二十八話 仲良し?
学校にはまだ生徒が大勢残っていた。その度に、悪目立ちしてしまう。
なにより、噂になっていたことが良くなかった。「あの人が例の……」と
また、
「ところで、デパートってどこに行くの? あんまり遠いところは流石に無理よ?」
「どこ行くかもわからないで行くって決めたの?」
「服が欲しいのは本当。それに
「そっか」
俺は
そこでの二人の会話に耳を傾け、
二人はいがみ合い、デパートに到着した。
俺は一つため息をついてから、二人の仲裁のために会話に参加することにする。
「服を見に行くんじゃなかったの?」
「そうなんだけどね、さっき
「
「
それがどうしたんだよ。
他愛のなさすぎる会話にどこかほっとする。
しかし、なぜそれだけで電車に乗っている間はあんなに静かだったのに、デパートに来るまでの間でここまでヒートアップできるのだろうか。仲が悪いのか良いのかわからないもうわからなくなってくる。
「とにかく、私のが
「はっ? だから私のがって言ってるでしょ」
「私のが付き合いは長いんだよ」
「ほんの数ヶ月だけでしょ?」
「数ヶ月も、ね」
またもやヒートアップしだす二人に、俺は嫌な予感を覚える。
だから、先手を打つことにした。
「とりあえず、二人とも頭を冷やそう。ほら、服を買いに行くって話だったし」
そう言って二人の背中を押しながら強引にデパートの中に押し込み、案内板の前まで連れていく。そこそこ大きなデパートなだけあって、大手の衣料品店二つとも入っている。そこに行こうと俺が歩き出そうとすると、
「そっちじゃないよ、
「えっ?」
「ほら、こっち」
さっきまでの
「ちょっと、待ちなさい!」
そんな声を背に、
ほどなくして着いたのは大手のとこは別の衣料品店。
「待ちなさいって」
「待ってるよ?」
「そういうことじゃないのよ」
「もう高校生だし、こういうとこに来てみたかったんだ」
そう言って置いてある洋服を見だす。
そこで値段を確認してみると、思ったよりというか大手のとこよりも明らかに値の張る金額に「ひっ」と声が漏れてしまう。
ああ、これは。バイトを探そうかな。
そう感じてしまうには十分であった。
「
「あ、ああ。うん。あったよ」
「どれどれ」
ちょうど手元にあった白いワンピースを
それは無地の、特に飾りのついてない簡素なワンピースだ。それでもワンポイントとばかりに小さなリボンが一つだけついている。
可愛いすぎない、それでも女の子らしさが残るようなワンピース。
しかし、今の俺には手持ちがない。本を買い、ファミレスで夜ごはんを食べるぐらいで、これを買うには足りない。
そんな俺の思考など知らぬ彼女は、耳元で囁くようにこんなことを言うのだった。
「
甘いその言葉に一瞬、頭が真っ白になり、意識を持っていかれそうになる。しかし、彼女のニコッとした笑顔が意識を繋ぎ止めた。
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