第20話
【聖戦シャングリ・ラ】というオンラインゲームの世界に転生したエリザは、納得できていないことがたくさんある。
チートスキルどころか、定番のゲームでよくある能力値を自分で知ることができるステイタス確認すらできない。
また「収納」という物の大きさや重さや量を無視して運ぶスキルすら自分にはない。
宰相エリザというキャラクターの強みは、レベルMAX到達時は能力値の【魅力】の数値が98であること。
【魅力】100の「転生の聖女リーナ/世界樹の乙女」と【魅力】99の「エルフ族の女王エルネスティーヌ」や「聖騎士ミレイユ」というキャラクターたちと比較しても「宰相エリザ」は【魅力】98となっている。
さらに宰相エリザは【知力】と【政治力】もレベルMAX到達時は95。
「賢者マキシミリアン」が【知力】100となっていて、「参謀官マルティナ」が【政治力】96となっている。
宰相エリザは【統率力】と【武力】はレベルMAX到達時であっても【統率力】10【武力】5となっていて、デッキに編成して入れても、ダンジョン探索のモンスターとの戦闘や闘技場の対人プレイに不向きなキャラクターなのだった。
つまり、ストーリーモード用として用意されているキャラクターといえる。
ファンの間では「お楽しみキャラ」「サービスキャラ」と呼ばれるランキングイベントガチ勢にはデッキに編成されないキャラクターとなっている。
カードキャラクターには、たとえば【勇猛】という数値が設定されている。
カードバトル時に、フィールドというボード上に駒のように配置すると、コマンドで指示を出さなくても【勇猛】の数値が高いカードキャラクターは、自動で敵モンスターや相手のカードキャラクターを攻撃するために移動する機能がある。
こうした自動の駒の移動で、宰相エリザを自分の防衛拠点に配置することで、エリザは【魅力】が高いので防衛拠点を守るように参戦中のキャラクターたちは自動配置されていく。
カードキャラクター「聖騎士ミレイユ」は【統率力】98、【武力】100(魔剣ノクティス装備時)、【魅力】99となっているが【勇猛】が10段階のうちの最大値である10となっている。
【武力】の高い敵モンスターやカードキャラクターを自動で攻撃に向かいがちで、他の自動で動かしたカードキャラクターは追従してしまう。
そして【統率力】が高いので味方のカードキャラクターの駒と相手のカードキャラクターの駒を囲んだり、側面や背後の位置から攻撃する。
防衛拠点に敵のキャラクターが置かれると、また自分のパーティー全体の【士気】が下がる。すると駒を移動できる範囲が減ってしまう。それを防ぐために「転生の聖女リーナ/世界樹の乙女」を配置するのが定石の攻略パターンとなっている。
世界樹の精霊族ドライアドである「転生の聖女リーナ/世界樹の乙女」は攻撃力が高い疾風の魔法攻撃が可能で、弱いモンスターを撃退することができる可能性が高い。その間に敵のボスモンスターを討伐したり、対戦相手の敵拠点を壊滅することができれば勝利できる。
【政治力】の数値の高いキャラクターを防衛拠点に配置して、防衛拠点のダメージを修復するなら「参謀官マルティナ」を配置したほうが、宰相エリザを配置するよりも早い。
コマンド「修復」を実行すると【政治力】が95以上で拠点の耐久度が+100Pとなる。エリザでは+95Pで、+5Pの差ができてしまう。
ストーリーモードのエピソードをプレイしたり、クリアすることで、キャラクターのレベルを上げるボーナスポイントが与えられ、配分することでカードキャラクターのレベルが上がる。
またレベルMAXのカードキャラクターでエピソードプレイやクリアした場合には、別の隠しエピソードや隠し特殊効果カードなどを得ることができる。
「情報屋リーサ」の特殊効果カードを発動させると、フィールド内で仕掛けられている罠の位置情報が表示される。
そして【知力】100の「賢者マキシミリアン」や「古代エルフ族のルーンの継承者セレスティーヌ」などのカードキャラクターで罠を解除すると、相手の士気が総士気の25%低下が狙える。
総士気が低下して20%を下回ると、カードキャラクターの行動力低下だけでなく、攻撃時の威力は半減、相手から受けるダメージは1.5倍になるペナルティが発生してしまう。
課金アイテムの【回復ポーション】はカードキャラクターのHP回復アイテムで士気回復のアイテムではない。防衛拠点にカードキャラクターを帰還させて休息によってターン経過でそのキャラクターの総10%ずつ回復させるかわりに、総HPの50%分の数値を1ターンに1人のキャラクターにだけ使用できる。
「賢者マキシミリアン」は【知力】だけでなく【武力】84、「古代エルフ族の魔法継承者セレスティーヌ」の【武力】81となっていて、宰相エリザの【武力】5よりもしっかりと活躍できる。
この【聖戦シャングリ・ラ】のカードゲームとシミュレーションゲームを組み合わせたような戦闘システムを使って、冒険者パーティーでイベントに参加して順位を競い合うゲーム性と、ストーリーモードの謎解きの恋愛ゲームをじっくり楽しむプレイヤーのファンがいた。
ストーリーモードに関係するデッキを作るか、まったく関係なくカードキャラクターの見た目の好みで冒険者パーティーのデッキを作るプレイヤーもいる。
1人のプレイヤーのカードデッキには、同じキャラクターカードを複数入れることはできない仕様となっている。たとえば「聖騎士ミレイユ」を3枚入れたデッキ構成はできない。
転生前のエリザは、カードゲームをこの【聖戦シャングリ・ラ】以外で遊んだことがなかった。
だから、対戦者が同じカードキャラクターを使って対戦していることに、ちょっとだけ違和感を感じた。
ストーリーモードでは世界に1人しか存在しない人物が、対戦モードではなぜか同時に2人存在して、戦っているような感じがするからだった。
フィールドを使った対戦では時間がかかるので、コロシアムというカードキャラクターを闘技場で一騎討ちさせるモードが追加で用意された。
同じカードキャラクターでレベルとHPが同じだったら、引き分けになるか、どちらのカードキャラクターが勝つかの判定はきっちり50%だった。
連戦すればHPの数値の差が出てくる。3連戦で2勝するか途中で相手プレイヤーがリタイアして勝利すると、プレイヤーは賞金が獲得。賞金で回復ポーションや装備品なとを入手できる。
3連戦はそのカードキャラクターが1敗すると、別のカードキャラクターに交代できる。また1敗後に回復ポーションを1本使用して、キャラクターのHPを50%まで回復できた。回復アイテム使用の3ラウンド勝負と考えるか、
3人交代の勝負と考えるかの遊び方ができた。
ストーリーモードで恋愛関係にあるキャラクターカードが一騎討ちすると【統率力】【武力】【知力】【政治力】【魅力】に残HPの合計値が上回っているキャラクターが、なぜか引き分けるか負けることがあった。
たとえばカードキャラクターの「賢者マキシミリアン」の合計値が、ストーリーモードで妻の「古代エルフ族の魔法継承者セレスティーヌ」よりも高い状況で対戦したとしても、夫の「賢者マキシミリアン」が引き分けるか負けるのが発見された。
ファンたちはコロシアムバトルを遊んだあと「ゲームでも、旦那は奥さんには勝てないのか?」とファンサイトで雑談していた。
賢者マキシミリアンからの報告を待っている1ヶ月の間に、細工師ロエルが、この世界に無かった包丁とフライパンを製作してくれたので、エリザは退屈はしていなかった。
よくある定番の思いついた物をスキルでなんでも作れたり、錬成してしまうキャラクター設定なのかとエリザは思ったので、細工師ロエルに聞いてみた。
「その包丁というのは、剣やナイフと同じ。あとフライパンは鍋と同じ。でも、便利になった」
(チョコレートを作ってもらいたかったのですが、もともと無いものは作れないようです。ん~、残念です。食べられないと思うと、すごく食べたくなるのは、なぜなんでしょうか)
チートスキル設定で、何でも作ったり、錬成できる能力があればこの世界に無いチョコレートが欲しいエリザなのだった。
裕福な立場で王宮暮らしのエリザでも、簡単に手に入らないものがある。
もしもチートスキルを持つ悪役がいたとして、何でも思いついたものを作ったり錬成できる登場人物がいたら、対抗手段はスキルの無効化しかない。
あと、細工師ロエルは青年セストという恋人と暮らしていて、賢者マキシミリアンにはセレスティーヌというエルフ族のパートナーがいるのに、自分には恋人がいないのもエリザは納得できない。
正直、エリザはうらやましい。
エリザは【魅力】98の能力値がある。だから、19歳で宰相という権力者の地位でアイドルのように慕われて君臨している。
姫役キャラクターで定番の姫騎士には「聖騎士ミレイユ」が人気なのはゲームファンとしてファンサイトの常連だったエリザは良く知っている。
(私がお忍びで帝都の市街地区をぶらぶらしていたら、悪役に拉致されて、チートスキルを持ったあとで恋人になる人が助けてくれてるみたいな、よくありがちな展開は、男装した情報屋のリーサさんがダンジョンに助けに来るエピソードがこのゲームに、もともとありましたから、起こりそうもありません。それに、先日の舞踏会に男装して来てましたから、もともとのエピソードとはちがった展開になってしまいました。それに悪役のはずの学者の人は、なぜか女性の神聖教団から派遣されたポーションを研究している学者の女性になってしまっていますし……どうなっていることやらですよ)
プレイヤーの【所持金】の数値が、この帝国に暮らす人たちにもちゃんとあるのか。
もしも【所持金】の数値があったとして、毎月金貨30枚分の加算は可能なのか。
ついでにチョコレートに似たものがないのかも調べて欲しいと賢者マキシミリアンに頼んである。
しかし「私にも恋人ができるのでしょうか?」とは、ちょっと恥ずかしくて言えなかったエリザなのだった。
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