第22話 恋する妹は愛しの姉に愛を告げる
「よし、こんなものかな」
私、藤咲真恋はレイアウトの終わった自室を見渡しそう呟く。出来上がった自室には実家からトラックで持ってきてもらった家具や今日ショッピングで買ってきた雑貨類が設置されている。
「なるべく実家と変わらないレイアウトにしたし、もしかしたらもう一度……」
三年前の冬、私の人生で一番の転機にして後悔の日。あの時はまだ何が起こっているのか、どうすればいいかわからなかった。でも今なら――
「って、お姉ちゃんはそんなつもりじゃなかったみたいだけど」
どれだけアプローチしても、意識のいの字もしてくれない。いや、意識はしてくれてるのかもしれないけどそれを姉妹愛だとか家族愛だとかに繋げられてしまう。私も私で、さりげなくアプローチしてもう一度同じシチュエーションを再現しようとしたせいで、私も『姉妹なら』と言わざるを得なくなってしまった。
「でも、それも今日まで」
今日ファミレスで知り合った紫音の『直接的に』という意見でハッとした。再現するというなら別にお姉ちゃんからしてもらわなくてもいい。同じシチュエーションで立ち位置を入れ替える。つまり私の方からキスすればいいのだ。
「流石のお姉ちゃんもキスされれば気づいてくれるはず」
あとは私の魅力とお姉ちゃんの心次第。あの日と同じシチュエーションにさえなればいつでも実行可能だ。
「さて、そっちの作戦はいいとして」
作戦の振り返りをした私はもう1つ、私が抱えている問題へと目を向ける。私が目を向けた先には実家でも使っていたクローゼットがある。クローゼットの中にはお姉ちゃんに選んでもらった服や新しい学校の制服の他にも、お姉ちゃんに見てもらおうと持ってきた中学時代の制服なども入っている。私は、その陰に隠れるように置かれた1つのリュックサックへと手を伸ばした。リュックサックを部屋中央に配置されたローテーブルへ置き、中へと右手を突っ込み引き抜く。
「これ、どうしようかなぁ」
私の右手には、ビニールの袋の中に入った一着のTシャツが握られている。リュックサックの中には同様にビニール袋に入った衣類がいくつか入っている。そしてこれらは私のものではない。
「つい、目に入って持ってきちゃったんだよなぁ」
昨日の夜、お酒に酔ったお姉ちゃんをベッドまで運び、ついでに何枚か若干乱れた姿を写真に収めたあと、シャワーを浴びようと思い脱衣所へ向かった私は着ていた衣類を洗濯機に入れる際、これを見つけてしまった。手に取るとしっとりとした感触、そしてついさっき、本人から漂ってきたものと同じ香り。気づいた時には私はそれを含めいくつかの衣類をリュックサックへと仕舞い込んでいた。
「これを手放すのは惜しい、でも洗濯物にないと怪しまれちゃうなぁ」
それに、いつまでも汗に濡れたまま放置するわけにはいかない。うんうんと唸りながら数分間が経過する。
「うん、これは洗濯して新しいものをもらおう」
熟考の末出た結論はそれだった。早いところ行動しないと気付かれてしまうかもしれない。そう考えた私はすぐに洗濯機へこれを放り込むために部屋の外の様子を伺う。
「おねえちゃーん……?」
声をかけるも返事はない。少し扉を開くきリビングの様子を伺うもお姉ちゃんの姿はない。
「いけるかな?」
私はビニール袋からそれを取り出し、やっぱり少し勿体無い気もし一度匂いを嗅いでから部屋を出る。やはりどこにもお姉ちゃんの姿はない。チラッと見える廊下には帰ってきた時にはあったはずのゴミ袋がないのでゴミ捨てに行ったのだろうか?
玄関の方に意識を集中させながら、慎重に歩みを進める。数十秒かけて廊下への入り口まで歩みを進める。
「んんっ……」
「っ!?」
背後から聞こえた息遣いに肩をビクッと震わせながらも振り返る。
「……お姉ちゃん?」
「すぅ……すぅ……」
「なんだ、寝てたのか」
先ほど部屋から様子を伺った際はソファの背もたれに隠れて見えなかった位置に、お姉ちゃんが寝ているのを発見する。起こさないように静かに近づくと、昨日とは違い衣服に乱れのない姿で規則正しい寝息を立てている。
「……お姉ちゃーん?おーい?」
「すぅ……すぅ……」
「起きないと食べちゃうよー、おそっちゃうよー」
「すぅ……すぅ……」
「……うん、大丈夫そう」
耳元でしゃがみ込み、声をかけて本当に眠っているかを確認する。もし起きてたらやばいこと聞かれるなと、若干焦りながら様子を伺っていたが、本当に熟睡しているようだ。
「よし、早く洗濯機に入れに行こ」
そう思い立ち上がるも、視界にはお姉ちゃんを捉え続ける。いや、お姉ちゃんから離せない。足も、なかなか洗濯機の方に進んでくれない。
「……お姉ちゃん?」
必要のない三度目の意識確認。それと同時に私は人差し指でツンツンとお姉ちゃんの頬をつつく。
「んんっ……んむっ」
「っ!!」
そんな私の指を、お姉ちゃんは少し煩わしそうに顔を逸らしたあと、その口で咥え込んでしまった。私は慌てて指を引き抜く。指先には透明でテラテラとした液体がついていた。
「はぁ……はぁ……」
それを見た瞬間、胸がキュウと締め付けられ鼓動が激しくなるのを感じる。息も荒くなり、私の秘所がキュンキュンとして切なくなる。私は無意識のうちにそこへと右手を伸ばしていた。
「……少しだけなら」
そんな事を呟き、私はお姉ちゃんにピッタリとくっつくように隣へ寝そべる。胸に顔を埋めると、お姉ちゃんの香りが私の鼻いっぱいに広がり、頭が痺れる。
そこからはあまり記憶にない。気づいた頃には私はお姉ちゃんの衣服を剥ぎ取り、左手はお姉ちゃんの胸へ、秘所はお太ももへと擦り付けていた。
「……真恋?」
「……へぁ?」
私が達した瞬間かけられたその声に、言葉になっていない返事をしながら顔を上げる。お姉ちゃんは私のことを見つめていて、その目と私の目が合う。
「お姉ちゃん……」
数秒の思考停止。そして私に激しい後悔と混乱が降り注ぐ。混乱する頭でどうすればいいのか考える。
「真恋……?これは一体――」
そう声をかけられた瞬間、曇った思考の中で1つだけ、私がしなければいけないことを思いだす。
「んむっ」
「んんっ!?」
私はこちらを見つめ続けるお姉ちゃんの唇へキスをする。その瞬間、再び頭が痺れ、残った本能のままにお姉ちゃんの構内を蹂躙する。そのまま数十秒、次第に回復してきた思考が私の心が訴える罪悪感を感じ取り、お姉ちゃんから口を離す。私の視界は、口の端から涎を垂らしとろけた表情をするお姉ちゃんを捉えた。
(あの時の私もこんな表情だったのかな?)
一度混乱を乗り越えたおかげか、それとも現実逃避をしているのか、妙に冷静な頭がそんなことを考える。それとは裏腹に、私の口からは自然と言葉が溢れる。
「……お姉ちゃん、私お姉ちゃんが好きだよ、大好き。お姉ちゃんも私のことを大事に思ってくれているのは知ってる。でもね、お姉ちゃんの好きと、私の好きは違うんだ。お互い好きって言い合うたびに、言葉は同じなのに、心はすれ違ってるんだって。そう思うたびに胸が苦しくなって、それでも嬉しくって、想いが溢れてきちゃいそうになるの」
一度決壊したそれは、止まることを知らない。まだ惚けた表情をしたままのお姉ちゃんへと、私はその言葉を投げかける。
「お姉ちゃん、好きだよ。私ね、お姉ちゃんのことが恋愛対象として好きなの」
終わった。愛の告白を口にしながら私は心は私にそう告げていた。
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