第19話 シスコン姉妹はペアマグを買う
「あ、真恋おかえり」
私がジンジャーエールを飲みながらスマホをいじっていると二十分ほど前にドリンクバーへ向かったはずの真恋が席に戻ってきた。
「長かったね、どこ行ってたの?」
「うん、ちょっと友達がいてね」
「そうなんだ」
いつの間に友達なんて作ったんだと思ったが、なぜか真恋の機嫌が治っているので余計なことは言わないことにする。
「真恋、何食べる?」
「それじゃあドリアにしようかな」
「分かった、注文しておくね」
私はパッドからドリアと私のハンバーグ、ライスやスープのセットに加えついでにポテトフライも注文する。
「そうだお姉ちゃん、料理が来るまでに買った文房具見せてよ」
「いいよ、ちょっと待ってね」
真恋の提案に乗り、私は持ってきていたバッグから雑貨店の袋を取り出す。
「私のはこれね、と言っても文房具だから大したものじゃないけど」
そう言って私は買ってきた文房具を並べる。色違いのシャープペンシルや多色ボールペン、蛍光ペンが数種類。
「真恋はどっちがいい?」
私は色違いのシャープペンシルとボールペンを真恋の方へ差し出す。
「うーん、こっちとこっちかな」
真恋は紺色のシャープペンシルと青色のボールペンを選ぶ。
「じゃあ私はこれかな」
私は残った赤茶色のシャープペンシルと赤色のボールペンを手に取った。試しに紙ナプキンに書いてみると、雑貨店の少し高めのペンだからかいつも使っているものよりもスラスラとかける気がする。それにての中への収まりもいい。
「やっぱり安物のシャーペンとは違うね」
私がいつも使っているのは百均で売っているような安いシャープペンシルだ。今までは書ければなんでもいいと思って安物を使ってきたが、この書き心地は癖になる。
「ふふっ、お姉ちゃんとお揃い」
真恋が手に持ったペン越しに私が持ったペンを見る。どうやらもう完全に機嫌は治ったようだ。
「そうだ、真恋はどんな食器選んだの?」
レジに並んだ時は代金の支払いは私が持ったが、どんな食器を買ったかはよく見られなかった。流石にここで広げるのは迷惑になるのでしないが、どんなものを買ったのかは聞いておきたい。
「白地の平皿とかガラス製のサラダボウルとかを色々かな。あとは……あ、そうだ!」
そういうと真恋は雑貨店の袋から手のひらサイズの箱を2つ取り出した。
「えっと……お姉ちゃんはこっちね」
差し出された箱を手に取ると、それなりの重さのものが入っているとわかる。
「それマグカップね。お姉ちゃんのマグカップちょっと欠けてたし、せっかくだからお揃いにしようと思って」
「ありがとう!ちょうど買い換えようかと思ってたんだ」
「本当?家もあんな状態だったし、使えるならいいとか考えてると思ってた」
「そ、そんなことないよ」
買い換えようと思っていたのは事実だ。ただ買いに行くのが面倒で欠けたまま数ヶ月は使っていたが。
真恋の言及を笑って誤魔化しながら箱を開ける。中には淡い青色に白猫の絵の描かれたマグカップが入っていた。
「へー、可愛いマグカップだね」
「それだけじゃないよ、ちょっと貸して」
「はい」
真恋にマグカップを渡すと真恋はもう片方の箱からマグカップを取り出す。新しく取り出されたマグカップには淡い青色に黒猫の絵が描かれていた。
「こうすると……ほら!」
真恋は2つのマグカップをくっつける。すると、マグカップの白猫と黒猫が鼻先をくっつけ合う。
「これって、ペアマグ?」
「うん、そうだよ」
「なんでペアマグ?」
普通はカップルとかが買うものじゃないのだろうか?
「お揃いだしせっかくならペアマグにしようかなって」
「そうなんだ」
まあ姉妹で買う人達もいるのかもしれない。そういうものだと思うことにする。
「いいんじゃない?可愛いし」
「……はぁ、やっぱり伝わらないか」
「ん?何が?」
「別になんでも、本命は別にあるし」
よくわからないが真恋が呆れているような落ち込んでいるような顔をしている。また何か機嫌を損ねてしまっただろうか?
「失礼致します。ハンバーグでお待ちのお客様」
「あ、はい。私です」
真恋の様子に少し不安になっていると、注文していた料理が到着した。マグカップを片付け、料理を受け取る。
「それじゃあ食べようか」
「うん、いただきます」
「いただきます」
ハンバーグを切り分け、一口含む。五百円以下でこのクオリティなのはいつ食べてもすごいと思う。
「それで、このあとどうする?」
「うーん、とりあえず買うものは買ったし、適当にブラつかない?」
私が真恋に聞くと、真恋がそう提案した。
「いいね、スイーツはどこで食べようか?」
「?……あーあれ本気だったの?それじゃあ昨日食べたケーキのお店がいいな」
「分かった、なら少し早めに帰って帰りに寄ろうか」
「うん!」
真恋の返事を聞きもう一口ハンバーグを口にする。うん、やっぱり美味しい。
「お姉ちゃん、それ一口ちょうだい」
ハンバーグを食べていると、真恋がそうねだってくる。
「はい、あーん」
「あーん」
私は流れるようにハンバーグを真恋に差し出し、真恋もそれを躊躇なく食べる。
「うん、美味しい」
「そう?よかった」
「お姉ちゃん全然照れないね」
「二日間で何回もしてたらそりゃなれるよ」
「それはそっか」
いい年して妹とあーんで食べさせ合うのになれるのはどうかとも思うけど、慣れないよりはいいだろう。その後、真恋のドリアも分けてもらったりしながら食事を終えた私たちは再びショッピングモール散策へと向かった。
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