第48話
水族館に行った翌日、有翔は寝過ごしていつもより遅く学校に着いた。時間ギリギリに着いたので急いで靴を履き替えようと下駄箱を開けた。
「俺の上履きどこ行った?」
下駄箱に上履きが入っていなかった。仕方が無いので来客用のスリッパを履き替えて職員室に向かう。
「しかし、どこにやったか知らないけど暇な奴も居たもんだな。」
その口ぶりは誰が行ったのか検討がついているようだった。
職員室に入って上履きが無くなった旨を伝えると、新しいものを買うことと、今日はスリッパで過ごすよう言いつけられた。
「チッ...朝から最悪だな。」
職員室を出たところで小さく舌打ちした。
そして、そのまま機嫌の悪さを隠すことも無く教室に足を踏み入れると、上履きをどこかへやった犯人だろう男が、ニヤニヤと有翔を見下すように笑みを浮かべていた。
有翔はそれに反応することなく自分の席につくなり、頬杖をついて窓の外を眺めた。
そして、有翔の機嫌の悪さを察知した教師陣は、有翔を指名することなく淡々と授業は進んで行き昼休みに入った。
「おい、塩野。」
「へぇー、俺の名前覚えられたんだ。偉いじゃん。俺はお前の名前興味無いから知らねぇけど。」
いつもの有翔であれば話しかけられたとて無視を決め込むところだが、珍しく煽り口調で返した。
「俺は
「だから興味無いって言ってんだろ。それよりも、俺の上履きどこへやった。捨てたのか?それとも、隠し持ってるのか?」
有翔は確信を持って足達を問い詰める。
「お前、上履き無くしたのかよ。なるほど、だからスリッパなんて履いてんのか。惨めだな。」
足達はしらばっくれるだけでなく、有翔を嘲笑した。これには、有翔も少しくらい動揺してなにか吐いてくれるかもと思っていたのでびっくりした。
そして誰もいなくなった、揺さぶっても無駄だろうなと思った有翔は、
「あぁ、そうだ。」
「んだよ。」
「お前、いつになったら永澄さんに話しかけるんだ?俺は楽しみに待ってるんだぜ。お前が拒絶されるの。」
思い出したかのように手を叩いて言った。そして、それは足達を怒らせるのには十分だった。
「はぁ?今日から話しかけるつもりだったんだ!それに、拒絶なんかされねぇ。そしたら、お前なんかすぐにでも捨てられるだろうよ。」
有翔は足達が言い切る前に、そそくさと横を通り抜けた。
有翔は絃葉に捨てられるなんて微塵も心配していない。そもそも、有翔をなんかと言ってしまう時点で足達の想像する未来が訪れることはあり得ない。
そして、足達でストレスを解消した有翔は、軽い足取りで屋上へ向かった。
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