第39話

そして、水族館に着いた。花凜は既にテンションが上がっており元気にはしゃいでいる。


三人いるが受付の前に行くと、絃葉がおもむろに財布を取り出したので、有翔が慌てて止める。


「ちょっと、なんで財布出してるの?」


「え?何でって言われてもチケット買わないと館内に入れないからだよ。」


絃葉は、有翔に何を言っているんだとキョトンとした表情を向ける。


「だから、俺が三人分出すから財布はしまってて良いよって言ってるんだ。」


「いやいや、ダメだよ。動物園の時も払ってもらった記憶があるんだけど?せめて、私の分くらいは私が払うから、花凜の分は出してもらってもいいかな?」


どう言っても頑なに有翔に自分の分のお金を出させたくない絃葉は、花凜の分は払ってもいいからと折衷案を出した。


「でも、永澄さんはバイトしてる訳でも無いでしょ。そもそも、事の発端は俺なんだから大人しく払われてください。受付のお姉さんも困ってるからさ。」


有翔は、絃葉の案を却下して半ば強引に大人二人、子供一人分のチケット代を支払った。


受付のお姉さんからチケットを受け取りそれを、絃葉と花凜に手渡す。


「あ、ありがとう。でも、ほんとに無理しなくても良いんだよ。」


「だから、大丈夫だって。ほら、花凜ちゃん行くよ。」


「やったー!しゅっぱーつ!」


申し訳なさそうに目を伏せる絃葉と、テンションMAXで大喜びの花凜とようやく水族館に足を踏み入れた。


水族館に入ると早速壁一面の大きな水槽があり、その中を色んな種類の魚が自由に泳ぎ回っていた。


「わー!ほら見て、おねーちゃん、おにーちゃん!お魚さんいっぱい!すごい!」


花凜は、その水槽を見た途端に、すごい!すごい!と、目を輝かせて、絃葉と有翔の手をグイグイ引っ張る。


「花凜、もうちょっと落ち着いて。塩野くんはもう少しはしゃいでも良いんだよ。」


そんなこと言ったって、花凜が落ち着けるはずも無いし


「何で分かったの?」


有翔は、テンションが上がっているのを見破られて驚いている。


「普通に見れば分かるよ。ずっとソワソワしてたもんね。」


「マジか。でも、ちょっと恥ずかしいから我慢しとく。」


いつも、花凜と一緒にはしゃいでいる有翔も、流石に人混みの中では羞恥心を感じるらしい。


「おにーちゃん、あれなんて言うお魚?」


特に魚について詳しい訳でもない有翔は、花凜が指を指している魚が分からなかったが、魚の説明が載っている看板を見つけた。


「あっちに、お魚の説明が載ってる場所があるから、そっち行こうか。」


人混みをかき分けて看板の前に辿り着くと、花凜が興味を示した魚の説明文を一つ一つ読み上げていく。


そして、花凜が満足したところで通路を歩きながら、魚を見て回っては、花凜が興味の示した魚の説明文を読み上げ続けた。

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