第94話
エリザ一行が旅をしている平原地帯の領域は、神聖教団の布教が大きな影響を与えている。
千年王朝が滅亡して、平原地帯は小国に分離して戦乱の混乱期を迎える。
統治者がいてもいなくても、耕作をして暮らしている
戦で敗れた国の人たちが流民になって、どこかの国で住民になるか、山賊のように森林に隠れて暮らすような治安の悪い悪循環が繰り返されていた。
王朝時代の神聖教団の教会があった村や街は廃墟になって打ち捨てられていた。
王朝時代から神聖教団の僧侶は教会を建て駐在する布教活動が行われていた名残りから、僧侶と少数の信者たちが修行して暮らしていた。
広葉樹林の森林と、平原の空き地と、居住地の跡地の廃墟で、統治者がいない状態で、どこか疑心暗鬼になりながら知り合い以外は余所者として警戒し合っていた。
広葉樹林の森林は、夏でも薄暗い。秋から冬には、どっさりと落葉して地面を埋めてしまい、
空き地で試行錯誤しながらあまり多く収穫できない作物を収穫して、しかたなく足りない分は広い森林へ凶事に巻き込まれないように祈りながら採取へ行く。
いつまで戦乱が続くのか。もうあちこちの小国が疲弊しきって戦が起きていないとは、情報を伝達して共有されていないので、言われても信じる者もいなかった。
約400年とも、もっと長い期間だったともいわれ、学院の学者たちにも、はっきりとわかっていない。とにかく、そんな荒廃した時期があった。
毎日、女神様に祈りを毎日捧げるだけでもいい、禁欲をする、清貧をよしとするなど、それぞれ、わかりやすい教えにして布教しやすくしながら少人数で、森林の近くや中にある廃墟を改築して僧侶をリーダーとして他のグループとの関わりを避けて暮らしていた人たちと、ただ生活することで必死な農夫の人たちのグループと、やさぐれていた人たちのグループがあった。
なんとなく耕作地があって、村人がいる居住地があって、人が集まっている街や都があるという状況になるまで、少人数の100人もいないグループで暮らしていた荒廃の時代があった。
そのうちに神聖教団の本拠地の古都ハユウから、魔力探知と占いで位置をつかんだダンジョンの調査が開始され始めた。
まだ回復ポーションは研究中であり、副作用もあったので多くの人に試す必要があった。
そこで平原地域へ渡った神聖教団の布教者たちは、平原地帯の住民たちと森林にいた獣人族などの者たちと出会うことになった。
広い森林の伐採と開墾を神聖教団の布教者たちは農夫たちのグループに教えた。しかし、初めのうちは嫌がっていた。森林は危険なところと考えていたから。
ダンジョン調査のために広大になった森林はじゃまだったのと、王朝時代から取り残された独自の女神信仰の信者たちのグループと布教者たちが対立したという事情があった。
山賊まがいのやさぐれた者たちのグループは、森林で獣人族のグループと抗争していた。
農夫のグループが神聖教団の布教者たちによってつながりができてきて、開墾によって農作物の収穫量が増えていくと、獣人族に手を焼いていたやさぐれた者たちのグループが、耕作地の近くの小村を襲撃し始めた。
森林からやって来た獣人族へ護衛を頼むようになった。また神聖教団はダンジョン調査と布教を続け、前時代の神聖教団の信者たちも一緒に森林の伐採に参加させていった。
こうして、また獣人族を護衛として集落ができて、森林伐採で食糧事情が改善されると、人が増え始めた。
平原地域の風景は、ずいぶんすっきりとしてきた。
農夫のグループの中でも、人数の多いグループは、他のグループの農夫に報酬を渡して開墾や農作業を頼むようになった。
農夫から、農民になる人たちがこうしてできた。
やさぐれ者のグループは捕まると罰として働かされ、これがやがて奴隷制度へとなっていった。
ダンジョンを探索して集められた硬貨も神聖教団の布教者たちの提案で、王朝時代と同じように使われ始めた。
やがて、かつての豪族たちと同じように、農夫たちのグループが小国となるようになると、土地を継げなかった次男や三男たちは、開墾を続けて、かつての王朝の街の跡地に住み着き始めた。
神聖教団は、ダンジョンの調査を跡地に住み着き始めた若者たちに依頼した。
負傷しても回復ポーションで治療すると言われて。
このあと、獣人族を奴隷にしてみたり、エルフ族の大樹海まで開墾したり、エルフ族を奴隷にしようとするトラブルが起きる。
平原地帯の過去の歴史には、こうした神聖教団の布教による大きな影響があった。
旅を続けるエリザ一行の目の前には、昔は森林が広がっていたけれど、今ではすっかり平原となった明るい風景が広がっている。
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