第24話
目の前の喫茶店に入って、案内された席に有翔の隣に侑季、絃葉の隣が花凛といった並びで座った。有翔の対面は絃葉で、侑季の対面は花凛だが、花凛は知らない人が目の前に居て緊張しているのか、一向に侑季の方を見ない。
「花凛ちゃん?ボクはお兄ちゃんの友達だから怖くないよ。」
その状況に焦った侑季は、なんとか花凛を懐柔しようと有翔をだしに使う。
「おねーちゃん...」
しかし、作戦は上手くいかず花凛は、絃葉に抱きついて助けを求めた。
「ちょっと、全然ボクには懐かないじゃないか。どうなってるのさ。ねぇ、有翔。」
「俺に聞かれても知らねえよ。つか、花凛ちゃん虐めたら許さねえからな。」
侑季は有翔に助けを求めようとするが、花凛過激派の有翔は、花凛をあんまり虐めるなと釘を刺す。
「何言ってるのさ。ボクはそんなことしないよ。それにしても、有翔が誰かに肩入れするなんて珍しいこともあるものだね。」
「花凛ちゃんは天使だからな。可愛くて仕方がないんだよ。」
「そっちの話じゃないんだけどな...」
花凛にデレデレの有翔に、侑季がボソッと呟いた。
「ん?何か言った?」
「え!?何も言ってないよ?あははっ、有翔は相変わらずなんだから。」
何も聞こえていなかった有翔に、侑季は慌てた様子で誤魔化した。
「塩野くんと水戸南さんが、幼なじみだってことは聞いたけど、どれくらいの付き合いなの?」
花凛をあやしながら有翔と侑季の会話を、複雑な面持ちで聞いていた絃葉が、二人の会話に割り込んだ。
「ボクたち?ボクたちは、家が隣同士で親も仲が良かったから、赤ちゃんの頃からだね。」
侑季が無い胸を張って、必死に絃葉からマウントを取ろうとする。
「コラッ。」
「あだっ!」
突然有翔が、侑季の頭にチョップをかました。それをモロに食らった侑季は、頭をさする。
「もー!何するのさー。」
「いや、嘘ついたお前が悪い。」
「嘘なの?」
有翔のチョップという見た事のない行為に目を見開いて、口が開いていた絃葉が、正気に戻って聞いた。
「そう。嘘。赤ん坊の頃からじゃなくて小学校二年生くらいからだな。侑季が家の隣に引っ越してきたんだ。」
「有翔ってばいちいち細かいんだよね。そんなの誤差じゃん。誤差。」
「どこが誤差だよ。かなりの時間だろ。赤ん坊から小学2年生は。」
侑季に鋭いツッコミが炸裂する。
「すごく仲が良いんだね。」
幼なじみ特有とも言える関係性に、そんな普通の感想を絃葉は述べる。
「最近は遊びに誘っても、他に予定があるって断られるけどね。」
「それってもしかして...」
絃葉は、初対面で侑季が敵意を向けて来た理由をその一言で、十分に理解した。
「もしかしなくてもそうだよ。今はあんまり怒ってないけどね。有翔が、こんなに肩入れする子ってどんな子だろうと思ってたけど、花凛ちゃんは確かに可愛いから仕方ないと思うことにしたよ。」
「ごめんなさい。」
「悪かったよ。今度また一緒に遊んでやるから。」
侑季が一息でまくし立てたことで、流石に気まずくなって有翔と絃葉は、侑季に謝った。
「だから、別に怒ってないって...おっと、もう帰らなきゃ。花凛ちゃんまたね。」
「あ、おい...行っちまった。」
やけに時間を気にしていると思ったら、有翔の静止を聞かず小走りで喫茶店を出て行ってしまった。
「私たちも帰ろう。」
「そうだな。」
「花凛。帰るよ。」
このままだと夕飯の時間がどんどん遅くなるので、侑季が出ていって直ぐに席を立った。
喫茶店のお金は、大した金額ではなかったので有翔が払うと言って、絃葉を押し切った。
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