第25話 再会
虚空となった闇夜。
浮かぶ雲の彼方をじっと静かに見つめていたユキナはやがて、浮遊の術の効果が切れたのか下りてきた。
スッと、息を抜くと同時に彼女の髪の色が元の薄桃色に戻り、身を包んでいた炎もおさまる。
それから。
地上に立っていた僕の目と、地上に降り立った彼女の瞳が重なった。
「ユ、ユキナ」
「あのね、ケイカ!」
声も重なった。
不意に湧く気恥ずかしさから言おうとした言葉が頭から消えてしまい、言葉を失った。ユキナも同じなのか、二人して俯いてしまう。
――ごめん。そう謝りたいけど、何を謝ればいいのだろう。
友達拒否したこと? ユキナがお城で忙しくしてるのにメイドさん達とフザけてたこと? 戦ってるユキナのスカートの中を見ちゃったこと? 今回も見ちゃってたこと?
それとも夜中にこそこそ隠れて変な絵を描いてること?
過失がいっぱいありすぎて言葉がない。でも謝らないといけない。
こんな僕のことを見捨てず助けに来てくれて、シャオン達に怒ってくれたユキナに。
「…………あの、ね。ユキナ」
「……う、うん、なあに?」
少し間を空けてユキナがちょこんと顔を上げた。上目使いになった彼女の瞳と僕の目がふたたび重なる。
彼女は何も言わず、僕の言葉を待ってくれていた。
「あ、あの」
「……うん」
「えっと……」
えっと。ご、ご、ご、こー……
「こ、ここまでどうやって来たの?」
「ええっ!?」
ぜんぜん頭に無かったことが僕の口から出てきてしまった。
彼女もそんな質問されると思わなかったのか、ちょっとびっくりしていた。
「は、走ってきたよ。監視塔の人から連絡を貰って。最後はジャンプして」
「そ、そうなんだ。へ、変身してなくても足は早いんだね」
「う、うん。小っちゃい頃からかけっこは得意なの」
「い、いいな。僕は足が遅いから羨ましいよ」
「そっか……。あ、じゃあこんど私が走り方を」
「超人の走り方なんぞ、どうでもええわいっ!!」
突然、僕達の頭にクゥナのでっかい怒声が飛んできて、二人してびくっと肩を竦めてしまう。
ステッキを拾ってきたクゥナが僕達の間にずいっと割り込んできた。
「勝利と再会を祝したハードキスはしないの!?」
「しないよ! 今の会話からどう繋がるんだよ!
しかもハードって何だ!
クゥナはフンッと鼻を鳴らし、
「何もしないんだったら聖鐸秤を運ぶの手伝って! デカくて敵わん!」
巨大な燭台をステッキで指し示し、フンッと鼻息を荒くする。
「ほらほら姫。ちゃっちゃと正体を現して燭台を持つ!」
「も、持つけど正体って言わないで!」
ユキナは恥ずかしそうに下唇を咬み、変身する。蒼い髪のバージョンだ。
魔物もいないのに物運びのために変身させられてる彼女の姿はひどく滑稽で、さっきまでの怖い顔や勇ましさは何処へやら……。
なのに、そんなちょっと間の抜けた格好悪いユキナの方が、なんとなく自然で、出逢った時と同じ、ほんわか愛らしい雰囲気がした。
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