第4話 シアンのステータス


 朝、辺りが明るくなって目覚めると、シアンはもう起きていた。

 僕が寝てるから仰向けのまま待っててくれたみたい。優しい。


「シアン、おはよう。ありがとう」

「よく眠れたか?」


「うん。シアンがいたからね」

「そうか。それはよかった」


「シアン、また水出してくれる?」

「また顔を洗うのか?」


「うん。歯も磨く」

「分かった」


 シアンは昨日使った葉を折りたたんで作った器に水を入れてくれた。

 僕は顔を洗って化粧水をつけて乳液をつけて、カラコンをつけて歯を磨いた。

 歯ブラシ? 持ってるよ。持ち歩くものでしょ?

 ジャンスカを着て、パニエはトランクにしまった。

 もういい加減認めよう。このトランク、容量おかしくなってる。異世界だから?

 どこまで入るか分からないけど、とにかく見た目の体積以上に入る。


 トランクから鏡とメイク道具を出して、トランクの上に鏡を置いてメイクをした。

 今日はナチュラルメイク。日焼け止めだけは欠かせない。


「リンは何をしているんだ?」

「ん? メイクだよ。可愛くしてるの」


「そうか。リンはいつでも可愛い」

「ありがとう」


 可愛いなんて聞き慣れた台詞だけど、シアンが言う可愛いは、何の含みもない可愛いだから嬉しい。


「リン好き」


 また抱きしめられた。

 何だろう? シアンのそれはもしかして、僕が可愛いぬいぐるみを抱きしめて愛でる感覚と似てるのかな?


 今日も僕はシアンに抱えられて森を進んでいく。この森はどこまで続いているんだろう?まさか迷ってないよね?


「シアン、あとどれくらい進めば人がいるところにいけるの?」

「5日程だ」


 そんなに……長いな。

 シアンは何度も魔物という怪物たちを倒しながら進んでいく。


 それから2日も進むと、シアンがくれる魔石の大きさが小さくなった。初めは10センチを超えるような大きさばかりだったけど、この辺りの魔石は手のひらに収まる7〜8センチくらい。

 小さめの魔石も綺麗だ。陽の光にかざすとキラキラして綺麗。


「あっ」

「シアン、どうしたの?」


「レベルが上がった」

「え? レベル!? 何それ」


「ステータスオープン」


 ブンッ


 =====

 名前:シアン

 種族:ボーテゴテスベア(神獣)

 レベル:801

 HP:268,000/270,000

 MP:72,300/78,000

 魔法:水、風、氷、火、光、闇、治癒

 スキル:俊敏、怪力、言語理解、無詠唱、鋭利な爪、威圧、結界、浄化、人化(new)

 称号:リンの従魔、リン溺愛者、氷神の眷族、魔の森の死神、魔の森の帝王、悪夢の黒熊

 =====


 んん? 色々ツッコミどころはあるけど、最後の方、怖いんだけど。


「称号……」

「称号? 我がこの森で呼ばれていた名みたいなものだ。死神と帝王と悪夢は我がまだ魔物だった頃の話だ」


 シアンって熊だから、神獣だから強いと思ってたけど、魔物の頃から強かったんだ。

 たぶんこの森で1番強いんだろう。何で力のない僕を慕ってくれてるんだろう?

 従魔? ってのが関係してるのかな?   


「人化ってのは?」

「新たに覚えたようだ。たぶん姿を人に似せることができるんだろう」


「やってみて」

「分かった」


 僕を地面に下ろすと、シアンの体が光った。

 そして人が現れた。

 アルビノかと思うくらい真っ白な肌で水色のサラサラの髪、目はグレーで背の高いものすごく綺麗な男?

 ちゃんと服を着ている。熊の時の毛皮も着ている。


「綺麗」

「そうか? リンはどっちの我が好き?」


「どっちもいいね。熊は熊で可愛いし、人は人で綺麗だし」

「そうか。嬉しい。リン好き」


 綺麗な男に抱きしめられた。

 僕、男の子だけど。

 もしかして、僕のこと、女の子だと思ってる?


「シアン、僕、こんな格好してるけど男だよ」

「知ってる」


「そっか」


 そうか。熊だもんね。人のように格好や見た目で性別を判断しているわけではないんだ。


「人化するとリンを運びにくそうだ」

 そう言うとシアンは熊に戻って僕を抱き上げて歩き出した。

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