第14話 同居者
ゼルベルトが陣の暗殺を依頼され家へ侵入したものの、至高ランク闇殺スキルを持ちかつて"死の運び人"と恐れられた伝説の暗殺者を持ってしても、陣の至高ランク家スキルから作られた家のリンには敵わなかった。
陣がゼルベルトの現状を聞きリンによって助けられたキャシーは現在陣の家の前でバーベキューを行っていた。
「陣様、お肉が焼けましてございます」
「ありがとうゼル爺。キャシーちゃん!お肉焼けたって!」
「はーい!また後で遊ぼうね!リンさん!」
『是。いつでも遊びましょう。キャシー』
なぜこんな事になっているのかと言えばリンがキャシーの病気を治した翌日の今朝の事。
朝に起きて身体が軽くなっており病気が治っていると発覚したキャシーはゼルベルトに抱きつき泣いた。
それまでお爺ちゃんのゼルベルトを心配させまいとなんとか元気なフリを頑張っていたキャシーだっだが、8歳という年齢はなにも理解出来ないような子供では無い。
内心では分かっていた。自身の病気が死んだお父さんお母さんと同じ病気でいつか死んでしまうかもしれないという事を。
死への恐怖ももちろんあったキャシーだっだが1番思っていたのはお爺ちゃんを悲しませてしまう申し訳なさ。
お父さんお母さんが死に1人となった自身を引き取り悲しい思いをさせまいと頑張ってくれていたのをキャシーは知っている。
そんなお爺ちゃんが大好きでそんなお爺ちゃんを悲しませてしまう事がキャシーにとっては自分が死ぬ事より嫌な事だった。
だからこそキャシーは死ぬ事も無くなによりお爺ちゃんが悲しまない結果になった事がすごく嬉しかった。
その後陣が抱き合い喜び合っている2人を見つけ涙を流していると、ゼルベルトがキャシーに命の恩人として陣を説明した。
ご飯を食べながら今後について話し合う陣とゼルベルト。その時の話し合いで陣は引きこもりたいと思っていたものの、リンがいるとはいえ思いの外1人は寂しいと思っていた所だった。
だからこそ陣からゼルベルトにこの家で住まないかと提案。ゼルベルトも現在の住まいはギーレモ領にある。
依頼が失敗の形となったゼルベルトはキャシーの存在もギーレモ公爵家にはバレている。故に行方をくらませる必要があった。それにはゼルベルトですら破れなかった参考不落の最強の家で住むというのは渡りに船だった。
さらには孫や自身の命も救われた命の恩人の陣の提案としては断る選択肢はゼルベルトにはなかった。
そういう経緯もありその日のお昼現在、家のすぐ外にてキャシーが元気になった事と同居人が増えた事を祝してのバーベキューが開かれた。
そしてゼルベルトは陣を自身の主として定め陣様と呼び自身は陣の執事となり仕えると勝手に決め、キャシーは家族が増えたとしてお兄ちゃんと呼ぶ事に。
*ゼル爺というのは主が執事に敬語は良くないとしてゼルベルトが決めた呼び方。
「美味しいね!お兄ちゃん!」
「そうだねキャシーちゃん」
ちなみにバーベキューのお肉はレーザーオーガなどこの家を襲ってきた魔物たちの肉である。どうやらこの世界では一部例外もあるようだがほとんどの魔物はランクが高いほど美味しいお肉となるらしい。
故にランク8ともなれば一国の王でも食べることが出来ない程の希少性の高いお肉となる。
「・・・陣様・・・これからどうなさいますか?」
陣が粗方食べ終わり外も夕方となってきたころ、ゆったりしているとゼルベルトがそう陣に聞いた。ちなみにキャシーは既にゼルベルトとキャシーの部屋にて眠っている。
「どうって?」
質問の意図が分からなかった陣はゼルベルトに聞き返す。
「陣様のせいで世界中の笑いものとなり屈辱を味わったバングル王国がこのままなにもせずに済まさないでしょう」
「・・・やっぱり攻めて来るかな?」
「来ますな・・・今の国王は賢王であり慎重派なために即座の軍の派遣は無いでしょうがこのまま世界の笑いものとなるのを周りの貴族が黙ってないでしょう・・・いずれ必ず攻めてくるかと・・・」
「・・・まあ、俺はこの家のリンから出れば戦闘スキルのないただの一般人だからただ引きこもってるしか出来ないんだよ・・・ちなみに国軍にリンに勝てそうな人っている?」
たとえ国軍が何百万人と押し寄せてこようとも引きこもるしか取れる選択肢が無い陣。今度はゼルベルトとキャシーと共に。
「・・・実力者は相当数いますが至高スキルを所持しているといった話は聞きませんな・・・気にするような人物はいないかと・・・なんなら調べますが?」
ゼルベルトの至高ランク闇殺スキルは暗殺もだが当然の事ながら潜入や調査でも力を発揮するスキル。さらに実力者のゼルベルトならば一目見ればどれほどの実力の持ち主かは分かる。それゆえの提案だった。
「・・・いやいいよ。せっかくキャシーちゃんが元気になったのに少しとはいえキャシーちゃんからお爺ちゃんを引き離すのは可愛そうだ・・・」
「・・・陣様・・・お心遣いありがとうございます・・・」
こうして陣は新たな同居者2人と共に引きこもり生活を続けることとなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます