第292話
パルタの都にエルフェン帝国の宰相エリザ、獣人娘アルテリス、クフサールの大神官シン・リー、神聖騎士団の騎士団長の聖騎士ミレイユ、参謀官マルティナ、戦乙女と呼ばれる九人の隊長たち、さらに、貴公子リーフェンシュタール、ブラウエル伯爵と子爵ヨハンネス、執政官マジャール、学者モンテサンド、女店主イザベラ、商人マルセロと、多くの多才な顔ぶれの人物たちが集まっている。
白い梟のホー、バイコーンのクロ、野生馬の赤毛の駿馬。
魔剣ノクティス。
人だけでなくターレン王国では見かけない動物だけでなく、三柱の神の一柱である夢を司る女神までいる状況となっている。
そして、ストラウク伯爵の屋敷には、賢者マキシミリアン、エルフ族の王族姉妹の姉セレスティーヌ、最後のドワーフ族の細工師ロエル、ロエルの弟子で恋人の職人の青年セスト、ストラウク伯爵、伯爵の伴侶の乙女で山の巫女のマリカ。
さらに、ヴァンピールのランベール王の右腕と呼ばれるゴーディエ男爵、サキュバスの術者ソラナまで、ストラウク伯爵の屋敷に訪れていて、フェルベーク伯爵領の賞金稼ぎたちの追跡から逃れ潜伏中である。
蛇の道と呼ばれる街道沿いにある青蛙亭では、フェルベーク伯爵領からの逃亡者の恋人たち――貴族で武器商人ヴァリアン、ガルドと闘技場で対戦して生き残れた強者の傭兵ザルレー、そして、祟り鎮めの踊り子アルバータという美青年たちと美女が、人探しの名人という噂がある幻術師ゲールと助手で元冒険者の乙女のエレンを訪れている。
大陸の東方のシャーアンの都では、エルヴィス提督が帝都の商人シャーロットとの婚礼準備として魔法で浮遊する帆船を造船中に、神聖教団の幹部で恋人たちのアゼルローゼとアデラを連れた美少女――令嬢エステルの容姿に変身している邪神ナーガが訪れ、その婚礼用の帆船を買いつけようとするトラブルが発生している。
帝都では酒場「三日月と薔薇」の経営者の情報屋リーサが、冒険者ギルドの総ギルド長でゼルキス王国の将軍クリフトフに協力して冒険者たちに、腕試しの情報を提供していた。
とはいえ、見込みのある強者の冒険者は少なく、熟練の剣士ラウールがクリフトフからスカウトされただけの状況となっている。
魔法も筋力と気合いで打ち払う将軍クリフトフの強靭さが人間離れしている。
若い頃に、親友のマキシミリアンと旅をして鍛えたという話を情報屋リーサは聞き出すことができたけれど、どんな鍛練をすればそんなことができるようになるのかまでは、よくわからなかった。
帝都には月の雫の花――鈴蘭に似ているが、夜になると淡い光を放つ不思議な花がたくさん植えられている。
クリフトフから、情報屋リーサについて、帝都の冒険者ギルドの受付嬢のアーヤは、彼女はどんな人なのか質問されて、熊のような大男のクリフトフの精悍な顔をまじまじと見つめてしまった。
五十歳近い年齢のはずだが、この逞しい体つきのクリフトフの見た目は、少なくても十歳以上はアーヤからは若く見える。
(あれっ、ギルド長は美人のリーサさんが気になるのかしら?)
情報屋リーサと受付嬢アーヤは親友である。アーヤは冒険者ギルドの受付嬢の仕事を終えたあと、酒場の手伝いをしている。
先日、リーサからもクリフトフの昼間の様子や「ねぇ、あの人はどんな人なの?」とアーヤは質問されていた。
帝都に植えられている不思議な花は、エルフ族の王国がある大樹海にしかない。
この花の不思議なところは、恋する人の気持ちがあふれているところほど美しく咲き、その優しい光で夜を照らす。
受付嬢アーヤは、年の差があっても、本人たちがそれでいいなら恋をしてもいいと思っている。
少し気になっているのは、たまに酒場のウエイトレスの仕事をして手伝っている令嬢カレンのことである。
令嬢カレンは、情報屋リーサに惚れて夢中である。
貴族は婚姻相手と仲良く夫婦として暮らす人もいるか、伴侶とは別に契約上の関係だけで恋愛関係ではなく、伴侶とは別の恋人と仲良く交際する人もいる。
帝都の貴族令嬢や貴婦人は、同性である女性と交際することもよく聞く話である。
(情報屋リーサさんとギルド長がおつきあいすると、カレンちゃんはどうなるんでしょう。うーん、ちょっと心配ですね)
情報屋リーサが、ギルド長のクリフトフと交際しながら、令嬢カレンとも交際したとして、令嬢カレンがクリフトフに嫉妬したとしても、何ができるわけでもない。
二人には、大きな熊と仔猫ぐらいの体格差がある。
商人シャーロットは、恋人の紳士エルヴィスが結婚準備のために故郷のシャーアンの都へ帰っているので、ちょっぴりさびしさを感じている。
細工師ロエルや弟子のセストが帝都からマキシミリアン公爵夫妻と旅に出たので、新商品の開発はとりあえず中断した。
そうした事情で、商工ギルドの忙しさが少し落ち着いてきたせいもある。
受付嬢アーヤから、令嬢カレンが心配だという相談を昼食を一緒に食べながら、商人シャーロットは聞いていた。
「カレンちゃんと交際していてもリーサさんは、結婚できるわけじゃないですから」
「結婚しないでも、仲良しでおつきあいしている人たちもいます」
「リーサさんが、ギルド長みたいな感じの人が好みとは思いませんでしたよ~」
「そうですね」
「でも、なんかとってもカレンちゃんは、モヤモヤしてる感じがするんですよね」
令嬢カレンがクリフトフとまともに勝負ができる何かがあれば、勝ち負けはどうあれ、ちょっとは気持ちがスッキリするかもしれないと、受付嬢アーヤと商人シャーロットは話し合い、二人とも首をかしげて考えて込んでいた。
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