第14話 コミュ強妹は先輩と知り合う

「どう?」

 

「よくお似合いですよ」


「うん、お姉ちゃんかわいい!」


「そ、そう?」


「ふふっ」


 真恋達が持ってきたのは膝上丈の白のシャツワンピースにデニムパンツ、その上からカーキ色のモッズコートを羽織るというコーデだった。私が真恋達に似合っているか聞く。二人からは好評のようだ。真恋のまっすぐな評価に照れていると、菊池さんの笑い声が聞こえる。


「どうかしましたか?」


「いえ、ご姉妹で同じ照れ方をするのだなと」


 そう言われてみると、私が真恋を褒めたときも同じような反応をした気がする。そのことに気づき、私は急速に頬が熱くなる。真恋の方を見ると、私同様に頬を赤く染めていた。


「それでは、そちらの服と妹さんの服は着ていかれるということでよろしいですか?」


「そうですねよろしくお願いします」


 菊池さんの言葉に私は恥じらいを取り繕いながらそう答える。


「あ、そうだ。他にも真恋の服を買っていきたいのでそっちのカゴとは別の会計でお願いできますか?」


「あ、それならお姉ちゃんのも――」


「私のはもう十分買ったでしょ?また今度来たときね」


「はーい」


 すでに今カゴに入ってるだけでもかなりの量だ。これに真恋の服を足すのだからこれ以上私の服を増やしたら持ち帰るのが大変だろう。私は今着ている服の清算を済ましてから真恋の服をいくつか見繕い、アパレル店を後にした。


「またね、白音しろねさん」


「はい、真恋さん。また」


 アパレル店を去る際、真恋と菊池さんがそう挨拶を交わすているのが目に入った。どうやら知らない間に仲良くなったらしい。次に来た時はまた菊池さんに相談しよう。


「少し買いすぎちゃったね、コインロッカーに預けてから次のお店に行こうか」


 私は荷物を預けるために近くのコインロッカーへと向かった。


 ♡ ♡ ♡


「それで、次はどこ行こうか?」


 コインロッカーへ買った服を預けた私たちは、ベンチに座って軽く休憩しながら次の目的地を話し合っていた。


「うーん、マグカップとかの割れ物が欲しいかも。家に置いてきちゃったんだよね」


「そういえば私もいくつか新調したいものが……それに、真恋の食器とかも買わないとだし」


 昨日は来客用の食器を使ったが、それを続けるわけにもいかない。それに、私の食器もいくつか欠けてるものもある。


「それと、他にも色々雑貨が欲しいかも。文房具もいくつか新調したいし」


「あ、私もノート切れそうなんだった。それじゃあ雑貨店に行こうか」


 目的地の決まった私たちは近くの地図へと向かう。


「えーっと、雑貨店は……ここか」


「こっちにもあるね」


「本当だ」


 地図上には私が見つけた雑貨店とは別に、真恋が見つけた雑貨店もあった。ショッピングモール内には同じ業種の店舗もいくつかあるらしい。


「どっちに行こうか?」


「お姉ちゃんが見つけた方のが近いね」


「でも真恋が見つけた方のがお店が大きいよ」


 おそらく真恋が見つけた方のが品揃えはいいだろう。私が見つけた方のが距離が近いとはいえショッピングモール内のちょっとした距離だ。それくらいなら大したことはないだろう。


「新生活の準備なら色々と品揃えがいい方のが都合がよさそうだし、真恋が見つけた方に行こうか」


「そういうことならそうする」


 私がそう真恋に相談すると、真恋も納得したように頷いた。雑貨店の場所は三階。ここから5分もあれば着くだろう。


「それじゃあ行こうか」


 そう言って私たちは雑貨店へと足を進める。その道中、私は気になっていたことを真恋に尋ねる。


「そういえば真恋、いつの間に菊池さんと仲良くなったの?」


「白音さん?お姉ちゃんのリンクコーデを決めてる時に仲良くなったんだ」


 私が質問すると、真恋はそう答える。


「実はね、白音さん一ノ瀬の生徒なんだって」


「一ノ瀬って確か真恋の学校だったよね?」


「そう、今一年生で、私が入学するときは1つ上の先輩になるんだって」


 どうやら菊池さんは真恋の先輩になる人だったようだ。


「入学する前に先輩と仲良くなれてラッキーだったよ。連絡先も交換できたし」


「真恋はすごいね、すぐ仲良くなれて」


 昨日こっちにきたばかりなのに、真恋はもう友達を作ってしまった。それに比べて私はもう大学四年生になるというのに友達と言えるのは牡丹しかいない。内向的であまり友達を作らなかった真恋がこんなにコミュ強になっていたなんて思わなかった。いつの間にこんなに差がついてしまったのかと、何だか不甲斐なさを感じる。


「別にすごくないよ。お姉ちゃんを参考にしてるだけだし、お姉ちゃんがいなかったらこんなにすぐ仲良く離れてなかったかな」


「ううん、私じゃこんなにすぐに仲良くなんてなれないよ。それは真恋が努力したからだよ」


 私なんかを参考にしても全く友達はできない、高校生の頃は幾分かマシだったかもしれないが、それでも今の真恋とは天地の差があるだあろう。


「真恋も成長したんだねぇ」


「何それ、おばさんっぽいよ」


「私はそんなに老けてない!」


「ごめんってばお姉ちゃん!ふふっ」


 冗談混じりでそんな会話をするが、このままだと本当にただ老いていってしまう。せめて来年、何かしら成長しないと。


「真恋、私頑張るね!」


「ん?うん、頑張ってね?」


 私の宣言を聞いた真恋が不思議そうに頷く。せめて大学卒業までにはもう少し交友関係を広げておこう。そんなふうに会話をしていると、雑貨店が見えてきた。


「結構広いね」


「全部見てたら時間がかかっちゃいそうだね」


 他の店舗と比べても、雑貨店はかなりの大きさを誇っていた。現在時刻は十二時過ぎ、あんまり時間をかけるとお昼がかなり遅くなってしまう。


「真恋、ここは二手に別れようか。私は文房具、真恋は食器ね。食器は真恋のセンスに任せる。私のも一式買ってきちゃって」


「お姉ちゃんのもいいの?それじゃあ任せて!」


「うん、お願いね。文房具は私と同じのでいい?」


「!うん!お姉ちゃんとお揃いがいい!」


 私が尋ねると、真恋は眩しくて直視ができないほどの満面の笑みでそう返した。

 

「それじゃあ……四十五分にその入り口の近くで落ち合おう」


「わかった!行ってくるね!」


「行ってらっしゃい」


 真恋が食器売り場の方へ向かうのを見届け、私は文房具売り場の方へと足を進めた。


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