第10話 でーと?

☆(早見恋実)サイド☆


私は何だか恥ずかしい思いばかりしている気がする。

だけどこれは全てお兄ちゃんへの想いだと信じたい。

考えながら過去を思い出す。

恋葉が事故に巻き込まれたあの日を。

そして救ってくれたヒーローが居た事。


「やあやあ!恋実ちゃん!」

「モカさん。久々ですね」

「その節はお世話になってるね。なんせ酷い状態だからね。玖くんは!」

「ウルセェな」


そんな感じで接しあう2人。

私はその姿を見ながら苦笑いを浮かべつつモカさんを見る。

モカさんは重い荷物を運んでいる最中だった様だ。

お兄ちゃんはすかさず言う。


「手伝おうか?」

「馬鹿言いなさんな。私の仕事だよ?君は店員でもないだろう」

「まあそうだけどさ。だけど女の子にそんな重い荷物なんて無理だろ。中身水か?」

「まあね。水だよ。販売用の水」

「なら運んでやるよ。ほら」

 

そう言いながらお兄ちゃんは水の入った箱を抱える。

それから「何処まで運ぶんだ」と言うお兄ちゃん。

モカさんは呆れながらも感謝しつつ。

「事務所手前に運んで」という指示を受けていた。

そしてモカさんは「全くもう。バイト代は出ないよ?」と話す。

その言葉にお兄ちゃんは首を振った。


「いらねぇよ。ってかそもそもそれ目的じゃないから」

「君は女の子にモテるタイプだねぇ。さりげないから」

「.....」


ボッと赤面するお兄ちゃん。

それから「冗談でも言うな」と首を振った。

その姿にモカさんは私を見た。

私も少しだけ恥じらう。

すると何かモカさんは察した様に「ほほーう?」とニヤニヤした。


「もしや君達は.....」

「そういう関係じゃ無いっての」

「違いますからね!?」

「私はまだ「もしかして君達は」ぐらいしか言ってないよ?ふふふ」


私達は真っ赤に赤面する。

それからお兄ちゃんが「揶揄うな。今の俺にそんな気力はない」と話す。

私も大きく頷いた。

それからモカさんに向く。


「まあどっちでも構わないよ。だけど恋実ちゃん。もし玖くんが困った時は必ず横に居てあげて。玖くんは.....1人では生きられない」

「まるで俺を乳飲み子の様に言うな」

「あれ?違ったっけ?」

「俺はそんな幼い感じじゃねーよ」


お兄ちゃんはそう言いながら「ったく」と言う。

それからモカさんの額を弾いてから私を見る。

「お菓子買うか」と言いながら。

私は「だね」と苦笑い。

それから私達はモカさんを見る。

「モカさん。お菓子でおすすめある?」という感じで聞いた。

するとモカさんは「ん?そうだねぇ」と考える仕草をする。


「まあ取り敢えずクランチチョコかな。再入荷だけどホロ甘で期間限定品だよ」

「じゃあそれ」

「毎度あり」


私はニコッとしながら選択する。

するとお兄ちゃんが「お前は本当にお菓子好きだよな」と苦笑した。

私は「恋葉も好きだよ」と言う。

だけどまあ恋葉の場合は甘いお菓子じゃなくて辛いお菓子が好きだけど。


「恋葉は辛いお菓子が好きだよな」

「ピリ辛ポテトチップスとかね」

「んじゃまあそれも買いますか」

「賛成」


それから私は笑みを浮かべながらお菓子を選んだ。

そして千円分のお菓子を購入。

すると「待ちたまえ。君達」と声がした。

モカさんがニヤッとして立っている。


「君達はイルカショーに興味はあるかね。バイト代として無料チケットがある」

「いや。モカ。普通にそういうのは大丈」

「行きます!」


お兄ちゃんが言い終わる前に私は手を挙げた。

それから「お兄ちゃんとデートしたいから」と鼻息を荒くした。

お兄ちゃんは真っ赤になる。

「待て!?お前!?」とツッコミがあったが気にしない。


「恋人割だ。行ってらっしゃい」

「おい馬鹿!余計な.....」

「楽しみだね。お兄ちゃん」

「えぇ.....」


そうだ。

私は攻める事にしたのだ。

こんな事もあんな事も。

全部全部経験だ。


そして経験していつか.....。

思いながら私は赤面して頬を掻いているお兄ちゃんを見た。

攻め込みを入れてお兄ちゃんに向いてもらう。


これがきっと今は一番大切だろう。

思いながらモカさんから貰ったチケットを大切に丁寧に鞄に仕舞う。

するとお兄ちゃんが私を見た。


それから「イルカショー楽しみか?」と聞いてくる。

その言葉に私は「当たり前だよ」と返事をする。

そして「大好きな貴方と一緒だから」とぼそっと呟いた。

私は途中でハッとしたが幸いお兄ちゃんには聞こえなかったらしい。

私はホッとしながら笑みを浮かべた。

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