第24話 恋する妹は愛しの姉に宣言する

「おはようお姉ちゃん」


「……おはよう真恋」


 目が覚めると、目の前には真恋の姿があった。まるで昨日のことは嘘かのように普通に挨拶をする真恋に、こちらも挨拶を返す。


「お姉ちゃん、昨日はごめんね。いきなりで驚かせちゃったでしょ?」


「う、ううん。確かに驚いたけど、別に怒ってないし、私のことを思ってくれてたのは嬉しかったよ」


「本当?よかった。お姉ちゃんに嫌われたら、私生きていけないよ」


「そんな大袈裟な」


「大袈裟でもなんでもないよ。だって、私の半分はお姉ちゃんへの愛で出来てるもん」


「あはは、そんな頭痛薬みたいな。それを言ったら私だって半分以上は真恋への愛で出来てるよ。でも――」


「本当?嬉しいな、お姉ちゃんが私のことをそんなに思ってくれて」


 私が昨日のことについて切り出そうとすると、それを遮るように真恋が言葉を被せてくる。昨日のことについてはあまり深掘りしないつもりなのだろうか?そう言うことなら私も真恋に合わせよう。


「そうだ真恋、メモ見た?夕食、冷蔵庫にしまってたんだけど」


「うん、見たよ。お姉ちゃん、手紙だと敬語になっちゃう癖直ってなかったんだね」


「あはは、なんだか文字だと緊張しちゃって」


「私はもっと砕けた感じの方が嬉しいな。そうだ、夕食食べたよ。ありがとうね。すごくおいしかったよ」


「そう?それならよかったよ。味はどうだった?お嫁に行ってに恥ずかしくな――」


「ちゅっ」


「んんっ!?」


 私が真恋に夕食の味について聞こうとすると、いきなり真恋がキスをしてきた。しかしそれは、昨日のような舌を入れたキスではなく、唇を合わせるだけのキスだった。


「んっ。お姉ちゃんはさ、どうせ昨日のことも私の勘違いだとか、そう言うふうに思ってるでしょ」


 真恋はてっきり昨日のことは流そうとしていると思っていたのと、昨日とは違うキスに混乱していると、唇を話した真恋が私にそう話してくる。


「だからね、私考えたの。私の気持ちが伝わらなくても、お姉ちゃんが私に恋しちゃえばいいんだって」


「っ!真恋、ちょっと離れ――」


「ダーメ♡ちゅっ」


「んっ」


 真恋は私にそう言葉を放ちながら腕や足を絡めてくる。真恋にやめるように伝えようとすると、それを遮るように再びキスをされた。


「ふう。ねえ、お姉ちゃんどう?」


「え?どうって?」


「女の子に体密着されて、ドキドキしたりしない?」


「……するわけないじゃん」


「嘘はダメだよお姉ちゃん。さっきから心臓ドキドキしっぱなしじゃん」


「っ!してないよ!」


「本当?じゃあこの音はなんだろうね?」


「……知らない」


 真恋は私の胸に耳を押し当てて聞いてくる。私はそれを否定することしかできない。


「お姉ちゃん顔真っ赤だよ?」


「知らないってば!」


「……うん、これで確信した」


「へ?」


「えいっ」


 少しの間を開けて、何かを確信したと真恋が呟く。私がそれに間の抜けた声を漏らすと、真恋はいきなり私に覆い被さってくる。鼻が触れ合うほどの距離に真恋の顔がある。私と真恋は見つめあったまま数秒の時間が過ぎる。すると今度は真恋が両手で私の頬を挟み、私に質問を投げかけた。


「お姉ちゃん、やっぱりレズっけあるでしょ」


「っ!!」


「やっぱりそうなんだ!」


「ち、違うし」


「目が泳いでてバレバレだよ」


 バレてしまった。私が親にも打ち明けてこなかった秘密が。私は真恋から逃げようと身じろぎをするも、真恋の拘束はびくともしない。


「中学に上がって、周りが誰かと付き合い出したあたりからおかしいと思ってたんだよ。お姉ちゃんはあんなに綺麗で可愛いのに、なんで浮いた話のひとつもないんだろうって」


「それは……告られたことがないだけだよ」


「嘘だよ。だって私お姉ちゃんが告白されてるのみたことあるし。それもイケメンで優しそうな男の人に」


「っ!?いつみたの!?」


「そんなの今はどうでもいいじゃん。今重要なのはお姉ちゃんが誰に告られても誰とも付き合ってなかったってことだよ。確か、『男の人には興味ありません』だっけ?」


「そこまで……」


 どうやら私が告白してきた人を振った時の言葉を聞かれていたようだ。完全に逃げ場を潰されている。


「ねえ、お姉ちゃん。私ならお姉ちゃんと付き合えるよ?この世で一番お姉ちゃんの事知ってて、一番お姉ちゃんが愛してて、一番お姉ちゃんを愛してるのは私だよ?」


「でも真恋は妹で……」


「そんなの愛があればどうでもいいじゃん」


「でも……」


「……まあ、今はこんなところか」


「……え?」


 真恋の言葉に私は返事ができず言い淀んでいると、私の様子を見ていた真恋は私の頬から手を離し、私の上で膝立ちになる。


「言っとくけど、これで終わりじゃないからね。これから毎日、隙があったらアピールして、お姉ちゃんを絶対堕として見せるから」


 真恋は私の目をじっと見つめてそう宣言してきた。真恋は宣言を終えると、ベッドの上から退いて扉の方へと歩き出す。


「私、朝ごはん作ってくるから、お姉ちゃんはもうちょっとゆっくりしてていいよ」


 そう言って部屋を出て行った真恋を、私は見送ることしかできなかった。 

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あけましておめでとうございます!熊肉の時雨煮です。

新年一発目の投稿ということで、今日は愛恋、吸血公女のお正月番外編、新作短編と三作同時投稿です!

愛恋でもお正月番外編をしようかと思いましたが、本編を進めるのを優先させていただきました。時間経過の遅い作品ですので、時事ネタはある程度進んでからすることにします。

皆さんにとって良い一年でありますように。そして今年もよろしくお願いします!


【吸血公女に拾われた】:https://kakuyomu.jp/works/16817330663314119392

短編【従妹にお年玉をあげる百合】:https://kakuyomu.jp/works/16817330669262285454


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