第2話

 目を開けた。なんとなく違和感があった。普段の鈍行列車とは違う気がする。

 周りを不審がられないように見渡した。

 隣の人がいたせいと私の睡眠欲のせいで気づかなった。通路を挟んだ隣の席に叔母のが居ることを。

 いやいや、なんで叔母が居る?

 叔母は電車に乗り、遠出することは滅多にない。

 叔母が電車に乗っている意味が分からない。

 でも、叔母だということに自信がない。このご時世のせいで顔の上半分しか分からないからだ。

 叔母と思われる人物の格好は、薄い青緑色のセーターで細身のズボン。私の知っている叔母にしては細い気がする。でも、このセーターには見覚えがある。着ているところを見たことがある気がしたのだ。良く言えば、パステルカラーのセーターを私は見たことがある。黒のズボンはイメージがないけれど、暫く会ってないから私の知らないズボンを持っていても不思議ではない。

 しかも、白のニューバランスを履いてる気がする。真っ白ではない白のニューバランス。独特な白。あれ、おばあちゃん家の玄関で見た気がするんだよなぁ。私がおばあちゃん家の玄関で靴を脱ぐ度に見てる気がするんだよなぁ。てかあった。おばあちゃん家の玄関に。

 もし、本当に叔母なら話しかけないといけない。でもな確信がない。

 手だってあんなに年齢が見えるような手だったっけ?細いのが気になるんよなぁ。顔が見えないのムズすぎ。

 でもなぁ、あのテロンテロンの小さいリュック見たことがあるんだよなぁ。おばあちゃん家で見た。エコバッグ素材のテロンテロンリュック。茶色の小さいリュック。見た気がするんよなぁ。てか、あった。テロンテロンの小さいリュック。あれが他人と被るわけないしなぁ。やっぱり叔母かな。叔母だろ。

 叔母ってなんであんなか細いリュックサック持ってるんだろ。あれで何が守れると言うんだ。袋だけの機能だけを求めるのであれば何となく分かるけど、本当に入れ物じゃん。ほぼ、エコバッグじゃん。

 また、私の隣に人が座って観察しにくくなった。

 叔母なら話したい。でも、叔母じゃない場合は気まずい。私は、まだ電車に乗らないといけないから話しかけるのはリスキーだ。電車を変えるなんてそんなことはしたくない。だって、1時間に1本しか鈍行列車は走ってないし。叔母じゃない方に賭けで負けてしまった代償に無人駅1人で1時間はキツい。キツすぎる。

 隣の人が降り、隣が空き、また観察チャンスがやってきた。

 叔母は、スマホをいじっていた。この距離からでも何となく何をしているのか分かるスマホの画面がチラチラ見える。

 誰かにメッセージを送っているようだ。吹き出しの枠が広すぎる。そんなに文字を大きくしないと見えない、ポテンシャルだったけ?不安になってきた。会わないうちにそんなに変わってしまった?えっ?まじで?でも、画面が大きい方が見やすいもんね。目も疲れないし、いいと思う。でもなぁ、年齢的に早い気がするんだよ。その画面の大きさ。

 叔母の老いに少しショックを受けた。

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