プリシラの旅立ち
姉のエスメラルダは、学校が休みに入る度に家に帰って来てくれた。その時ばかりはプリシラも楽しい時間を過ごす事ができた。
プリシラが上達した風魔法を披露すると、エスメラルダはとても喜んでくれた。エスメラルダの休日が終わり、学生寮に帰る頃には、プリシラはさびしくていつも泣いていた。
エスメラルダは必ず、次の休みには帰ってくるからと約束して、学校に戻って行った。
プリシラが十二歳になった頃、休暇で戻ってきたエスメラルダにある事を言われた。
「プリシラ、貴女は召喚士養成学校に入学しなさい」
「しょうかんし?お姉さま、しょうかんしって何ですか?」
プリシラは、それまで召喚士という存在を知らなかった。エスメラルダは真剣な顔で説明してくれた。
「召喚士とはね、自身の魔力が弱くても、精霊か霊獣と契約すれば、彼らの強大な魔力を貸してもらう事ができるのです」
「精霊や霊獣と契約できてらどんなに素敵でしょう。だけど私なんかにできるかしら?」
「私なんかじゃない!プリシラだから、プリシラならできるわ」
エスメラルダは厳しい声で言った。プリシラはエスメラルダの言葉に押され、召喚士養成学校に入学する事になった。
プリシラはこの時知らなかったのだが、両親の取り決めで、プリシラが十三歳になったら、山奥の修道院に行く事が決まっていたのだという。もし修道院に送られれば、二度と自由な暮らしはできなかっただろう。
エスメラルダは、両親の考えに気づくと、先回りしてプリシラの学校先を探し、学校長と話までつけ、両親に直談判した。
プリシラを召喚士養成学校に入学させてくれれば、今後いっさいプリシラの面倒は放棄してかまわないと約束したのだ。
プリシラは学校入学と共に、ベルニ家とは縁が完全に切れるのだ。プリシラは風魔法の特訓を続けながら、召喚士養成学校に入学する日を待った。
ベルニ家の屋敷を出る時、両親の見送りは無かった。だがベルニ家の使用人たちはプリシラの旅立ちを涙ながらに見送ってくれた。
姉のいない屋敷での生活は、使用人たちの暖かい心づかいがあったからこそ過ごせたのだ。
プリシラは自分を助け守ってくれた使用人たちに心から感謝をした。
召喚士養成学校に入学すると、プリシラはチコとサラという友達ができた。チコとサラは、プリシラの立ち居振る舞いがお姫さまみたいだと言った。
どうやら貴族の教育を受けていたプリシラは、周りの生徒たちから浮いているようだ。
プリシラはチコとサラに助けられながら勉学にはげんだ。
学校には長期休暇があるが、プリシラは家を追い出されているので、帰る家が無かった。チコとサラは自分たちの家に来ればいいと言ってくれたが、迷惑をかけるわけにはいかないので断った。
プリシラが一人で学校の寮に残っていると、何と姉のエスメラルダがやって来たのだ。
エスメラルダは召喚士養成学校の校長に頼み込んで、休暇期間中プリシラと過ごせるように頼んでくれたのだ。
プリシラは姉に会える長期休暇が楽しみになった。
エスメラルダは主席で魔法学校を卒業すると、冒険者になった。エスメラルダは有能な冒険者で、数々の仕事をこなしていた。
エスメラルダは冒険者の依頼料で、通信魔法具のペンダントをプリシラに買ってくれた。
それはしずく型のサファイアのペンダントで、ペンダントに声をかければ、すぐに姉のエスメラルダと会話ができるすぐれものだった。
エスメラルダは、これからいつでも会話ができると言っていたが、プリシラはもう大分成長していたので、姉を恋しがって泣く年齢ではなくなっていた。
だがエスメラルダがとても嬉しそうだったので、プリシラも喜んで受け取った。
姉のエスメラルダは、プリシラに対してものすごく過保護になった。これはエスメラルダが、プリシラが小さい頃に側にいて守ってやれなかった罪悪感からきているのではないかと考えている。
プリシラが子供の時、エスメラルダも子供だったのだ。エスメラルダは子供だったにもかかわらず、知識と行動力でプリシラを守り助けてくれたのだ。
プリシラは姉に心から感謝しているのだ。
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