームだけが趣味だった二十歳の名前も不明な女性の心が生きていた世界――聖戦シャングリ・ラの制作者たちやゲームのプレイヤーたちが暮らしている日常の世界、聖戦シャングリ・ラの二次創作のネット同人誌の世界も、大いなる混沌につながっている。
大いなる混沌とは、中国の思想なら
易占術とは、古代中国で作られた儒教の経書「四書五経」の一つ「易経」を教本にした占術。
「易経」は占いの理論と方法を説く書であると同時に、哲学、思想の書でもある。
伝説によれぱ紀元前四千年ごろに、古代中国で「三皇」と称される三人の名高い帝王のうち、
紀元前千百年頃に周王朝の
その後、紀元前五百年頃に孔子を中心とした学者グループが十翼を加えて完成したのが、今に伝わる易経。日本には六世紀から七世紀ごろに伝来。
万物を形成する根源力であり、宇宙を構成する「気」の変化を把握して解釈し、未来を占う書であるため、易経は英語で「Book of Changes(変化の書)」と訳されている。
ロンダール伯爵やストラウク伯爵は、この中国の思想や占術に近い考えや法術を、先祖から受け継いでいる人物といえる。
大いなる混沌からたくさんの創作物の世界が、作品として発表されている。
その虚構と思われている異世界では、それぞれの世界で登場人物と思われているけれど、多くの人たちが日常の生活をして生きているのである。
ただし、大きな一つの世界だと理解されることはなく、虚構と現実の区別がつかない異常者と思われてしまいがちである。
赤錆び銀貨が引き起こしている怪異は、あらゆる創作された世界も想像することができて、一つの大きな世界だと認識さえできればたやすく渡ることも、自分の生きている世界も変えることができるという可能性でもある。
現在は配信終了しているオンラインゲームの聖戦シャングリ・ラの世界は、忘れ去られることなく原案者がマンガ化したり、別の作家と協力してノベライズされていることで、忘却されて消失すること――正確には大いなる混沌の漂う意味を持たない断片に戻ることなく存在し続けている。
消失してしまっても、再び別の作者によって、まったく異なる細部を想像されて、別の創作物として再構築されて、新たな異世界となって創世されるだろう。
エリザがいる聖戦シャングリ・ラの世界で起きている人間関係のトラブルや暮らしている人たちの考え方などは、大いなる混沌というところではつながっているのでどこか似ているトラブルや考え方が、別の創作物の異世界で生活している人たちのところでも発生している。
それらをすべて一つずつ確認して、どうすればいいのかを語り尽くすには、寿命が足りない。
どうすればいいのか、孤独だと感じて、誰にも理解されないと思いトラブルや人間関係に不信感を抱いて苦悩している人はいる。
そんなときには、たくさんの創作された別の世界で生きている人たちのことを思い浮かべながら、自分なりに納得できる生き方を見つけ出して、一つずつ試していくしかない。
まるで似ていない人生を生きている他人かもしれない。
どこか自分と似ていると感じて異世界の他人に共感することもあるだろう。
どんな世界にいても、大いなる混沌ではつながっていて、その世界で孤立している状況に陥っていても、本当は誰でも孤独になることはできない。
赤錆び銀貨を握って眠らなくても、異世界の情報を知ることはできる。
機会さえあれば、同じ世界の他人とも話をすることや、たとえは同じ聖戦シャングリ・ラのファンだとわかり意気投合して、人生のトラブルに対して協力し合えた人たちもいる。
生きていくには、タイミングと想像力が大切なのは、聖戦シャングリ・ラの世界だけではない。
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