第14話 魔王の進撃
ウォームレット砦――
戦局はジリジリと、まるで便秘の時の大腸内の糞の進みのような進みであった。
魔物は移動速度を捨て、とにかく防御を固めて一歩一歩踏みしめるように砦へと進んでくる。
人間が放つ
「【
俺の6回目になる【糞爆弾】が炸裂する。
それだけの防御を固めていても被害を抑えきることはできず、魔物の数十体が吹き飛ぶ。
だがそれでも四肢が?げたり、そもそも蒸発して消えてなくなるようなことはない。
大怪我をしているとはいえまだ魔物は生きており、すぐに別の魔物が救助に入るのだ。
くそっ!
これでもかなりの数を合計で倒していると思うが、とにかく敵の総数が多い!
それに俺が抑えられるのは一か所だけだ、他の場所はもう、城壁にだいぶ接近してきている。
「全隊!クロスボウ準備!」
そう言っている間に、城壁に近づいた魔物たちの部隊が一斉にクロスボウを構えた。
狙いはもちろん、城壁の上で弓や銃を射ち、石を投げている人間たちだ。
「第一部隊!発射!」
ズドドドドドドドドドッ!!
「ぐわーっ!!」
「があっ!!」
魔物が放ったクロスボウの
ええい!相手のほうが練度も武器の性能も高いとかどうしろってんだ!!
人間もっと頑張ろうぜ!頑張って頑張って!
俺も頑張るんだよ!
「第二部隊!発射!!」
うおおおお!クロスボウがまた飛んでくる!これ以上味方に被害が出るのはやばい!!
「【
ブボボボボボボボボボボボボッ!!
俺の尻から放たれた
鋼鉄以上の強度を誇るそれらはクロスボウの太矢をガキン!と音を立てて弾いた。
唯一の防御スキルだが、味方にも使える系統のスキルで助かった。
だが何故か助けたはずの味方がこちらに冷ややかな目を向けるんだが。
解ってるけどしかたないだろ!俺だってわざとこんなもん出してるんじゃねえんだぞ!!
「勇者殿!敵が来ています!」
俺のそばで弓を撃っていた兵士の言葉にはっとする。
【糞爆弾】で吹っ飛ばしていた戦列の連中が、しかしその隙にだいぶ城壁へ近づいてきていた。
俺は慌てて、攻撃を再開しようとする。
「【糞爆だ……】?!」
違和感を感じて俺は気が付く。
この感覚!
まるで!新緑の森の中で、太陽の日を浴びながら、小川のせせらぎと鳥のさえずりを聞くような!
非常に爽快な感覚かつ、一切合切の腹痛を感じないこの状況!
間違いない。
弾切れだ!!
今、俺はすべての糞を出し切ってしまったのだ!!
「しまっ……!」
俺が対応しきれずにいると、魔物たちも攻撃が来ないことを察知したのだろうか。
今までの防御を固めた亀のような動きから一転、雄たけびを上げて一気に駆け出し殺到し始めた!!
マジかよ?!
まさか、魔物たちは俺の糞切れを狙ってたのか!!
あっという間に城壁に張り付かれ、次々と梯子をかけられる。
兵士たちが必死になってそれを壊す……だが数が多い!
ってか空!
空挺部隊かよ?!
やべえぞ!梯子も対処しきれてないのに!!
「あ、あれは……」
兵士の一人が震えた声を上げる。
そちらを見れば、大柄な魔物が1体、悠然と砦に向かい歩いてきていた。
その手には非常に巨大な剣が握られている。
周囲には、神話の軍隊か?と思わんばかりのピカピカの全身甲冑に身を包んだ魔物の騎士が固めている。
殴り合いしたら絶対勝てないと確信できる。
あんなすげーの、説明を受けていない俺でも誰だかわかる。
「魔王……!」
-----------------------------------
【
防御スキル。非常に硬い糞便で周囲を覆い敵の攻撃から身を守る。
スキルレベルが上がると硬度、防御範囲、消費糞量が増加する。
最大レベルならば、戦略級魔術の一撃にすら耐える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます