第14話  

 この【聖戦シャングリ・ラ】は18禁オンラインゲーム。過激なHシーンなどもある。


 いわゆる全年齢対象のSNSサイトのゲームコンテンツのいわゆるソシャゲーが人気が出てきて、参加者の課金で儲かると噂で聞いた老舗AVメーカーの社長の風間良和という人が、今はネット動画の利用者が増えて作品の売上は低迷している時に、さらに法改正によって撮影をふくめて製作が停滞していて、ネットゲームが流行っていて儲かるなら、うちも試しに参入してみるかと考えた。


 キャラクターデザインからストーリー原案まで全面協力しているマンガ家メイプルシロップこと緒川翠は、成人向けのエロマンガ家ながらその画風の繊細さから、エロマンガを読んだことのない人たちにも人気がある。

 ゲーム製作指揮を担当しているプロデューサーの岡田昴は、18禁オンラインゲームと表示して、あとから問題にされて騒がれないようにしておいた。


 SNSをプラットホームとするソシャゲーでは、いろいろな手数料で4割の経費がかかる。

「APPstore」「Google play」では3割の手数料で済む。

 また2008年から販売されたスマホが2012年にはかなり普及していく流れがあった。


 SNSのソシャゲーから、スマホ向けのアプリ型のオンラインゲームに移行していくと、SNSサイトは全年齢対象のゲームコンテンツというSNSサイトの規制から外れているゲームでも、アプリ型ゲームであれば配信できる状況になっていた。


 その時期に全年齢対象のソシャゲーよりもゲーム性のあるパズルゲームのブームのなか、18禁オンラインゲームとして【聖戦シャングリ・ラ】はリリースされた。


 2015年にはさらにゲームの課金が、社会問題として注目された。この頃、スポンサーの「サンダース」はネット上の動画配信サイトを運営する企業と提携して、自社作品を提供していた。


 アプリコンテンツとしても規制されそうだと判断した岡田昴は、スポンサーの意向に対して低課金を主張した。

 またアプリコンテンツから、ネット環境があれば遊べるブラウザゲームに移行することを、スポンサーに提案した。


 かつて岡田昴は、PCゲームのエロゲー製作して販売した時に、規制されて家庭用ゲーム機への移植に乗り遅れた経験があった。


 家庭用ゲーム機ブームが衰退していったあとの、ソシャゲーブームからアプリゲームコンテンツの移行の時期に配信された【聖戦シャングリ・ラ】は、そのクオリティの高さから、他のオンラインゲームに大きな影響を与えた。


 何かひとつでも突き抜けたこだわり要素がないゲームは、類似したシステムのゲームとの差がないと思われて、プレイヤーにはすぐに飽きられてしまう。


 この【聖戦シャングリ・ラ】には、ストーリーモードのビジュアルノベル要素、モンスターとの戦闘シーンやオンライン対人モードのカードゲーム要素、キャラクターカードのレベル上げや装備などの育成ゲーム要素、ダンジョン探索のRPG要素、キャラクターカードのコレクション要素などが、あれこれ全部ふくまれている。


 キャラクターイラストや細かい演出にこだわるコレクション要素の強いゲーム、パズルゲーム要素の強いゲームなど他にヒット作が出た。しかし【聖戦シャングリ・ラ】は、それでもファンが離れなかった。


 【聖戦シャングリ・ラ】にはファンによる非公認ながらも、ファンサイトが作られていた。

 ファンサイトでは、ゲームの攻略情報のデータベース公開や、掲示板機能を使った雑談などが行われていた。

 情報交換や雑談など、ゲームつながりでファンのプレイヤーたちは交流があった、


 のちに、他のPCオンラインゲームでは、クロスプラットホーム型ゲームで、プレイヤー間で同じグループに登録しているとチャットしながらプレイする機能が搭載される。


 オンラインゲームではあったが【聖戦シャングリ・ラ】はそれぞれのプレイヤーが、同じゲームの世界すべてをオンライン上で同時進行で変化させるクロスプラットホーム型のゲームではなかった。


 アプリ型だったが、ソシャゲーと同じように、オンライン対人プレイと、イベントのランキング結果を、定期的に更新する程度であった。

 

 既存のアプリコンテンツの【聖戦シャングリ・ラ】を、さらに改良してオープンワールド型にする岡田昴の案をスポンサーは受け入れ、岡田昴の経営しているゲーム製作会社フェアリードリームが依頼を受けて、途中まで開発が進められていた。

 だが、途中でスポンサー企業サンダースが他の企業の共同出資がうまくいかなかった都合から、却下されてしまう。


 この【聖戦シャングリ・ラ】がオープンワールド型に改良される動きがあったことを、転生していたエリザは知らない。


 2016年に、日本オンラインゲーム協会は、改正景品表示法その他のオンラインゲームに関わる国内法に対応した新ガイドラインを発表した。

 ガチャのキャラクター排出率の表示が、アプリゲームにも求められた。

 その情報から、もう課金では儲からないと、スポンサーの老舗AV制作会社サンダースの社長の風間良和は判断して、サンダースはスマートフォン向けオンラインゲーム事業からの撤退を公表した。


 こうした流れがあり18禁オンラインゲーム「聖戦シャングリ・ラ」は、エリザが転生後に、残念ながら配信終了となった。


 原案者のメイプルシロップこと緒川翠は【聖戦シャングリ・ラ】のストーリーモードを、登場人物たちの恋愛をマンガ化したり、アニメ化する企画を、配信終了したあとでもファンたちが楽しめるように進めていた。


 この【聖戦シャングリ・ラ】はプレイヤーをゲームのキャラクター化することで、ゲーム内の世界で自由に活動させる、オープンワールド型のゲームに改良されていくはずだった。

 

 モンスター討伐と対戦カードゲームでイベントの順位を競い合うことや、決められたストーリーをたどるゲームプレイよりも、もっと自由に実際にプレイヤー間でコミュニケーションを行って、それぞれがしたいプレイを探すことができるゲームを目指していた。

 

「君のもうひとつの人生が、ここにある」


 これがゲームプロデューサー岡田昴が考えていた、新しい【聖戦シャングリ・ラ】の宣伝用コピーだった。


 



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