第5話 リンのステータス



 シアンは人のいるところに行ったらかなり目立つから、どうしようかと思ってたけど、人化できるなら人がいるところでは人化してもらえばいいか。



「シアン、僕もシアンみたいにレベルとか見れるの?」

「見れる。ステータスオープンって言えば出てくるぞ」


「ステータスオープン」


 ブンッ 


 =====

 名前:リン・サトウ

 種族:人間(転移者)

 レベル:2

 HP:46/50

 MP:700/700

 魔法:水、風、氷、火、空間

 スキル:庇護欲、おねだり、うるうる、あざと可愛い、メイクプロ級、アイテムバック、癒し、魅了、料理、経験値上昇、MP節約、言語理解、浄化、保湿

 称号:シアンの主人、可愛いは正義、人たらし、シアンの嫁

 =====


 レベル2か。HPもすごく低い。シアンに会ってなかったら本当に死んでたかも。

 ところで、シアンの嫁ってのは何?

 スキルにあざと可愛いとか入ってるし。スキルすごくない?


「リン、大変だ! HPが少なすぎる。このままではすぐに死んでしまう。レベルをあげよう」

「え? HPが少ないのは分かるけど、レベルを上げるってどうやってやるの?」


「そうだな、これだけ弱いと武器など持てないから、魔法だな」

「使ったことないから分かんないよ」


「大丈夫だ。我が手取り足取り教えるから。

 人型の方が教えやすいか」


 シアンは僕を地面に下ろして、さっきの綺麗すぎる男になった。


「あーこの背の高さもいいな。リンと目線が近いのがいい。可愛い。好き」


 やっぱり僕のこと抱きしめるのね。

 いいんだけどさ。可愛いも正義だけど、美しいも正義だから。


 仕方ないから僕はシアンの背中に手を回した。


「リン」

「何?」


 面白そうだし、スキルらしいうるうるを発動しながらシアンを見上げた。

 森の中でイケメンと可愛い子が見つめ合う姿、これかなり絵になるんじゃない? 写真撮りたいなー

 そんなことを考えていたら唇が重なった。


 え?

 僕、熊に唇奪われたの? いや、今は人か。

 何かが流れてくる。唾液じゃないよ。

 頭の中に何かが。あ、魔法の使い方かも。凄い。こんな方法で思考の共有? みたいなことできるんだ。

 魔法の使い方が流れてきて、それを見てると、切なさと温かさと沢山の愛情が流れてきた。

 これは、シアンの気持ちなの? そっか。シアンは本当に僕のこと大切に思ってくれてるんだ。

 嬉しい。


 男とのキスは初めてじゃない。だって僕は可愛いから。勿論女の子とのキスも経験はあるよ。

 でもどっちも、僕を無理に支配しようとする一方的なもので、僕のことなんて考えてないみたいなキスだった。

 でもシアンのキスは違う。

 気持ちいい。たくさんの気持ちが流れてきて、温かく包み込まれるみたいな感じ。

 無理にこじ開けて侵入するような無粋なキスとは違う。ただ触れるだけのキス。


 離れる唇が寂しいけど、シアンは僕を優しく抱きしめた。

 僕、シアンのこと好きかも。


「リン、好き」

「うん。ありがとう。僕もシアンのこと好きだよ」


「だから死んでほしくない」

「うん。がんばるね」


「MPは人間にしては多いから、魔法は問題なく使えるはず」

「そうなんだ」


「あの木に向かってウインドカッター放ってみて」

「ウインドカッター?」


 僕はさっきシアンが頭の中に流してくれた膨大な資料からウインドカッターを探した。

 どこだろう?


「我がやってみるから真似するといい」

「うん。分かった」

 僕が見つけられずにいると、シアンが僕の右手を握って木に向かってウインドカッターを放った。

 木はスパッと切れて、ゆっくり向こうに倒れていった。


「すごい!」


 手からやり方が流れてきたから、それを真似て・・・

 ん? 手から?


「シアン、何で僕にキスしたの? 手繋ぐだけでよかったよね?」

「ウ・・・リンとキスしたかった。リン嫌だった?」


 熊でもキスするの? キスしたいって思うの? 人化したら感覚も人に近づくの?

 でも、そっか。

 イケメンが頬を染めながらそんなこというのは反則。

 僕だって可愛さは負けないもん。


「嫌じゃないよ。気持ちよかった。でもダメだよ。僕がシアンの虜になったらね」

「分かった。我も頑張る」



 僕がシアンみたいにウインドカッターを使ったら、ちゃんと木が切れた。

 すごい。僕、可愛いだけじゃなくて強いとか最高。


「リンすごいね。一回でできると思わなかった。

 じゃあ次は実践だね」

「え?」


 シアンは熊に戻ると、僕を抱えて走り出した。


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