第20話 迷い

 重要な情報をどんどん知らされてる。


 知りたいと思ったのは俺だ。でも、もっと口を閉ざされるかと思っていた。


 やはり、魔王達は俺を逃がしてくれる気はないのだろう。


 ふぅ、と息を吐いてからベッドに寝転ぶ。まだ夕食前で眠るような時間ではないし、眠気もないけど、なんとなくそうしたくなったのだ。お行儀は悪いけど。


 動くと決めたはいいが、その動きも魔王達の計画のうちだったりするのかもしれない。それはとっても悔しい。


 元々寝返る以外の選択肢など与えられてないのだ。それが早いか遅いかというだけで。


 ラヒカイネン侯爵、いや、男爵やハンニの話を聞く限り、酷い事はされないだろう。もし寝返ったら、ラヒカイネン男爵が面倒をみてくれるみたいな事を面会の最後にほのめかされたし。

 でも抵抗感は消えない。十七年間信じてきたものをいきなり変えろと言われても難しいのだ。


「あーあ」


 そう呟く。面会者が来た後はなるべく喋らないようにしてたけど、これくらいはいいだろう。少し気が緩んでいるのかもしれない。


 次に誰に話を聞きたいかといえば、あのレイカとかいう名前の元勇者だが、それはいろんな意味で難しい気がする。いくらなんでも魔王妃がこんな所に来てはくれないだろう」。魔王だって許可しないに違いない。


 なにせ、初対面で攻撃を加えたのだ。間違いなく彼女にとって俺の印象は最悪なはず。


 おまけに、あの判断力とあの強さでは敵わない気がする。別に戦うわけではないけど、攻撃されたら抗うすべがない。何せ魔力を封じられているのだ。


 魔王が何を考えているのかが分かれば、俺も動きやすいんだけど。まあ、『回りくどい事をしてないでさっさと寝返れ』というのが一番の本音だろう。


 本当にどうするべきなのだろう。分からない。


 もう一回ため息を吐く。最近ため息の数が多くなった。


「キアント伯爵令息」


 その時、いきなり声をかけられ、ついビクッと飛び上がりそうになってしまった。声の方を見ると、いつもの見張りの騎士が俺をジッと見ている。


「もうすぐ夕食なので起きてください」


 別に寝ていたわけではない。でも、考え事をしてたと言いたくもない。なので、素直に『はい』と答えて起き上がった。

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