第2話 天上の磐座

周囲には雲海が広がり、唯一空にある太陽だけが照らす白亜の建造物。

人間が生涯をかけて1つを彫り上げるような緻密な彫刻が、しかしいたるところに立ち並ぶ。

見事な庭園には地上には存在しえない植物が鬱蒼と、しかしよく手入れをされており、見るものを楽しませる。

人間どころか、今まさに栄華を極めている魔王ですら、これほどの場所は用意できないであろう。


それは天の磐座。

そこにある、煌びやかな会場。



「あははははははははははははははははは!!」

「はははははは!!はははははは!!」

「ひーっ!ひーっ!おなかいたい、あはははははは!!」



『勇者』がスキルを発動し、糞射撃ボッシュートにより大量の魔物が吹き飛んだとき。

そのが流されている会場は、爆笑の渦に包まれていた。

豪快に机や足をバンバンと叩いている者や、腹を抱えて目じりに涙を浮かべている者など、千差万別。

手にしていた黄金色の蜂蜜酒を零し、知恵の木の実を床に落としてしまっても止めることができない。

この会場に居る、老若男女問わず様々な容姿を持つ者たちが、全員が全員嗤っている。



あまりにも滑稽で、下らなさすぎる出来事だと。



映像では、糞射撃ボッシュートの第二射により、さらに多くの魔物たちが吹き飛んでいく。

『勇者』の攻撃手段は確かにふざけている。

しかしこの一瞬で多くの命が奪われていることは間違いない。

あまりの惨状に魔物たちは勿論、今まで魔物と必死に戦っていた筈の人間らですら本能的な忌避を抱くような事態。

その状況を、愉快エンジョイ痛快エキサイティングだと嘲笑し娯楽としている、この会場に居る者らには共通点があった。



神々である。



神はこの世の理物理法則を作り、あらゆるものに規則化学反応を定めた。

その後は気まぐれに世界を見守り、必要があれば恩寵いらんことを与え、時には自らが手を下す。

とはいえ神々だけでは流石に手が回らないため、自らの部下として小神を作り、それぞれの世界の管理を任せている。

いくつかの権能は代決権もおりているため、システムとして神の恩寵を与えているのだ。

本当にまずい時や、神としての威厳が必要な時はキッチリ仕事はするが。


そういうわけで、普段はおおむね暇を持て余し気味であり、そして暇というのは神にとって一番の敵である。

民は餓えに、王は病によって死ぬが、神は暇で死ぬ。

神々とて、時には娯楽人の犠牲が必要であるのだ。


だが神々がそれぞれ好き勝手に遊び惚けると、流石に下界に悪影響を与えすぎかねない。

確かに神々が管理している世界の数というのは膨大星の数である。

とはいえ、湯水のように消費して浪費してダメにしていいという訳ではない。

実際、とある神全自動種付主神がやりすぎて、いろいろと後始末が大変になった世界がいくつもあった。

悪魔に散々「お前らのほうが人に悪影響あたえとるやんけ」と揶揄されるほどに。

ちょっとこれはいかんよね、と神ですら思うくらいに。

これに懲りて、神々が何度も話し合いと殴り合いラグナロクを行った結果、娯楽にもルールが設けられることになった。



そのルールの範囲内で流行したのが、この『異世界転生』という娯楽である。



ある世界に、別の世界から適当な人間を選び、適当に恩寵を与えて放り込むのだ。

放り込む先は、滅びてしまってもいい世界フォーマット許可済を選ぶ。

状況シチュエーションは様々で、赤子から生まれ変わったり、誰かに乗り移ったり、身体ごと召喚したりとバラバラだが。

それらが現地の民に崇められたり煽てられたりハメられたりして、勇者になったり魔王になったり、スローライフしたり木を植えたりと、そういう様子を眺めるのは中々に好評であった。

既にいくつもの世界でそれを試してみて、いくつもの異世界転生の娯楽が生まれている。



だが、それも毎回続けていると流石に飽きが出る。

味変してみたくなるものだ。



なにか、変わり種でもないものかと神々が仕事もせずに昼寝はして頭をひねって考えた結果。

今までのような恩寵チート能力ではなく。

思いっきりふざけているが強い、そんな恩寵を与えてはどうかと考えたのだ。

まあ勿論「二番煎じ」だとか「すでにやった気がする」などの反対意見も多数、出はしたが。

どうせ暇つぶしなのだ。

適当にやってみてダメだったらダメでいいだろう。

それくらいのノリで、神が賽を振って色々と決めた結果……






選ばれたのが、このユニーククラス。


【うんこマン】である。



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転生者特定外来生物

別の世界からやってきた者であることを現すスキル。

その運命には神々の手が加えられており、通常では起こりえないほどの事件や不幸を呼び寄せる。

それは世界の流れを大きく変え、中には根本から再編してしまうことも珍しくない。

幸運にも恵まれるが、しかし結局は神の手の平の上で踊っているだけに過ぎない。

命運が尽きることもままある。

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