第6話 初めての討伐


 え? 実践って、まさか怪物、魔物だっけ? を倒すの?

 そんなの無理だよ。だってまだ一回しかやってないし。


「待って」

「いた」


 シアンが指差した先にはでかい蛇がいた。テレビとかで見るニシキヘビなんて比べものならない。鎌首をもたげた姿は大木みたいで、絶対無理だと思った。


「リン、あの首めがけてさっきみたいにウインドカッター放ってみて」

「わ、分かったよ」


 僕はウインドカッターを放った。

 すると、蛇の首はスパッと切れて、血がシャーっと噴水のように吹き出した。

 グロい……


 すると頭の中で音が鳴った。


『レベルアップしました。スキル無詠唱を取得しました』



 ステータスオープン


 =====

 名前:リン・サトウ

 種族:人間?(転移者)

 レベル:15

 HP:46/50→970/1000

 MP:700/700→890/900

 魔法:水、風、氷、火、空間

 スキル:庇護欲、おねだり、うるうる、あざと可愛い、メイクプロ級、アイテムバック、癒し、魅了、料理、経験値上昇、MP節約、言語理解、浄化、保湿、無詠唱(new)

 称号:シアンの主人、可愛いは正義、人たらし、シアンの嫁

 =====


 え? いきなりレベル15? さっき2だったよね?

 HPなんて20倍?


「よかった。少し強くなった」

「シアン、あの蛇、もしかしてヤバいやつだったんじゃない?」


「分からん。この森にはもう我より強い者はいないからな」

「・・・そう。シアンは魔の森の帝王だもんね」


「そうだな」

「死に難くなったのはよかったよ。シアン、ありがとう」


「じゃあ次に行こう。ほら、これはあれの魔石だ」


 真っ黒なオニキスみたいな魔石は、手のひらと同じくらいの大きさだった。

 たぶんこれ、強いやつだと思う。


 シアンはまた僕を抱き上げると走り出した。

 そして僕は、シアンが見つけた魔物ってやつと何度も戦うことになった。

 ウインドカッターだけじゃなくて、アイスランスや、ファイヤーバレットも覚えた。



 そして日が暮れる頃にはへとへとになっていた。

 今は人型になったシアンに抱きしめられている。


「もう今日は無理だよ」

「リンのスキルにあるMP節約というのはすごいな。あれだけ魔法を使っても魔力の減りが少ない」


「そんなことよりお風呂入りたいよ」

「オフロ?」


「水浴び? 体を洗いたい」

「なぜそんなことをするんだ?」


「え? シアン水浴びしないの?」

「しない。暑い時に川に入ることはあるが」


「汚くない?」

「浄化しているから汚くない」


「浄化?」

「血濡れた手や体も魔石も浄化で綺麗にしていたが、見ていなかったのか?」


「してた気がする。僕も使えるかな?」

「確かリンのスキルにもあった」


「シアン教えてくれる?」

「キスしたい」


「それはキスしないと教えてくれないってことなの? 教えて?」

 シアンに向かって上目遣いにおねだりを発動してみた。


 なんとなく分かってた。重なる唇。

 まぁいっか。教えてくれるなら。

 シアンから浄化の方法が流れてきた。そして、それに続いて温かい愛情と、好きだという気持ちがどんどん流れてくる。

 気持ちいい。僕の気持ちまで満たされていく。

 好きって重なるとこんなに満たされるものなんだ。知らなかった。

 僕って愛に飢えてたのかな?


 唇が離れると、僕は自分に浄化をかけてみた。

 ん? これ、クレンジングいらないんじゃない? すごい。

 でも保湿は大事。

 スキルに保湿ってあった気がする。お肌の保湿にも使えるのかな?

 僕は左腕に手を当てて肌が潤うように魔力をそっと出してみた。いきなり顔にするのは怖いし。

 おーすごい。潤ってる。パックしたあとみたいにプルプルだ。

 僕は顔や首、手や足に保湿を使った。


 この世界はすごいんだな。化粧水や乳液などないかもしれない。

 でもたまには香りのいいオイルとか使いたいな。


 今日も夕飯はシアンが取ってきてくれたマンゴーと肉だ。

 たまには野菜が食べたい。でも我慢。食べるものがあるだけいいよね。

 水は自分で出せるようになった。歯磨きも浄化で済ませて、服にも浄化をかけたから綺麗だ。


「寝ようか。シアン今日は人型で寝るの?」

「いや、人型で寝たらリンが硬い地面で寝ることになるから戻る」


「シアン。そのために寝るときは熊になってくれてたの?」

「そうだ」


「そっか。ありがとう。シアン好きだよ」

「キスしたい」


「いいよ」


 もしかして、僕とキスするために人型のままでいたの?

 イケメンなのに可愛い。


 またたくさん愛情が流れてくる。少しの切なさと、それ以上に温かい気持ちが溢れてくる。僕の方が虜になっちゃったみたい。


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