第9話 至高ランクを持つ暗殺者

リンがギーレモ領の10万規模の軍隊を撃退し陣が誰も殺すことなく撤退させたことで、ギーレモ領を超えバングル王国さえも超え"たった一人に10万規模の軍隊が何も出来ず逃げ帰った"との噂が世界中に広がり世界中の笑いものとなったバングル王国。


そんなことを知らない陣は現在リンに今後の事で話をしていた。


「これからは何かが起こったらどんな状況でもいい。俺に教えてくれ」

『是。かしこまりました』

「それからもしかしたら国が襲撃に来るかもしれない。その時も見えた段階で教えて欲しい」

『是。かしこまりました』


言うことはそれほど無い陣。なにせ陣は1人で家の中にいてただ引きこもっているに過ぎない。対処するのはリンでただ引きこもっていればいい陣は頭を巡らせる必要もない。

*****

数週間が過ぎたある日。


「ターゲットはこの男よ」


そう言ってギーレモ公爵の妻アミーニョ・ギーレモはいつの間に撮ったのか陣の写真を白髪の老人に手渡した。


「・・・こんな子供を・・・」


白髪の老人は少し顔をしかめた。それに対してアミーニョは嘲笑うような態度を見せる。


「ふん。そいつをただの子供と思わないことね・・・そいつは化け物よ・・・」


恐れよりも忌々しそうにそういうアミーニョ。その言葉で白髪の老人は理解した。


「ではこの男の子がギーレモ領のの?」


あの事件とは言うまでもなくリンがギーレモ領の10万規模の軍隊を一蹴しバングル王国が世界の笑いものとなった原因の事件となる。


「・・・ええ・・・私たちはそのガキのせいで世界の笑いもの・・・周りの貴族からは侮蔑の目で見られ夫はあれ以来精神を病み自室から出ようとしない・・・このガキのせいで!私たちがどれだけの屈辱を受けたことか!」


怒りをぶちまけるアミーニョ。相当ストレスが溜まっているようだ。しかしすべてが事実のため否定も出来ずただ受け入れる事しかできない。


「第一!あなたは私たちの部下でしょう!つべこべ言わずに指示に従いなさい!」

「・・・それは先々代までの事・・・先代も今代も関わりはありません・・・ですので私が依頼を受けるのはお金のみ・・・」

「ふん!確か孫が病気でお金がいるとかでしたっけ?・・・過去においては"死の運び人"とも呼ばれ恐れられた人物が孫可愛さに復帰するだなんて・・・人も変わるものね・・・」


そう言われた老人からは表情が消えた。しかしその事にアミーニョは気付いていない。


「・・・では詳細を聞きましょう・・・」


それから陣について分かっている限りの情報を送るアミーニョ。


「・・・これが分かっていること全部よ・・・それで?れるの?言っておくけどうちの騎士たちは今では笑いものになっているけどバングル王国でも有数の人材を雇っているのよ?その私たちの騎士たちが何もできなかった相手にあなた一人でどうにかなるの?」


少し怪しみつつそう質問するアミーニョ。でもそれはしょうがない事。なにせ彼女は40代。死の運び人と恐れられた老人が現役だったのは40年以上も前の話。その実力を疑いたくなるのもしょうがない事だろう。


「・・・問題ありません・・・」


話し始めた老人を見るアミーニョ。しかし次の瞬間予想外の出来事が起こる。


「・・・最近5件ほど依頼を完遂したことで昔の感覚も取り戻しております・・・」


今まで目の前で座っていたはずの老人の声が後ろから聞こえてくる。そしていつの間にか目の前から老人はいなくなっていた。


「!?」


慌てて後ろを振り返るアミーニョだったがもうそこにはいない。


「おそらく至高ランクのスキル所持者でしょうが・・・そういった輩も過去に何件か暗殺をしてきました・・・お任せください」


その声はアミーニョの左から。


「!?」


また慌てて左を向くアミーニョだったが先ほどと同じくまたそこにはいない。


「私ものスキルを持っていますので」


次に声の聞こえた正面を向けばいつの間にか座っている老人。


目の前で見られ座っている状態からいつの間にか後ろに回り左にまた正面にと簡単にアミーニョの視界外に移動して見せた老人。

老人の実力を実感させられたアミーニョは冷や汗を流しながら笑みを浮かべる。


「フフ・・・アハハハ!さすがは死の運び人!伝説と言われた腕は衰えてないようね!」

「・・・お褒めにあずかり光栄です・・・」


一切嬉しそうではない老人。しかし対照的にアミーニョ笑顔が止まらない。


「・・・私たちギーレモ公爵家を舐めたことを後悔させてあげる・・・フフフ・・・アハハハハハ!」


こうして陣は至高ランクを持っている死の運び人と呼ばれた伝説の暗殺者に命を狙われることになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る