第13話 僕の進化


 僕が起きるとシアンはもう起きていた。

 そしてイケメンの姿になってた。

 女の子の姿だと、僕に襲われると思ったのかも?


「リン、我もリンを抱きたい」

「んん? え?」


 僕、男とキスはしたことあるけど、それ以上はないよ。男とするなんて怖いよ。

 シアン、嘘だよね?


 シアンが僕を抱きしめて、唇が重なる。

 シアンの愛情が流れてきて、幸せで満たされる。気持ちいい。

 するとシアンの手が僕の胸に伸びてきて……。


 ってえ!? 僕の胸、膨らんでない? なんで?

 しかも割と巨乳なんだけど。どうなってるの?

 僕、男だよね? さっき寝る前までは男だったはず。え?

 僕は混乱した。僕の体、女の子になってる?

 まさかね。ではこの胸はどう説明する?


 怖いけど、僕は自分の下半身に手を伸ばした。

 あるはずのところに、あるはずのモノがない。

 あれも、それも無い。

 僕の頭が混乱しているうちに、シアンのそれが僕の中に……。


 !!!!


 声も出なかった。まさに悶絶。

 そのままシアンは動かなかった。

 たぶんシアンは治癒をかけてくれたんだと思う。

 確かシアンのステータスの魔法の項目に治癒があったし。

 それで落ち着いてくると、シアンから幸せな感情と、愛情と、僕を気遣う優しさが流れてくる。幸せ。


「シアン、好きだよ」

「我もリンが好きだ。大好きだ。リンのことは絶対に死なせない。我の唯一なんだ」

「うん。僕、長生きするね」

「ずっと一緒にいたい。リンが一緒にいてくれると言った時から、我は1人でなくなった。リン・・・」

 シアンの目から涙が溢れる。


「シアン、泣かないで。僕が生きてる限りずっと一緒にいるから」

 僕がもっと長生きする種族だったらよかったのに。僕も、進化できればいいのに。

 シアンを泣かせたくない。


「リン、我の生命力を少し注いだ。きっとこれで少しは長く生きれると思う」

「え? 生命力? シアンの体は大丈夫なの? 僕はシアンのことが心配だよ」

 そしてなぜかこんな時に、レベルアップの音が鳴った。


「シアン、レベルアップの音が鳴った。一緒に見る?」

「見る」


「ステータスオープン」


 =====

 名前:リン・サトウ

 種族:半精霊?(転移者)

 レベル:100

 HP:3,220/8,200

 MP:5,750/5,950

 魔法:水、風、氷、火、雷、空間、光(new)

 スキル:庇護欲、おねだり、うるうる、あざと可愛い、メイクプロ級、アイテムバック、癒し、魅了、料理、経験値上昇、MP節約、言語理解、浄化、保湿、無詠唱、小悪魔、慈愛(new)、隠蔽(new)

 称号:シアンの主人、可愛いは正義、人たらし、シアンの嫁、シアンの虜、美容マイスター、愛の伝道師

 加護:神獣シアンの加護、愛の女神の加護(new)、美の女神の加護(new)

 =====


「シアン、僕、人間じゃなくなってるみたい。前に見た時、人間の後ろに『?』ついてたんだよね。それに、この体……どうなってるんだろう?

 加護ってのも増えてるし」

 スキルと称号がいつの間にか増えてるのはこの際は気にしないでおこう。


「半精霊というのは分からないが、人間でなくなったのなら、我の生命力を受け取って進化したのかもしれない。

 我の生命力が馴染んだ頃にもう一度生命力を注げば『半』というのが取れて、精霊に進化できるかもしれない」

 生命力を注ぐって……それって、シアンとムニャムニャ……そういうことだよね?

 自分の顔が真っ赤に染まるのを感じた。


「リン? 顔色がおかしい。我の生命力はやはり強すぎたか……」

 違うけどね。恥ずかしいだけだよ。

「シアン、キスして」

 うるうるとおねだりを重ねて僕はシアンを見た。


 重なる唇。僕はそれだけでこんなにも幸せで満たされた気持ちになる。

 僕はもうダメ人間になりそう。このままずっとこうしてたいな。

 もし、半精霊になったことでシアンの憂いが少しは薄れてくれるなら、僕は何にでもなりたい。


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