第12話 陣とゼルベルト
急に上から人が落ちてきたかと思ったら今度は無数の物が飛んできて上から落ちてきた人が穴だらけになった光景を目の当たりにした陣は混乱していた。
「ひええええ!?な!?なに!?だれ!?死んだの!?」
『否。拘束などは難しかったため殺すつもりの攻撃でしたがまだ辛うじて生きているようです。治療いたしますか?』
「出来るの!?・・・じゃ、じゃあ動かない程度に死なないように治療をお願い・・・」
『是。かしこまりました』
すると、ゼルベルトに光が集まり出し身体に空いていた穴という穴が塞がっていく。
「おお・・・リンってほんとなんでも出来るな・・・」
『ありがとうございます』
しかし治療を受けたゼルベルトだがまだ目を覚ますまでに少しの時間が必要なようだ。
「・・・でも、この人ってリンが拘束が難しいっていうほどに強かったの?」
見た目の白髪で老人の感じからリンが拘束を断念するぐらい強いという印象が持てない陣。
『是。相手は至高ランクの持ち主のため今までの騎士たちとはレベルが段違いでした。世界でも有数の実力者でしょう』
「・・・そうあって欲しいな。リンがここまで言う相手が世界には何十人も何百人もいられたら困るし」
とりあえず動けるほどには回復していないのでゼルベルトはリンが監視するという事で放置。
陣は縛り付けようと提案するもリンでさえも侵入者を逃げられないようにするのは不可能だと断じた。実際に戦ったリンの言葉のためにすべてをリンに任せることにした陣。
陣は外が少し陽が出てきたこともありいつもより早い朝食を食べることにした。
十数分後。リビングにてテレビでネットを見ながら朝食を食べていた陣にリンが報告に訪れた。
『マスター。侵入者が目覚めました』
「!?・・・逃げる気配は?」
『否。ございません。マスターと喋りたいと言っております』
「・・・わかった・・・ちょっと怖いけど行こう・・・」
怖さがあるもののリンを信じて地下の侵入者のいる場所へと向かっていった陣。
そしてその場所に行けばなぜか椅子に座っていた。
「・・・なんで?・・・リン?」
『座りたいというので椅子に座らせました』
「・・・俺に危険は無いんだよな?」
パッと見では何も問題なさそうに座っている老人を見て本当に危険が無いか再度問いかける陣。
『ございません。この男は指一本動かすことはできません』
そう陣に文字を見せて返答するリン。そしてその文字はゼルベルトも見えていた。
「その通りです。座っているのも喋りやすいと思ったまでです。もしご心配でしたら椅子を取っていただいてもいいですよ?」
突然向こうから話しかけられたため少し驚いた陣だったが陣としても話すために来たために好都合だった。
「・・・わかった・・・じゃあリン。俺の分の椅子もお願い」
『是。もう既にご用意してあります』
そうしてリンの用意した椅子に座り陣は自身の命を狙ったものと対峙する。
「・・・名前は?なんでこの家に侵入した?」
「名前はゼルベルト・ランドーラ・・・侵入の理由は紅林陣を殺すように依頼があったためです」
自身をターゲットにした殺しの依頼があったという事を聞くもさほど驚きもせず特に変わらなかった陣。
「・・・もう少し怖がるかと思いましたが?あなた自身は見たところ戦闘は素人なのでしょう?」
「・・・まあ・・・あれだけの事をしたんだし誰かに恨まれていたとしてもおかしくないから・・・特にギーレモ公爵やその家族とか、国の面子を潰した結果になっただろうからその後の展開次第ではバングル王国からも恨まれてもおかしくはないかなってのは考えてたし・・・」
「ほう・・・中々・・・年の割には賢い・・・」
異世界に来たことで17歳の若い体となり精神も若返ってたりするけど、本来は57歳のため年の割には賢いは当たり前であった。
ゼルベルトが陣に感心している間も陣はジッとゼルベルトの目を見ていた。
「・・・なにか?依頼主のことなどは聞かないのですか?」
「・・・ゼルベルト、さんは・・・どうしてその依頼を受けたんですか?」
急にさんを付け敬語となった陣。明らかにゼルベルトに対しての陣の態度が変わった。
そしてその事を聞かれたゼルベルトは孫のキャシーの事を思い浮かべていた。
「・・・あなたの殺害の報酬がよかったからですよ・・・私は暗殺者ですから・・・」
そう本当の事を言いつつも本心は言わないゼルベルト。しかし陣は生前は周囲に気を配り相手の気持ちを理解するのに長けていた。
しかし気を配り過ぎるあまり優しく困っている人を放っておけない性格の陣は、元々の気弱で断れない性格も合わさって許容量の仕事を抱え過ぎた影響が災いして車に撥ねられ死亡した。
だからこそゼルベルトの悲しそうな雰囲気に陣は気が付いていた。お金を求めた先があるはずだという事も。
「・・・何かあるのならば話してくれませんか?ゼルベルトさん自身でこの家のリンの実力は理解したはずです・・・」
普段ならばキャシーは暗殺者という敵を作りやすい仕事をしているゼルベルトにとってあまり知られてはいけない情報となる。
しかしゼルベルトは陣の目とその真摯な姿勢に不思議と話したほうがいい。そんな気がした。
「・・・分かりました・・・そもそも私は負けて紅林さんに生かされている身・・・すべてをお話いたしましょう・・・」
ゼルベルトはキャシーについて話すことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます