第7話 それぞれの祝福

 冬。

「あのねあのね! ニト兄ちゃんね! ふたばちゃんとお付き合いすることになったんだってー!」

 朝、二都の部屋に忍び込んだ直後であることが丸分かりの位置から、健五が大声で叫ぶ。

色恋沙汰いろこいざただーっ! ニト兄ちゃんに、色恋沙汰だぁーっ!」

 健五は家中をどたどた駆け回り、大ニュースを喧伝けんでんする。

「こっ、こらっ」

 二都はでダコよりも真っ赤になって、キッチンからもごもごと叱る。

「ニト兄ちゃんに、カノジョができたぞーっ!」

 止まらない健五の声に、まだ寝ていた兄弟たちも起きて、階下に駆け下り、キッチンに集結する。

「おめでと!」

 四磨が、徳用大袋入りプロテイン(10kg)を二都の胸に押し付ける。

「おめでとー!」

 健五は、撮り溜めた、自分と兄弟たちの変顔写真集を。

「おめでとぉ」

 弥六は、毒蛙どくがえるのぬいぐるみを。

「おめでとう」

 蛍一は、二膳にぜんの箸を。

「おめでとさん」

 三夜は、ハンドクリームを。

「ん」

 七那は、自分で作ったゲームの入ったメモリーを。

「ありがとう」

 二都は、兄弟たちの心からの祝福に生き埋めにされて、真っ赤な顔のまま、笑った。

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