第2話 あくまで別物

近所のコンビニに逃走してから俺は胸に手を添える。

いかん。心臓がバクバクしている。

これは絶対にヤバい感じだ。

何だよ恋葉もそうだが.....恋実も。

思いながら傘を置いてから俺はドアをくぐる。


「おや?どうしたんだい?しんみりして」

「まあ.....色々あってな」

「ふむ。暴風雨だよ?外は。それでも来たんだね」


目の前の黒髪ポニテの女子高生の知り合いはそう言う。

微笑が絶えない。

名前を伊藤モカ(いとうもか)という。

俺より1個下の女子高生。

つまり後輩だ。


「まあな。.....ちょっとつまらない事があってな」

「つまらない事?それはどういう事だい?」

「.....まあ色々だ。.....事情は話せないけど」

「そうかい。じゃあゆっくりしていってくれ」


そしてモカはそのまま荷物を「ヨイショ」と言いつつ抱えながら去って行った。

俺はその姿を苦笑して見ながら飲み物のコーナーに向かう。

それからドアを開けてから飲み物を出した。

そうしてからレジに向かう.....とそこでハッとした。

恋葉と恋実にも何か買っていってやるか、と思いながら。


「お菓子でいいかな?」


その様な事を呟きながら俺は店内を見渡す。

それからお菓子を手に取ってから恋葉と恋実の為に買っていこうと思いレジに向かって歩き出す。

そして戻って来たモカを見る。


「モカ。これもくれ」

「おや?チョコを買うとは珍しい。.....君はあまりチョコは食べないじゃないか」

「まあな。恋葉と恋実にな」

「そうかね。.....優しいじゃないか」

「そんなもんじゃないけどな」


そして俺は会計をタッチカードで済ませてからモカにお菓子を投げ渡す。

するとモカは慌てて受け止めて「おう。どうしたんだい?」と目を丸くする。

その言葉に「やるよ。お前にも」と笑みを浮かべる。


「.....そうか。ありがとう。今度お返しするよ」

「お返しなんてもんぐらいじゃないしな」

「まあまあ。律儀にするのが私だからね。.....必ずお返しはするよ」


モカに「気をつけて帰ってな」と言われながら俺は手を挙げて外に出てから暴風雨に晒されつつ家に帰宅した。

それからドアを開ける。

すると目の前に恋葉がやって来た。


「お帰り。おにーちゃん」

「あ、ああ.....ただいま。恋葉」

「おにーちゃんが居ない間に部屋を捜索しました」

「.....何でそんな事するの?」

「暇だったしね。.....そしたらエロ本が案の定出てきた」


心臓が冷ややかな手で撫でられる感触がした。

「ノォ!!!!!」と絶句しながら俺は頭を抱える。

すると恋葉は妹ラバーというエロ本を見せてきてから「おにーちゃんは義妹が居るのにこんな真似をするなんてね」とジト目をしてくる。

俺は「現実で義妹に手を出せるか!」と恋葉に言葉を発する。


「でもおにーちゃん。あくまで義妹だよ?私」

「そうだな。あくまで義妹だから手が出せない。家族だ」

「.....そうかなぁ?私は手を出しても構わないと思うよ?血が繋がってない」

「あのな。.....そういうのは駄目だっての」


そう言いながら俺は「そういや恋実は?」と聞く。

レジ袋を漁りながら恋葉はアイスを見つけて食べ始める。

「それは俺のアイスなんだが」と思ったがまあいいや。

考えながら俺は恋葉を見る。


「恋実は家事中だよ」

「ああ。まともな事をしているのな?」

「おにーちゃん。私達をなんだと思っているの?性欲お化け?」

「女の子が性欲言うな。簡単に」

「まあ確かにそうだけど」


恋葉は口をへの字にしながら俺を見てくる。

俺はそんな恋葉の額にチョップした。

それから「全く」と言う。

そして「リビングに行くぞ。寒いし」と話した。


「.....そうだね。おにーちゃんったらアホみたいに飛び出して行くんだから」

「それはそうだろ。お前らが襲って来たんだから」

「襲った訳じゃないよ?ただのスキンシップ」

「.....お前らな。好きでもない相手にそれは.....」

「おにーちゃん?本当にそう思ってる?」

「.....え?」


「私は.....おにーちゃんの事.....これでも」

と赤くなって言い淀む。

(まさかそんな馬鹿な!禁断の関係.....!?)と思っていたのだが。

恋葉は「まあ冗談だけど」とそのまますっとぼけた。

俺はズルッとずっこける。


「嘘かーい!!!!!」

「そりゃそうでしょ。.....幾ら何でもお兄ちゃん。恋とセックスは全くの別物だよ?」

「そうだな。.....ん?それは.....どういう意味だ.....?」

「.....えへへ」

「笑って誤魔化すな!?.....女の子が簡単にセックスとかいうな.....!?」


俺に擦り寄って来る恋葉。

それから「私はセックスと恋は別物って思っているから。.....だから大丈夫だよ。おにーちゃん.....?」と瞳孔が開いた気がしたが.....気のせいか.....?

恋葉を不気味に思いながら見てみる。

そして苦笑いを浮かべた。

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