第27話
昼休み。恒例のおかず交換会を開催しお互いに舌鼓を打っていた。
「そうだ。ずっと言わないとと思ってたんだけど。」
「ん?どうかした?」
「花凜にお菓子買ってあげたのなら一言言ってよね。」
有翔はここ二日間絃葉から何も言われなかったので、花凜は上手くやったんだと思っていた。
「なんでバレた?」
有翔の脳裏に花凜がバラしたのではないかと過ぎったが、花梨を疑うことができないし、絃葉が自分で見つけた可能性もあるので皆目検討もつかないような反応をした。
「一昨日、家に帰ったら花凜が急におにーちゃんに買って貰ったって見せてきたんだよね。」
「甘やかしすぎだって俺が怒られるって言ったんだけどな。」
「まぁまぁ、塩野くんを怒るのは当然として、花凜が自分からカミングアウトした理由でも聞いてよ。塩野くんなら喜ぶと思うよ。」
この瞬間、有翔が絃葉に怒られることは確定した。しかし、そんなことよりも花凜が言った有翔が喜ぶ理由の方が気になって仕方がない。
「なんて言ってた?」
「おにーちゃんが良い子にしててって言ってたから。嘘つく子は悪い子だもん。だってさ。」
絃葉が花凜の声真似をして言った。
「なにそれ可愛い。今度会ったらいっぱい頭撫でてあげよ。」
それを聞いた有翔の反応は相変わらずだった。
「ほんと花凜は塩野くんのこと大好きだし、塩野くんは花凜のこと大好きだよね。花梨が可愛いのはその通りなんだけどさ。」
今更ながら絃葉は、有翔の花凜の溺愛ぶりに呆れた声を出す。
「だったら仕方ないだろ。これだけ懐かれて可愛くないわけが無い。」
「それはそうなんだけど、花凜とイチャイチャしてる塩野くんたまに気持ち悪いから気をつけた方がいいよ。」
中々に冷ややかな視線を有翔に向けながらさらっと酷いことを言う絃葉。しかし、有翔にはダメージは無いようで、
「いや、高校生が幼い子供とイチャイチャしてるんだから気持ち悪いのは当然でしょ。」
と、自覚があるから良いのか分からないが開き直っている。
「別に室内だったらどうでもいいんだけど、外では程々にね。」
「善処します。」
花凜のこととなると途端にタカが外れる有翔に釘を刺しておくも、意味が無いんだろうなぁと、遠い顔をする絃葉。
「じゃあ、今から予定通り私に無断で花凜にお菓子を買った件で怒ります。」
有翔への鬱憤を晴らすように予定通り軽く有翔を叱った。有翔は、反発することなくこれも花凜のためだと思ってそれを甘んじて受け入れた。
「今度から、花凜に何か買ってあげる時は私に一声かけてよ。勝手に買ってあげたらダメだからね。」
「はい。わかりました。反省してます。」
取り敢えず有翔から無断で甘やかさないと言質を取ることができたので絃葉のお説教は終わった。
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