第14話 お揃いのパジャマ


 その日は2人でベッドの上に寝そべって、抱きしめたりキスしたりして過ごした。


 グゥー


「リン、お腹空いたの?」

「そうみたい。シアンはお腹空いてないの?」

「神獣になってからあまり空かなくなった。魔物の頃はどれだけ食ても足りないと感じていたが、不思議だ」

「そっか。また美味しいご飯食べに行く?」

「そうだな。出かけよう」

「そうだ、僕、パジャマとかゴスロリじゃない服が欲しい」


「なぜだ? その服ではダメなのか?」

「いいんだけど。動きにくいし、寝る時はもっと締め付けないゆったりした服がいいの」

「では裸で寝ればいいだろう。リンが裸で寝るなら我も裸で寝るぞ」

「それはダメ。風邪引いちゃうし、シアンもパジャマ買おうよ。お揃いのやつ」

 シアンは平気でも、僕が平気じゃない。イケメンの姿でも可愛い女の子の姿でも、僕はもうどっちの姿でもシアンが裸で寝てたら平気な振りなんてできない気がする。

 だからといって熊の姿になったら宿では寝れないし。


「お揃い?」

「そう、お揃い。シアンは服自体あまり着たことがないから分からないかもしれないけど、好きな人と同じものを身につけるのは幸せなことなんだよ」

「なるほど。それは体験してみたい」

 よかった。抱くのも抱かれるのも嫌なわけじゃない。

 でもそれだけじゃ嫌だ。僕はシアンと一緒に色んなところに行きたいし、色んなことをしたいし、シアンと生きていきたい。


 シアンと手を繋いで街を歩く。

 今の僕の体は女の子だし、ゴスロリの服だから完璧に可愛い女の子になってる。

 シアンは相変わらずのイケメン。

 シアンも女の子でもいいんだけど、それだと可愛い女の子2人になっちゃって変な男が寄ってくるかもしれないからダメ。


 僕は女の子でも男のままでも身長は変わらなかったからいいんだけど、シアンはどっちのサイズに合わせたパジャマを着るんだろう?

 両方買ってみる?


 なんかそんな気はしてたんだけど、服屋にシルクのパジャマは売ってなかった。

 ツルツルした肌触りのいい生地の服自体がなくて、麻みたいなザラザラした生地とか、木綿でも糸が太くてゴワゴワしたものばかりだった。

 革製品はたくさんあったけど。


 シャツってのがなくて、そのほとんどはプルオーバーの上から被って着るタイプのチュニックみたいな形で、女性用はウエストが絞ってあってスカートが長い。

 男性用は短めで下にパンツを合わせるみたい。

 冒険者ギルドではダボダボのパンツをブーツインしてる人が多かった気がする。

 と言っても時間がズレててそんなに多くの人を見たわけじゃないけど。


 僕は今は女の子だから、赤いワンピースの襟と裾にカラフルな刺繍がしてある可愛いワンピースを買った。

 男の僕用に、ネイビーのチュニックの襟に赤と白の花の刺繍がしてある可愛いのも買った。これももちろんオーバーサイズで、ちゃんと萌え袖になるやつ。

 そしてオフホワイトの綿の細めのパンツも買った。これ、裾を折り返して足首出したら可愛いと思う。


 シアンはどれがいいか分からないって言うから、白のプルオーバーに青い蔓の刺繍が入ってるもの とネイビーの細身のパンツを買った。

 僕の前でしか見せないって約束してる女の子のシアンの服は買わなかった。


 パジャマは……どうしよう。

 いいのがない。

「お姉さん、パジャマってある?」

「パジャマ? 何それ」

「えっと、寝るときはみんなどんな格好で寝てるの?」

「寝巻きはだいたいこれね」

「ありがとう」


 お店のお姉さんが案内してくれた場所には、上から被るタイプの病院の検査着みたいなのが並んでた。

 そっか。この世界ではこれが普通なのか。

 寝るだけだし、これでいいか。


「シアン、お揃いのパジャマなんだけど、こんなのしかなかった。どの色がいい?」

「我はリンの髪色と同じちょっと青が入った黒がいい」


「うん。じゃあそうしようか。

 サイズはどうする? 男のサイズにする? 女の子のサイズにする?」

「どちらでもいい」


「じゃあシアンのは両方買おうか」


 僕、女の子の体の時の下着も欲しいな。

 でもブラとかはなかった。カップ付きインナーっていうの? あれみたいなタンクトップはあったから、これでいいのか分からなかったけど買ってみた。

 浄化かけるから洗い替えを買わなくていいのはいい。


 それから僕たちは昨日とは違うお店に入ってお酒は飲まずに、シチューみたいなスープとパンと野菜がたくさんのサラダと鳥肉の串焼きを食べて宿に戻った。


「お揃いだよ」

 パジャマもオーバーサイズで萌え袖だ。

 シアンはこの可愛さを分かってくれないと思うけど、いいんだ。自己満足で。


「これが嬉しいのか? 我にはよく分からん。でも、リンが嬉しそうだから嬉しい」

 浄化をかけて保湿で僕の顔や全身を保湿して、シアンも保湿してあげた。

 でもシアンは神獣だからそんなの必要ないかも。スベスベできめ細かい肌だもんね。


「リン、もう寝よう」

 シアンはイケメンの姿のまま、女の子の僕を抱きしめてベッドに横になった。

 昼間のことを思い出してドキドキする。

 僕、心も女の子になっちゃったのかな? でもいいや。女の子でも男の娘の僕でもシアンを好きな気持ちに変わりはない。


 シアンの愛情と温かい気持ちに包まれて眠る。熊の上で寝るのもふわふわで温かくて気持ちよかったけど、人型のシアンに抱きしめられて寝るのも気持ちいい。


 ドキドキして寝れないかもって思ったけど、僕はすぐに寝ちゃったみたい。

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