第30話
「水戸南さんは、どうして塩野くんを好きになったの?」
絃葉の疑問から密かに女子会が開かれた。
「そっ、それは...」
その疑問を受けた侑季は、顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうに絃葉から目線を下げた。
「有翔ってかっこいいでしょ...」
それは、絃葉が辛うじて聞くことができたくらいか細い声だった。
しかし、絃葉は有翔がかっこいいというのがいまいちピンと来ず首を傾げる。
「それに、優しいんだよね。」
これには絃葉も同意を全力で同意を返すところだった。今はその優しさが花凜に向けられていることも絃葉はよく知っている。
「具体的に好きになったタイミングってどんな時だった?」
絃葉は有翔の色恋沙汰に興味津々なようで、侑季に息付く暇も与えずに質問攻めにする。
「それ言わなきゃダメ?」
顔を真っ赤に染めたまま弱った感じで己の可愛さを全面に押し出し上目遣いに言った。
しかし、絃葉に効果は無くコクコクと高速で首を縦に振った。すると、観念したように侑季が語り始めた。
「あれは、小学校四年生くらいのときだったかな?みんながちょっとずつ異性に興味を持ち始めたころだね。」
侑季が丁寧に言葉を紡いでいく。
「ボクは特に好きなのか男の子なんていなくて、他の女の子みたいに誰が好きとか、あの子かっこいいよね。なんて話し合えたことが無かったんだ。」
「私も小学生くらいの時は、あんまり浮いた話は無かったよ。」
絃葉の発言に、侑季が驚いてみせた。
「え!?絃葉ちゃんって小学生のときモテなかったんだ?」
正直なところ侑季も絃葉は可愛いと思っている。だからこそ、有翔が取られるかもしれないと余分に絃葉を警戒してたわけだが...
「今思うとモテてたんだと思うよ。小学生男子のあるあるに気づけなかったんだよね。」
侑季は、それを聞いて納得の声を上げる。
「あー、ボクの学校でもあったよ。今だったらかわいいで済むんだけど当時は普通に嫌だったよね。」
侑季も経験があるらしく当時を思い出して嫌な顔をする。
「それで、話を戻すけど、ボクって普通に可愛いでしょ。絃葉ちゃんには劣るけど...」
「えー、そんなことないんじゃないかな?水戸南さんも可愛いと思うよ。」
素直に侑季が可愛いと褒める絃葉。しかし、それに対し侑季は微妙な顔をする。
「それ、絃葉ちゃんが言うと嫌味に聞こえるから辞めといた方がいいよ。これ侑季ちゃんからの忠告ね。」
「普通に褒めただけなのに何がいけないの?」
意味が分からないと困惑の表情を浮かべる絃葉を見て侑季は大きなため息をついた。
「はぁ。さては、自分の可愛さに自覚が無いタイプなんじゃないの?今まで容姿を褒められても冗談だと思って取り合って来なかったでしょ。」
「よく分かったね。この前塩野くんにも可愛いって言ってもらった時同じこと言われちゃったよ。」
絃葉が口にしたその瞬間、侑季が身を乗り出して額と額がくっつきそうなほど近づいた。
「ど、どうしたの?」
侑季は口を開かずじっとしたまま肩を震わせていた。
「ボクには可愛いって言ってくれたこと無いのに...」
その表情から侑季が怒っているのか悲しんでいるのか区別がつかなかった。
「えっと...」
「ああ、ごめんね。なんとも思ってないことは無いけど、いつかボクが一番可愛いって言ってもらうからね。」
いつか、有翔と親友以上の関係になる事を夢見て侑季は言った。
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