第3話

 目的地まではまだ遠いため、叔母に話しかけるにはまだ早い。

 また私の隣の席が空いたため、無理な怪しい体制で覗き込まなくても、窓の反射で見えれるようになった。だから、ワンチャン叔母が窓越しでもこちらを向けば自然と私に気づく確率が上がる。しかし、叔母はこちらの窓を見る雰囲気がない。

 視線が少しでもこちらに向けばいいと思い、少し大袈裟な動きをしてみる。パブリック空間のため過度なことはできない。もし、繊細な人が私を見た場合、もしかしたら変人、不審者かと思われるかもしれない。本当に繊細な人ではなければ思われないと思うけど。あと、がっつり叔母と目が合って、叔母ではなかったらその人からも不審者かもしくは変人だと思われる可能性はある。

 そんなリスクはあるが、叔母か叔母ではないかが気になる。リスクを犯してでも気になる。だから私は一つ一つの動作を気持ち程度大袈裟にしてアピールをした。

 仕事が忙しいのか会話が弾んでいるのか分からないけれどずっとスマホの画面を見ている。仕事なんていいからこっちに気づいてよ。なんて思いながらチラチラ叔母を見る。

 決定的な証拠があればいいのに。叔母が途中の駅で降りれば、他人だとすぐ証明できるし、私と目が合ってスルーかもしくは話しかけて来てくれたらすぐに分かる。

 叔母かどうか気になるからスッキリしたい。話したいと思う。通路を挟んでずっと同じ並びだったのになんで気づかなかったの的なノリをぶちかましたい。あと、個人的願望で叔母だったら駅から実家まで送って欲しい。だから、私は早く正体を知りたいんだ。

 あまり叔母を観察しても仕方がない。とりあえず電車の天井を見る。

 無駄につり革が並んでいて、揺れている。ボックス型の席だから、つり革に捕まってる人を見たことがない。というか掴みづらいと思う。そもそも、電車の奥で立つことすら避けるタイプの車両だ。荷物が多いと乗るのも気が引けるし、奥にはいけない。座りたいという願望が強ければ通路の奥へと進むけど。それかどうしようもなく混んでいる時は、仕方がなく、奥へ行く。というか奥へ行かざるを得ない。

 鈍行列車は、荷物の少ない時はまだ楽に乗れるけど、荷物が多いとやっぱり不便である。地元民が乗ることがメインの電車だから荷物の多さは鈍行列車からしたらイレギュラーで私のわがままになる。それならば旅行者は特急電車に乗ってくれと思うだろう。私ならそう思う。まぁ、お金があれば特急電車に乗るけれど。

 一方、叔母とは何も進展はない。できれば私より早く電車を降りてくれ。そう思いながら、あと、どれくらいで駅に着くのか、時計を見ながら確認にした。

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