第247話
エリザは、村の女の子とマーオが仲良くしているのを見た。
(これからは、モンスターと人間が共存していく時代なのでしょうか?)
聖戦シャングリ・ラというゲームが、もしもダンジョン探索でプレイヤーの冒険者がモンスターを討伐していくだけのゲームだったら、エリザはこんなにはまらなかったと思う。
いろいろな登場人物のエピソードがあった。
エリザはいろいろな登場人物たちの気持ちを考えながら、ゲームを攻略していった。
カードキャラクターを集めて、育成したあと、他のプレイヤーと対戦して順位を競うのは、それなりに楽しい。スポーツで競い合うような感じで。
でも、それ以上にそれぞれの登場人物に人生があって、それぞれ抱えている事情や思いがちがう。
ゲームの中で、プレイヤー対戦ではないストーリーモードは、エピソードの章ごとに、主役になっている登場人物が異なっている。
エピソードの章をエリザは一つずつ、その登場人物たちの気持ちを想像しながら攻略していった。
それぞれが異なる人生の事情を抱えている。
エリザはマーオの餌やりをしているこの女の子も成長して、いつか恋をする乙女になるのだと思うと、ゲームの世界でも、どこでも同じように生活している人の心は変わらない気がする。
エリザは賢者マキシミリアンのダンジョンで親しくなったモンスター娘のスライムさんが言っていたことを思い出した。
いつかダンジョンを出て人間みたいに生活してみたいと言っていた。彼女は昔、優しくしてくれた人間の女性に憧れ続けている。
エリザはバイコーンのクロと初めて目が合った時、ちょっと怖いと感じた。
こちらの気持ちをじっと見つめて覗きこまれているようなのに、エリザにはバイコーンのクロと見つめ合っていても、気持ちがまったくわからなかったからだ。
女の子の手のひらの上で、マーオは名前を呼ばれると、もぞもぞと返事をするように動いていた。
女の子とマーオの気持ちが通じ合っているように見えた。
エリザは賢者マキシミリアンのダンジョンで暮らしているモンスター
気持ちが想像できないものは、とても怖い。
アルテリスとシン・リーに、エリザは山小屋風ペンションに帰ってから「マーオはなついているんでしょうか?」と聞いてみた。
「あたいはなついてると思う」
「虫みたいなものかもしれぬ」
アルテリスとシン・リーで、マーオがなついているかで意見が分かれた。
「マーオがダンジョンに生息していたら、あんなふうに人の手のひらに呼ばれたら降りてくるようなものなのに、モンスターだからって攻撃されるのかなって思うと、ちょっと悲しくなりました」
エリザは賢者マキシミリアンのダンジョンで親しくなったモンスター娘のスライムさんの事をアルテリスとシン・リーに話した。
「マーオも人間に優しくされていたら、人間に憧れたりするようになるのかなってちょっと思ってしまいました」
聖戦シャングリ・ラには、他のゲームとはちょっと違うモンスターが登場している。
森と湖だけの夢幻の領域で、最後の一匹のはぐれオークとルーシーという女性が一緒に仲良く暮らしている。
オークは、猪頭の獣人のようなモンスターで他のゲームでは敵モンスターとして襲ってくる。
しかし、ニアキス丘陵のはぐれオークはとても優しい。
ルーシーが産んだ卵から生まれた息子のガルドが青年になると、息子の旅立ちのためにはぐれオークたちは四匹いたのだが、危険なダンジョン探索へ向かった。
冒険者に敵モンスターだと誤解され、攻撃された。一匹になっても、ガルドのために武器の大斧や鎧、貨幣などを手に入れて負傷しながらも戻ってきた。
子供のために命がけで行動する親のオークなのだった。
オークには、ライオンのような習性がある。オスの子が成長すると、群れのメスを親子で奪い合ったりしないように旅立たせる。
エリザがもう一つ、気になったことがある。
バイコーンやマーオがダンジョンではなく、地上に出現していること。
モンスターが現在、地上に出現するのは、蛇神ナーガに関係する怪異や、怨霊の祟りなどである。
あとは神話の時代に、魔獣が蛇神ナーガに召喚されて徘徊していたぐらいである。
神話の時代の魔獣は古代のハイエルフたちがほとんど駆逐した。
大陸南方を大砂漠にした神話の時代の生き残りである巨獣サンドワームも、神聖騎士団の戦乙女たちが討伐済みである。
ダンジョンのモンスターは、マキシミリアンとミミック娘がすでに出現しないようにした。
エリザには、バイコーンやマーオが地上に出現している理由がわからず、蛇神ナーガの下僕の魔獣もわらわらと出現し始めないかと気になっていた。
気になり心配しているけれど、エリザには、聖騎士ミレイユと神聖騎士団の戦乙女たちのような戦闘力はない。
(バイコーンのクロやマーオみたいに、人と仲良くしてくれるものなら良いのですが、心配です)
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この第247話は、一度公開したあと、全部消去して、かなり訂正しました。
もしも、読んでいる途中で消えてしまった人がいたら、すいませんでした。
お読みくださりありがとうございます。
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