第10話 報酬



「おじさん、終わったよ」

「君たちがやったのか? 突然水路が綺麗になったと各所から連絡が来ているんだ」


「うん。シアンがやってくれた」

「兄ちゃん凄いな。もしかして魔法か?」

「そうだ。魔法でやった」

「だよな。手作業であんなことは無理だ。

 これだけのことをしてくれたんだ。報酬は弾むから期待しておいてくれ。

 ここに書いておく。この紙をギルドの受付に渡しな」

「うん。ありがとう」

 僕たちはギルドに戻って受付に紙を出した。


「依頼終わりました」

「早いわね。分かったわ。清算するわね」

 受付の人は一瞬驚いた顔をしたけど、そのまま紙を持って奥に行って、布袋を持って戻ってきた。


「こちらが報酬の銀貨10枚です」

「銀貨……。シアン、銀貨の価値分かる?」

「分からん」

「だよね。銀貨1枚で何が買えますか?」

「買える物、何かしらね。うーん」

 受付のお姉さんは困っている。全然何も買えないくらい安いの? それは困る。


「銅貨と銀貨はどっちが価値があるの?」

「銀貨です。銅貨100枚で銀貨1枚の価値です」

「そうなんだ。銅貨1枚だと何が買えるの?」

「1枚ではパンくらいですね。2枚あれば屋台で売っているサンドイッチが買えます」

「そっか。ありがとう」

 なるほど。じゃあ銅貨1枚が100〜150円くらいで、それが100枚ってことは銀貨は10,000〜15,000円くらいかな?

 じゃあ報酬銀貨10枚ってことはかなりの金額だ。

 よかった。ご飯も食べられるし、どこかに泊まれそう。


「銅貨と銀貨の間は無いの?」

「小銀貨があります。銅貨10枚で小銀貨1枚です」

「じゃあこの銀貨を、小銀貨9枚と銅貨10枚にしてくれない?」

「かしこまりました」

 お金を両替してもらって、僕たちはギルドを出た。


「シアン、美味しいものが食べられるよ。ホテルでふかふかのベッドで寝れるかも」

「そうか。リンが嬉しそうだと我も嬉しい」

「ホテルあるのかな? ホテルっていうか、旅館かな? なんて言うんだろう? 宿かな?」

「やはり我の胸の上では寝にくかったんだな」

 シアンが寂しそうな顔をして呟いた。


「シアン、シアンの胸の上は好きだよ。でも、僕はフワフワの上で眠れるけどシアンは硬い地面だったでしょ?

 ふかふかなお布団で一緒に寝ようね」

「リン、好き」

「うん。僕もシアンが好きだよ。宿を探そうね」


 広場のベンチに座ってたおばあちゃんに宿がどこにあるか聞いてみた。

「おばあちゃん、この辺りに宿ってありますか?」

「ん? 宿ならそこの通りに並んでいるよ」

「ありがとう」

「どういたしまして」

 綺麗なところがいいな。

 部屋は大きい方がいいな。


「すいませーん、泊まりたいんですけど、部屋は空いてますか?」

「2部屋か? 1部屋か?」

「1部屋で」

「空いてるよ。何日泊まる?」

「とりあえず2日」

「分かった。2階の21という端の部屋を使うといい。前金で小銀貨4枚だ」

「はい。これ」

「確かに受け取った」

 僕はシアンの手を引いて2階に上がって21という部屋に入った。


「人間はこのような入り組んだ洞窟のような場所で寝るんだな」

「そうだよ。ここは敵が来ないから、朝までグッスリ眠れる。シアン、僕が寝てる時も警戒してたでしょ。今日は2人でゆっくり寝ようね」

「気づいていたのか。リン、好き」

「僕もシアンが好きだよ。キスして」

 僕がうるうるとおねだりをダブルで発動すると、シアンの頬が少し赤く染まった。


 重なる唇。シアンの気持ちがまた僕を満たしてくれる。温かくて気持ちいい。

 溺れそう。シアンの愛情で溺れてしまいそう。


「リンからキスを求めてくるなど初めてだ。我は嬉しい。温かくて心臓が早く動いている」

「それ、ドキドキしてるって言うんだよ」

「そうか。ドキドキしている」

「ふふふ、シアン好きだよ」

「我もリンが好きだ」

 イケメンのシアンがいつものように抱きしめてくれる。


「これは何だ? 真ん中に置いてあって邪魔だな」

「これはベッドっていうの。これの上で寝るんだよ」

「そうなのか。我は長く生きてきたが、まだ知らないことが多いんだな」

「僕も知らないことが多いから、一緒に知っていこうね」

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