第281話

 執政官マジャールのお嫁さん候補の選考オーディションのあと、学者モンテサンドは、エリザたちから聞いた情報と参謀官マルティナから聞いた情報を整理して書き出してみた。


・ゼルキス王国の王都ハーメルン

/レアンドロ王

・辺境地帯北部ニアキス丘陵のダンジョン/賢者マキシミリアンとモンスター娘のミミック

・辺境地帯南部の森林地帯/点在する小村の果実酒作りの職人たち

・ターレン王国辺境付近の街道沿い/青蛙亭のゲール

・ターレン王国の王都トルネリカ/ゴーディエ男爵と法務官レギーネ

・パルタの都/執政官マジャール

・フィーガルの街/ロンダール伯爵

・ドレチの村/ロンダール伯爵領の木工職人たち

・隠れ里/ロンダール伯爵領の術者たち

・レルンブラエの街/ブラウエル伯爵とヨハンネス、大伯爵ロイドとジャクリーヌ

・ルゥラの都/元老院のコンラート卿、エルマー卿、グンター卿、フェルモ卿の四人の貴族たち

・バーデルの都/執政官ロイド

・スタークの街/ベルツ伯爵と子爵シュレーゲル

・トレスタの街/リヒター伯爵

・耕作地の農園の村/リヒター伯爵領の平民階級の村人たち

・芋農園の村/リヒター伯爵領のシェアハウス暮らしの女性の村人たち

・ポーレルストラの街/テスティーノ伯爵

・スヤブ湖周辺の村/ストラウク伯爵領の漁師たち

・山の民の村/ストラウク伯爵領の猟師たち

・ストラウク伯爵の庵と屋敷/ストラウク伯爵と山の巫女のマリカ

・双子山/熊とカモシカ――険しい山中のため人は住んでいない。


「リーフェンシュタール、連判状で名を連ねて盟約を結んでいないのは、王都トルネリカのゴーディエと法務官レギーネ以外では、バーデルの都の執政官ギレス、フェルベーク伯爵領の元老院の四人の貴族たち、そしてテスティーノ伯爵とストラウク伯爵だが、このランベール王廃位の盟約に賛同しそうなのは、テスティーノ伯爵とストラウク伯爵だと思うのだが?」

「私もそう思います。このあと、ロンダール伯爵と会って、連判状を確認してもらい、テスティーノ伯爵との交渉をどのように進めるべきか相談します」


 ゴーディエ男爵は、同じ学者モンテサンドの弟子で、リーフェンシュタールの兄弟子にあたるが面識はない。


「王都トルネリカで、神聖騎士団の親善大使のみなさんは、ゴーディエや法務官レギーネと会っていない。官僚のルーク男爵が、宮廷議会から担当としてゼルキス王国の大使である彼女たちの応対を任せられていたようだ」


 ルーク男爵は、ロンダール伯爵領にいるニルスとヨハンネスの父親で、派閥としては伯爵領派閥の官僚で、ジャクリーヌとはブラウエル伯爵とヨハンネスの婚姻で関わりがある人物である。


 ゴーディエ男爵は、モルガン男爵が王都出身の名門貴族派閥で宮廷議会を統制する前に活躍したヴィンデル男爵というリヒター伯爵領出身の有名な官僚の孫にあたる人物である。

 このヴィンデル男爵という人物が生存中は、先代のローマン王も逆らえずにいさめられて、おとなしく政務を行っていた。


 王都が半壊した震災で名門貴族の官僚も多く亡くなり、宮廷議会も地方伯爵家の血統の官僚に頼らなければならないほど人手不足なのだろうと学者モンテサンドは考えている。

 実際、名門貴族派閥の官僚で牛耳られていた宮廷議会は、モルガン男爵が暗殺され、ゴーディエ男爵と法務官レギーネをランベール王が王の推薦で官僚として任命されたことで、名門貴族派閥の権勢は削がれ始めていた。

 ランベール王に憑依したローマン王が、モルガン男爵の次に宮廷議会を動かすため、法務官レギーネに権力者の地位を与えた。

 さらに震災によって、宮廷議会は人員変更を行わざる得ない状況となった。


 ゼルキス王国との合併案で動いている名門貴族派閥の官僚たちがすぐにランベール王へ意見を上げるための決議ができないのは、こうした事情も関係している。


「テスティーノ伯爵と交渉するのであれば、アルテリス婦人にもリーフェンシュタールと同行してもらう方が話が早い気がする」


 学者モンテサンドは、貴公子リーフェンシュタールにそう言ってから、腕を組み黙って考え込んでしまった。


 獣人娘アルテリスは、エルフェン帝国の宰相エリザの護衛として旅に同行している。


 エリザは神聖騎士団がゼルキス王国に帰国するのと一緒に、ゼルキス王国か、辺境地帯のニアキス丘陵にあるダンジョンに送ってもらうつもりだと、学者モンテサンドに話していた。


 そこを踏まえて考えれば、テスティーノ伯爵の伴侶であるアルテリスに同行してもらうため、リーフェンシュタールと同行して、またロンダール伯爵領のフィーガルの街へエリザに戻ってもらうというのは、難しいことに思える。


 モンテサンドが思うに、エルフェン帝国の宰相エリザの立場からすれば、ターレン王国の内情のごたごたに巻き込まれるのは、不本意な事態といえるだろう。


 学者モンテサンドは、すでにロンダール伯爵がテスティーノ伯爵に、ゴーディエ男爵と密偵ソラナのフェルベーク伯爵領からの出奔しゅっぽんに協力を要請していて、さらに呪術師シャンリーを警戒し、二人が協力を約束し合っていることを把握はあくしていない。


 パルタの都から、踊り子アルバータは、フェルベーク伯爵領出身の武器商人と傭兵の恋人たちに案内されて、青蛙亭を目指して三人で旅をしている。

 魔族の眷族ヴァンピールである踊り子アルバータと、魔族グールである神聖教団からの逃亡者である幻術師ゲールは、まだ出会っていない。


 学者モンテサンドと弟子の貴公子リーフェンシュタールが二人でどうにか、アルテリスを旅に同行させるために、エリザにどうやって交渉すればいいかを二人で考えている。




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